「そうりゅう型」の発展版として登場
優れた静粛性を持つことで知られる海上自衛隊の潜水艦ですが、現在は「おやしお型」と「そうりゅう型」、そして2022年に加わった「たいげい型」の3種類が運用中です。
「たいげい型」は大きなクジラを意味する「大鯨」から名付けられ、基準排水量3,000トンにまで大型化した船体には相応しいネーミングでしょう。
⚪︎基本性能:「たいげい型」潜水艦
排水量 | 3,000t(基準) |
全 長 | 84m |
全 幅 | 9.1m |
乗 員 | 65名程度 |
速 力 | ? |
潜航期間 | 最長1ヶ月? |
潜航深度 | 700〜900m? |
建造費 | 1番艦は約800億円 |
「そうりゅう型」潜水艦を発展させた「たいげい型」は、推進機関に同じ「非大気依存型(AIP)」を採用して通常動力型潜水艦の短所だった潜航期間を伸ばしました。
ただし、「そうりゅう型」が最後の2隻を除いてスターリング・エンジンを搭載しているのに対して、「たいげい型」は初めから高出力で持続性に優れたリチウムイオン蓄電池を搭載しているため、潜航期間は最長1ヶ月となりました。
このリチウムイオン蓄電池は充電時間の短縮という利点がある一方、スターリング・エンジンよりも大きいので、それにともなって船体も少し大型化したわけです。
また、光ファイバー技術を使った新型ソナー・システムで探知能力を高め、囮対策の画像センサーを搭載した新しい18式魚雷によって、音波が乱反射する浅海でも確実に目標を捉えられます。
さらに、装備品と船体の間に衝撃吸収装置を設けたことで、振動伝達を抑えましたが、これは衝撃波を吸収して精密機器を保護するとともに、動揺による雑音を減らす効果があります。
女性サブマリナーを想定した設計
「たいげい型」で最も画期的なのが、潜水艦として初めて女性自衛官を想定した設計になっている点。
狭い艦内で長期間を過ごす潜水艦は、2018年まで女性は勤務できなかったものの、慢性的な人手不足のなかで潜水艦22隻体制を目指すには、この配置制限を撤廃しなければなりません。
そして、2020年には海自初の女性サブマリナーが誕生しました。
新しい将来を見据えた「たいげい型」は、女性自衛官を前提とした配慮が設計段階から盛り込まれました。
一例をあげると、女性用寝室は仕切りと鍵付きのドアを設けて他の居住区と分離しています。そして、シャワー室にも鍵付きドアと通路用のカーテンを設置して、女性の使用中は入って来れない仕組みを採用。
軍隊でも男女の垣根がなくなりつつある現代に対応した「たいげい型」は、現時点では5番艦までの建造が決まっていて、老朽化した「おやしお型」を順次更新していく予定です。
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