わかりやすく解説!経済安全保障とは何か?

外交・安全保障
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日常の経済を守る試み

近年よく耳にする「経済安全保障」という言葉。

これはエネルギー・インフラ・食料など、我々の生活を支える要素を守り、経済活動を継続させることです。普段の「日常」を守り、緊急事態に備える、とも言いかえられます。

一応、日本政府の定義は以下のとおりです。

我が国の平和と安全や経済的な繁栄等の国益を経済上の措置を講じ、確保すること。

通常の安全保障とは何が違うのか?

まず、安全保障とは脅威を取り除き、現状を守ることです。

「現状」は国土のような要素に限らず、経済活動のような日常を含み、いまある状況を指します。

安全保障と聞けば、軍事力を使った防衛の印象が強く、生活からは離れた感がありますが、経済安全保障は安全保障の一環です。

相互依存経済のツケ

世界ではグローバル化が進み、北朝鮮のような特殊な国でない限り、全ての経済は互いに結びついています。ひとつの工業製品を作るにしても、原材料と構成部品、工場で使う燃料など、あらゆるモノを別々の場所から取り寄せます。

国際分業と自由貿易を通して、世界経済は発展してきたものの、その分だけ国際情勢の影響を受けやすく、供給リスクが高くなりました。紛争や災害が起きれば、供給網(サプライチェーン)が混乱に陥り、品不足と価格高騰を招きます。

また、何らかの政治目的を達成すべく、供給網の脆弱性を逆手に取り、経済的な恫喝に使う国が現れました。

たとえば、中国は外国と問題が起きると、戦略資源の輸出を禁止したり、その国からの輸入を止めてきました。台湾のパイナップル、フィリピンのバナナを狙い撃ち、禁輸したのは記憶に新しいです。

これは一種の経済制裁であって、相互依存関係の弱点を悪用しながら、政治問題の解決を図る行為です。日本との対立においても、水産物の輸入を禁止したり、レアアースの輸出を止めました。

経済圧力は昔から存在したものの、日中関係は「政冷経熱」と呼ばれたとおり、政治問題で関係が冷え込んでも、経済交流は続けていました。

「政・経」を使い分けていた形ですが、2010年頃から中国の姿勢が変わり、強大な経済力を背景にしながら、対外圧力に利用するようになります。

このあたりから日本も危機感を抱き、コロナ禍やウクライナ侵攻の影響も加わって、「経済安全保障」が重視されはじめました。

戦略的自律性・不可欠性

経済的威圧を受ける想定の下、どう対処して影響を抑えるのか、あるいはどのように備えるのか。

これが経済安全保障の基本的な考え方です。

むろん、グローバル化した経済は元に戻せず、中国が最大の貿易相手である以上、完全な経済分離はできません。

他方、リスクは減らさねばならず、一定の相互依存は仕方ないにせよ、戦略的に重要な物資、核心技術は頼ってはいけません。

国内備蓄の増加、代替先の確保、国産開発で依存度を下げるなど、戦略的自律性が求められます。

日本は中国リスクを受けて、戦略資源の調達先を分散したり、新たな輸出先を開拓してきました。先述のレアアースでいえば、備蓄とオーストラリアとの取引を増やすとともに、国産化に向けて研究・試験採掘を続けています。

まだ対中国依存度が60%を超えていますが、2010年頃と比べてリスク分散に成功しました。水産物の輸入禁止についても、欧米やアジア市場の開拓が進み、以前よりは打撃を吸収できます。

このような依存の低減に加えて、似た考えの国々と連携しながら、代替先の確保とともに、自国の重要性を高めねばなりません。

世界経済にとって日本が不可欠だと、中国も経済的恫喝を仕掛けづらく、経済安全保障につながります。日本の強みは技術力ですが、それを中国に依存させたら、今度は日本の戦略物資になります。

日本抜きでは成り立たない、日本に手を出すと相手が困る、という状況を作り出せば、威圧に対する抑止力になるはずです。

これは戦略的不可欠性と呼び、先述の戦略的自律性と合わせて、経済安全保障の両輪にあたります。

経済安全保障推進法の制定

さらに、2022年には経済安全保障推進法を敷き、経済安全保障大臣を設置しました。同法では ①供給網の強化、②基幹インフラの安定、③先端技術の開発、④特許の非公開を重視しており、産業全体を守り抜く意向です。

①〜③は分かるとして、④の特許は意外かもしれません。

従来は公開が原則でしたが、特許出願時に内容を公開すると、せっかくの発明や技術がバレてしまい、安全保障上の理由などにより、断念するケースがありました。

最先端技術の特許ともなれば、未来の利益を産む金の卵であるほか、戦略的不可欠性につながるものです。それを外国の手から守り、きちんと育てるのも、経済安全保障にほかなりません。

4つの柱はそれぞれに結びつき、現代社会を支えていることから、中核部分として重視されました。

ただ、動きは推進法にとどまらず、有事に備えて食料輸入計画を策定したり、サイバー攻撃からインフラを守るなど、いろんな形で国民経済を防衛しています。

軍事部分に目を向けると、海上自衛隊は海上輸送路を守るべく、シーレーン防衛を目指してきました。島国・日本にとって海上交通は欠かせず、資源から食糧まで運ぶ生命線です。

シーレーンが遮断・妨害されたら、あらゆる経済活動が干上がってしまい、市民生活は成り立ちません。それゆえ、シーレーン防衛は経済活動に直結しており、軍事的要素が強いながらも、経済安全保障の一環になります。

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