海上自衛隊の「たいげい型」潜水艦が誇る性能とは?

停泊中の自衛隊の潜水艦 自衛隊
この記事は約3分で読めます。

「そうりゅう型」の発展版

海上自衛隊の潜水艦は世界最高峰の静粛性を持ち、現在は「おやしお型」「そうりゅう型」、2022年から新たに加わった「たいげい型」の3つを運用しています。

「たいげい(大鯨)」とは大きなクジラという意味ですが、基準排水量3,000トンにまで大型化した最新潜水艦にはふさわしいネーミングです。

  • 基本性能:「たいげい型」潜水艦
排水量 3,000t(基準)
全 長 84m
全 幅 9.1m
乗 員  約65名
速 力 水上航行時:時速24km
水中航行時:時速35km以上
潜航期間 最長1ヶ月(推定)
潜航深度 700〜900m(推定)
建造費 約800億円

この潜水艦は「そうりゅう型」を発展・改良させたもので、引き続き「非大気依存型(AIP)」の推進機関を採用するとともに、通常動力型の弱点である潜航期間をさらに伸ばしました。

同じAIP機関を使っているとはいえ、「そうりゅう型」が最後の2隻を除いてスターリング・エンジンを使っているのに対して、こちらは初めからリチウムイオン蓄電池を搭載しています。

リチウムイオン蓄電池は出力が高く、静粛性・持続性にも優れているため、最長1ヶ月は潜航状態を維持できるようです。ただし、これはあくまで節電した場合のケースであって、戦闘になればその分だけ電池を消費します。

新たにスノーケル発電システムを取り入れることで、潜航しながらの充電も可能にしていますが、原子力潜水艦と違って電池残量を気にしなければならないのは変わりません。

それでも、通常動力型として望める最高クラスの性能は手に入れたといえます。

また、リチウムイオン蓄電池のおかげで充電時間も短くなったものの、本体容量はスターリング・エンジンより大きく、その影響で船体は大型化しました。

期待の最新鋭潜水艦「たいげい」(出典:海上自衛隊)

さて、戦闘能力は光ファイバー技術を使った新型ソナーで探知力を高めつつ、潜望鏡は映像をディスプレイに転送する「非貫通式」に変更して逆探知リスクを減らしました。

兵装面でも、画像センサーで「おとり」に強くなった18式魚雷を搭載しており、音が乱反射しやすい浅い深度でも目標を捉えられます。

ほかにも、各装備品と船体の間に衝撃吸収装置を設けたところ、精密機器の保護と雑音低下を実現しました。潜水艦にとって雑音発生は致命傷につながりやすく、この改善努力はかなり重要といえます。

女性を想定した艦内設計

おそらく「たいげい型」で最も画期的なのが、初めて女性自衛官を想定して設計された潜水艦である点です。

水中の狭い艦内という特殊環境で長期間を過ごす関係から、2018年まで女性自衛官は潜水艦に勤務できませんでした。しかし、慢性的な人手不足のなかで潜水艦22隻体制を目指すには、この配置制限を撤廃する必要がありました。

こうして、2020年には海自初の女性サブマリナーが誕生して、「たいげい型」には新たな潜水艦像に向けた配慮が設計段階から盛り込まれました。

配慮の一例をあげると、女性用寝室は仕切りと鍵付きのドアを設けて、他の居住区とは分離しています。そして、シャワー室にも鍵付きドアと通路用カーテンを設置するなど、女性の使用中は他の隊員が入ってこれない仕組みにしました。

軍隊でも男女の垣根がなくなりつつあるなか、「たいげい型」はまさしく現代に対応した潜水艦になりました。

この新型潜水艦は6番艦までの建造が決まっており、古くなった「おやしお型」を順次更新していきます。数で勝る中国潜水艦が性能面でも追い上げてくるなか、日本の質的優位性を保つためにも「たいげい型」の役割は極めて重要なのです。

海上自衛隊、潜水艦保有数を22隻体制へ増強
潜水艦という兵器のよさ 島国・日本にとって「海の守り=国防」というのは昔から変わらず、海上自衛隊も発足してから戦力拡充と能力向上を図ってき...

コメント

タイトルとURLをコピーしました