謎のベールに包まれた日本最強の特殊部隊
陸上自衛隊には最強と言われる部隊がいくつか存在しますが、最も相応しいのは間違いなく「特殊作戦群」でしょう。通称「特戦群」と呼ばれるこの特殊部隊はアメリカのグリーンベレーやデルタフォースを目指して2004年に創設され、その最大特徴は徹底した秘密ぶりにあるといえ、創設から約20年が経過した今も実情はほとんど謎のままです。残念ながら一般国民が特戦群を見る機会はなく、式典に参加する少数の隊員も目出し帽を着用して身元がバレないようにするという徹底ぶりです。ちまたでは本人の家族すら特戦群に所属していることを知らないとか。
存在自体が機密の特殊作戦群は千葉県・習志野駐屯地に本部を置き、自衛隊が特殊部隊として公式に認めた初の部隊ですが、その任務は対テロ・対ゲリラ戦闘から敵占領地域への潜入、破壊工作に至るまで多岐にわたります。こうした様々な任務を担う特殊部隊ということもあって、個人装備はかなり充実しており、米軍やドイツ軍も使う自動小銃や対人狙撃銃、暗視装置などを揃えているそうです。
創設時は隊員のほとんどがエリート部隊の第1空挺団出身だったそうで、既に精鋭揃いの畑からさらに選りすぐりの猛者たちを引っ張ってきたといえます。さすがに現在は他部隊からも採用していますが、それでも部隊が自信満々に送り出した優秀隊員が落選するケースが絶えず、陸自で最も高いハードルなのは間違いありません。

受験資格の詳細は明らかにされていないものの、意外にも受験時にはレンジャー資格や空挺資格は求められないそうです(もちろん、合格後に取得します)。また、職種の制限もないと言われており、極端な話、普段は補給や整備を担当している者でも「受験」は可能なのです。
合格までは多層的な選考過程を経なければならず、まずは2週間かけて書類審査や面接、体力測定などの初期選考を実施しますが、この際に身体的な頑丈さよりもメンタル面でのタフさを重視する傾向があります。他にも、機転が効くかどうかの有無や普段の洞察力もガッツリみられるとのことですが、例えば、面接前のトイレに案内された後、面接本番でトイレの壁の色について聞かれた候補生がいたそうです。
初期選考を通過したら、その後は約1年かけて体力とメンタル、各種技能の点で特戦群に相応しいかどうかを見極める「特殊作戦課程」を経験しますが、この際にレンジャー、空挺降下、潜水、冬季戦闘などの資格取得に向けた訓練も施されます。結局、合格しても最低1〜2年は全く気を抜けない試練の連続であり、屈強なレンジャー隊員も脱落することは決して珍しくなく、心身ともに真のタフさを備えた者のみが生き残るのです。
特戦群はバケモノ揃いの「影の部隊」
さて、レンジャー隊員ですら想像を絶する試験を突破しても、特戦群で待っているのは超人クラスの同僚や先輩ばかりで、とある特戦群隊員は実弾射撃訓練において標的のすぐ横に他の隊員がいるにもかかわらず、走りながら見事命中させたという有名なエピソードがあります。真偽のほどは不明ですが、これは撃つ側も標的の真横に立つ者も極めて胆力があると言わざるを得ず、特戦群の異常さを表しています。さらに、他にもアメリカのグリーンベレーに研修で出向いたり、なかには私費と休暇を投げ打って他国軍への体験入隊、民間軍事会社での研修に参加する者もいるとか。
このようなバケモノ級の隊員が多く所属している特戦群はその特殊性から話題になることはほぼなく、これだけSNSで情報がリークされる現代にあって活動内容をほぼ秘匿できている本当の意味での「日陰者」です。2016年の伊勢志摩サミットで対テロの警備任務に就いていたことぐらいは把握されているものの、それ以外の訓練内容や想定任務については想像力に任せるしかありません。一説には北朝鮮による拉致被害者の奪還や要人暗殺の研究を行っているとの話がありましたが、アルカイダのビンラディンやイスラム国のバグダディを急襲したのはどちらも米軍の特殊部隊であったことを考えるとそこまで不思議ではないでしょう。
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