秘密の特殊作戦群

陸上自衛隊

秘密のベールに包まれた部隊

陸上自衛隊には最強と名高い部隊がいくつかありますが、その中で相応しいのは「特殊作戦群」です。通称「特戦群」と呼ばれるこの部隊は、いわゆる特殊部隊であり、アメリカのグリーンベレーやデルタフォースを目指して2004年に創設されました。最大の特徴は、その徹底した秘密ぶりであり、創設から17年が経過した今でも実情は秘密に包まれています。

存在そのものが防衛機密の特殊作戦群は、千葉県習志野駐屯地に本部を置いており、自衛隊が特殊部隊として公式に認めた初の部隊です。その任務は、対テロ・対ゲリラ戦闘から敵陣への潜入や破壊工作に至るまで多岐にわたります。人気マンガ「空母いぶき」では、中国軍に占領された離島に夜間の空挺降下を行って潜入する描写がありましたが、実際の離島奪還作戦でも似たことをする可能性は十分あります。

また、特殊部隊ということで、他部隊よりも個人装備はかなり充実しており、米軍やドイツの自動小銃、対人狙撃銃、暗視装置、防弾チョッキなどを揃えているようです。任務に応じて様々な装備を使い分けるため、これらの武器等を巧みに操る一流のスキルを身に付けます。これだけ幅広い種類の個人装備に触れることができるのも特戦群ならではかもしれません。

特戦群への道

では、特戦群に入るにはどうすればいいのでしょうか?

残念ながら特戦群は公式行事でもほとんど顔を見せないため、一般国民はおろか、自衛隊員ですら目にする機会はありません。過去に数回だけ式典に少数の隊員が参加した際も、目出し帽を着用して身元がバレないようにしていました。これだけの徹底ぶりだと、家族すら特戦群に所属していることを知らない可能性が大です。

ただ、発足から15年以上が経過した今、少しずつ情報は出てきています。創設時の隊員は、ほとんどが第1空挺団出身者が占めていたそうですが、これは第1空挺団が特戦群発足まで「陸自最強」の異名をほしいがままにしてきたエリート空挺部隊だったこと大きな要因でしょう。しかし、エリートを自認する第1空挺団から同じ駐屯地に出来た新設部隊に転籍する隊員に対する目線は当初は冷ややかだったと言われており、辛酸を嘗めた初期メンバーは出世や評判を気にせずに「兵」としての更なる高みを目指す強者でした。

さすがに現在は他部隊からの隊員も採用していますが、それでも部隊が自信満々に送り出した屈強な隊員が落選するケースが絶えません。受験資格の詳細は明らかではないものの、実は受験時にはレンジャー資格や空挺資格を持っていなくても良いそうです(合格後にこれら資格を取得しなければならないが)。また、職種に制限もないと言われており、極端なことをいえば、普段は補給や整備を担当している者でも「受験」は出来ます。

空挺降下を行う第1空挺団の隊員たち(出典:陸上自衛隊)

合格までのプロセスは多層的であり、まず初期選考(書類審査、面接、体力測定)に2週間かかります。特に、身体的な頑丈さよりもメンタル面での強さを重視する傾向があるそうです。また、機転が効くかどうかの有無や洞察力も結構みられます。

伝え聞いた話を一つ挙げると、特戦群の面接前にトイレに案内された候補生がいました。当該隊員は、その後、面接本番でトイレの壁に張ってあるタイルの色を聞かれたそうです。つまり、「特戦群隊員たる者、普段から1秒たりとも気を抜くな」ということです。

初期選考を通過したら、その後はおよそ1年かけてじっくり体力・メンタル・技能の各種項目で特戦群に相応しいかを見極める「特殊作戦課程」を経験します。また、レンジャー、空挺降下、潜水、冬季戦闘などにおける各種資格を取得することも求められます。

合格しても最低2〜3年は全く気が抜けない試練の連続なのです。よって、屈強なレンジャー隊員であっても脱落することは決して珍しくなく、心身ともに真のタフネスを備えた者が生き残るのです。こうしてみると、特戦群に入る1番の道はなるべく若いうちに第1空挺団に入って、目に止まるような心身ともに優秀な隊員になることでしょう。

バケモノ揃いの隊員たち

仮になんとか試験に合格して晴れて特戦群に入れても、そこには超人クラスの同僚や先輩が待っていると言われています。当然、特戦群の隊員はレンジャーばかりですが、他部隊のレンジャー隊員とは次元が違うそうです。

一例を挙げると、実弾射撃訓練では隊員が的の真横にいるにもかかわらず、走りながら撃って見事命中させたいう有名なエピソードがあります。真偽のほどは不明ですが、国の特殊部隊となれば実弾を使った訓練は当たり前であり、さらなる高リスクの訓練を行なっていてもそこまで不思議ではありません。

また、特戦群の隊員は仕事に対するストイックな姿勢がズバ抜けており、せっかくの休日もひたすらトレーニングに打ち込む者も多いとか。他にも、アメリカのグリーンベレー部隊への研修に出向いている隊員もおり、実戦経験が豊富な米軍からあらゆるノウハウを吸収しています。研修に行けなかった者のなかには私費と休暇を投げ打って他国軍への体験入隊、民間軍事会社での研修に参加するとか・・・

特戦群は「影の部隊」

特戦群は発足してだいぶ経ちますが、その性質からほとんど話題になりません。本当の意味での「日陰者」であり、出動しても活躍ぶりを華々しく報じられることはありません。これだけSNSなどですぐ情報が出回る時代にここまで実情を隠匿できている存在は稀です。

確認されているのが、2016年の伊勢志摩サミットで対テロを想定した警備任務に就いていたことぐらいです。ほとんど表舞台に登場しないため、訓練内容や想定任務については想像力が膨らむ一方です。一説には、北朝鮮に拉致された邦人の奪還任務の研究を行なっているとか。高度な政治的判断が必要なこの任務が現実的かどうかはさておき、実行部隊の最有力候補である特戦群は相応の能力と確たる意思を持つべきでしょう。

特戦群隊員は狙撃技術も求められる(出典:陸上自衛隊)

また、海外要人の暗殺も想定した訓練を実施している話がありますが、これも特殊部隊の性質を考えればむしろ当たり前です。アルカイダのビンラディンやイスラム国のバグダディを急襲・暗殺したのはどちらも米軍の特殊部隊であり、いわゆる「斬首作戦」には特殊部隊が必ず投入されます。

言い方を変えると、光は当たらないものの、常に試練と最上のスキルが要求される「現代の忍者」になる覚悟がある者だけが特戦群の一員になれるのです。

1 ・・・次のページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました