12隻を建造!海上自衛隊初の「さくら型」哨戒艦とは?

自衛隊の哨戒艦のイメージ図 海上自衛隊
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1,900トン級の沿岸警備艦

海上自衛隊は日本の海を守る以上、普段から近海のパトロールを欠かさず、その任務は主に地方隊(2桁番号の護衛隊)が担い、長らく旧式護衛艦を投入してきました。

ところが、「あぶくま型」護衛艦は老朽化が進み、新たに「もがみ型」フリゲートが登場したものの、これは海外派遣を含む機動運用も想定しており、別の沿岸警備艦艇が必要になりました。

そこで、海自初となる「哨戒艦」の建造が決まり、計12隻を平時の警戒監視にあてます。1隻あたり約90億円の予算の下、2025年には1〜4番艦が起工されました。

そして、2025年11月には進水式を行い、1番艦が「さくら」、2番艦が「たちばな」と命名されました。

2027年3月には一斉に4隻がそろい、OPV(沿海域パトロール艦:Offshore Patrol Vessel)として就役します。

  • 基本性能:「さくら型」哨戒艦

さくら型哨戒艦の概要(出典:防衛省)

新型哨戒艦には約30名が乗り込み、1門の30mm機関砲を搭載するほか、不審船などを長時間監視するべく、無人機の運用も視野に入れました。

火力は物足りない感があるとはいえ、沿海域での警戒監視・港湾警備が役目であって、そもそも本格的な戦闘は想定していません。30mm機関砲で足りなければ、12.7mm機関銃を追加しますが、あくまで兵装は最低限の自衛用に抑えました。

それゆえ、火力では海上保安庁の巡視船に近く、その上位互換のイメージかもしれません。

汎用護衛艦とは違って、SH-60のような哨戒ヘリは搭載せず、無人機・無人艇でまかないます。ただし、艦の後部に多目的甲板を持ち、ヘリの離着艦にも対応しているため、それなりのマルチ能力を確保しました。

その能力は警戒監視には申し分なく、テロリストや武装漁民などの「低劣度脅威」に立ち向かい、巡視船の範疇を超える事案に対処します。

さらに、汎用護衛艦を警戒監視の任務、グレーゾーン事態から解き放ち、他に回す余裕を生み出しました。増えゆく任務と中国海軍の監視で忙しいなか、12隻の哨戒艦がそろえば、汎用護衛艦の負担を大きく軽減できます。

海外派遣の可能性も?

新型哨戒艦は沿海域を警備するものの、その活動範囲は日本近海にとどまらず、海外派遣の可能性は捨て切れません。

小さな哨戒艦といえども、国を代表する「軍艦」なのは変わらず、低コストでプレゼンスを示せます。

たとえば、イギリスはシンガポールに2隻の哨戒艦を送り込み、インド太平洋への関与をアピールしてきました。この2隻は警戒監視と海賊対策、災害派遣などに取り組み、小規模な常駐戦力にもかかわらず、イギリスのプレゼンスを示しています。

イギリスのリバー級哨戒艦(出典:イギリス海軍)

海自の哨戒艦は船体の揺れを抑えるべく、新たに「アクティブ減遥装置」を組み込み、船内の居住性と外洋での航行性を高めました。

日本周辺での長期任務に備えた工夫ですが、規模・装備面で近い英哨戒艦の事例を考えると、日本のプレゼンスを示す「海軍外交」も不可能ではありません。

「自由で開かれたインド太平洋」を掲げる以上、日本は自国周辺だけで活動するわけにはいかず、責任ある国際社会の一員として協力せねばなりません。

この点において、哨戒艦は低コストで国際貢献できる選択肢になり、その目的で使う可能性はあります。

されど、近海警備用の哨戒艦を海外派遣すると、護衛艦の負担軽減からは逸脱しかねず、まずは護衛艦と哨戒艦がそれぞれの役目に取り組み、本来の目的を果たさなければなりません。

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