陸上自衛隊の輸送艦?新編される海上輸送群の役割とは

自衛隊の揚陸艇 陸上自衛隊
この記事は約3分で読めます。

離島防衛へ輸送力強化

中国から南西諸島を守るべく、陸上自衛隊は「水陸機動団」を発足するなど、従来の北方重視から離島防衛にシフトしてきました。

ところが、この離島防衛には海上輸送力が欠かせず、これを担うべき海上自衛隊の輸送艦艇が3隻の「おおすみ型」輸送艦、あとは退役間際の輸送艇1号型のみという状況です。

すなわち、現状では海上輸送力が足りておらず、「ナッチャンWorld」のような民間フェリーもチャーターしています。民間船の借上げや徴用はよくある話ながら、自己完結を目指す軍隊にとって、自前の手段を持っておくのに越したことはありません。

海自も次世代輸送艦、ひいては強襲揚陸艦まで考えているようですが、これら大型艦艇が整うには時間がかかります。

アメリカ陸軍が運用する兵站支援艦(出典:アメリカ陸軍)

こうした状況をふまえて、陸自は海自とともに「海上輸送群」を創り、独自に輸送艦を確保することを決めました。

まずは、中型輸送艦(2,000トン級)と3隻の小型輸送艇(400トン級)を持ち、輸送艇1号型のような機動舟艇も建造します。そして、いずれは「中型輸送艦×2、小型輸送艇×4、機動舟艇×4」の10隻体制になる予定です。

これらで人員や装備、物資を運び、目的の離島防衛は言うまでもなく、災害派遣時の機動展開にも使われます。

船乗りになる陸自隊員

さて、陸自が独自の輸送艦を持つのに対して、まるで戦時中の旧日本軍のようだという声が出ました。

当時の陸海軍は協調・協力の精神がなく、それは戦争中に陸軍が自分たちで潜水艦を作るほどでした。これは海軍が制海権を失いつつあるなか、南方の守備隊に補給物資を送るべく、陸軍が独自に建造したものです。

しかし、今回の海上輸送群は陸・海の共同部隊であって、この点が戦時中の陸海軍とは大きく異なります。

そんな海上輸送群に所属する陸自隊員たちは、船に必要な知識とスキルを身につけるべく、海自の術科学校に入らなければなりません。

この学校では航法や機関、手旗・旗りゅう信号などについて学び、卒業後は「おおすみ型」輸送艦で勤務しながら現場経験を積みます。

それぞれ志願してやってくるとはいえ、基本用語の違いに直面するなど、やはり組織文化の壁は大きいようです。

たとえば、陸自では敬礼の角度が90度であるのに対して、海自は狭い艦内を考慮した45度になります。頭では理解していても、長年の染みついた慣習はなかなか抜けず、このあたりで苦労する人も多いとか。

こうした違いに加えて、船酔いにも悩まされるそうですが、それでも志望したうえで来ているためか、陸自では学べない、経験できないおもしろさが勝るそうです。

これまでも「サイバー防衛隊」ようなの共同部隊があったものの、輸送艦のような大型装備を共同運用するのは初めてになります。したがって、自衛隊の統合運用が進むなか、海上輸送群は陸・海の垣根を越えた新しい連携体制の試金石になるでしょう。

自衛隊の戦車も運ぶフェリー、ナッチャンWorldとは?
防衛省が使う高速フェリー 中国の海洋進出を受けて自衛隊は南西方面重視へとシフトしており、離島防衛用の部隊編成と装備品の調達を進めている最中...

コメント

タイトルとURLをコピーしました