ミサイルから守る最終手段
世界各国の海軍艦艇にほぼ共通して搭載されている装備がCIWS（Close In Weapon System）、通称「シーウス」です。
これは簡単に説明すると近距離防空用の高性能バルカン砲で、西側諸国ではアメリカ製の「ファランクスCIWS」が標準装備になっていて、海上自衛隊も例外ではありません。
⚪︎基本性能：ファランクス「CIWS」
| 重 量 | 6.2t |
| 全 高 | 4.7m |
| 兵 装 | 20mm銃砲身×6 |
| 射 程 | 最大5.5km ※有効射程1.5〜2km |
| 価 格 | 1基あたり約4億円 |
まず、名称のファランクス（phalanx）は古代ギリシアやマケドニアの軍隊が使っていた密集陣形を指し、大きな盾と槍を持った数十人の兵士が集団で進むイメージです。
ここで注意したいのが「CIWS≠ファランクス」という点。
CIWSとはあくまで兵器の種類であって、ファランクスはそのひとつに過ぎません。ファランクスのほかにも、オランダのゴールキーパーやロシアのAK-630といったCIWSが存在します。
今回紹介するファランクスは「毎分4,500発」という驚異的な発射速度を誇る20mmバルカン砲です。ただし、実際の装填数は1,500発ほどなので、全力射撃をしたらあっという間になくなり、手動で行う再装填には15〜20分はかかります。
そもそも、CIWSは対空ミサイルと主砲が撃ち漏らしたミサイルを迎撃するのが仕事です。よって、有効射程は約1.5〜2kmと短く、射撃時間も対艦ミサイルが命中する直前の数秒間だけになります。
わずかな対処時間しかないときに任される最終手段ではあるものの、従来型の機銃と比べて圧倒的な迎撃成功率を誇ります。
抜群の信頼性＋簡単に設置可能
海自護衛艦でもみられるファランクスは、その低い故障率から信頼性が高く、仮に故障しても復旧までに2〜3時間しかかからないのも特徴です。
また、ほかの装備よりも軽量・小型なことに加えて、船から必要なのは電源と冷却用水ぐらいなので、哨戒艦のような小型艦艇にも設置できます。
白い筒状のものがレーダー
そして、独自の捕捉・追尾レーダーを使う自律型兵器のファランクスは、他の戦闘システムに干渉せずに対空戦闘を自動的に行います。余談ですが、この専用レーダーは銃身の上にある白い筒に納められていて、その見た目からファランクスは「R2-D2」とも呼ばれています。
独立したシステムで防空戦闘ができる反面、この自律性が災いしたのが海自護衛艦による米軍機の撃墜事故です。これは演習中に護衛艦「ゆうぎり」のファランクスが誤って米海軍の航空機を撃ち落とした事件で、乗っていたパイロットは無事だったものの、「もろ刃の剣」としてのファランクスの一面が浮かび上がりました。
とはいえ、使い勝手のよさと信頼性の高さは変わらず、2024年にはイエメン沖で米海軍の駆逐艦がファランクスを用いてフーシ派のミサイルを撃墜しました。
また、ファランクスの性能に目を付けた米陸軍は、ロケット弾や迫撃砲弾を迎撃する「C-RAM」防空システムの一部に組み込んでおり、イラクやアフガニスタンでロケット弾を迎撃しています。
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