退役間際?海上自衛隊の輸送艇1号型とその後継について

自衛隊の揚陸艇 自衛隊
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「戦車<人員」の小型揚陸艇として

離島を多数抱える日本にとって海上輸送力は非常に重要で、特に離島防衛はこの能力なくして成立しません。

この海上輸送力を主に支えているのが海上自衛隊の「おおすみ型」輸送艦の3隻ですが、実は他の輸送艦艇を保有していて、それが「輸送艇1号型」という2隻の小型輸送艇です。

大型の「おおすみ型」と比べてあまり目立たないこの輸送艇は、一体どのような船なのでしょうか。

⚪︎基本性能:輸送艇1号型

排水量 420t(基準)
全 長 52m
全 幅 8.7m
乗 員 28名
速 力 12ノット(時速22km)
航続距離 3,180km
兵 装 20mmバルカン砲×1
輸送能力 人員200名
物資25t

輸送艇1号型は離島などに人員や物資を運ぶための汎用揚陸艇(LCU)であり、1987年から1992年にかけて2隻が建造されました。いわば上陸用舟艇の一種であり、海岸にそのまま乗り上げた後に艦首のランプ(ドア)を開いて人員や物資、車両を揚陸させます。

船体は前部が人員・物資を載せるスペースとなっており、艦橋や居住区は後部にあります。面白いことに、通常の船では艦首にある錨も本艇では艦尾に設置されており、乗り上げた海岸から離礁する際にも使われます。

輸送能力については、人員ならば1個中隊に相当する最大200名まで乗せることができるとされており、物資ならば25トンまで積載可能です。残念ながら重量の関係で戦車は載せられませんが、大型トラックや軽装甲機動車などは輸送できます。

ただ、どちらかといえば、車両よりも人員の輸送を重視した輸送艇であって、このあたりが戦車などの重装備揚陸を優先する米軍の汎用揚陸艇とは異なる点です。

また、本艇は災害時における住民の海路避難も想定しており、災害派遣訓練ではしばしば避難民の海上輸送を担当しています。

輸送艇1号型は東日本大震災でも物資輸送で活躍しましたが、2隻しか建造されなかったことから海自の輸送能力を底上げするには不十分でした。

離島防衛が最重要視されている中で海上輸送力の強化も急務となっていますが、現「おおすみ型」3隻と本艇で支えているのが現状で、有人島だけで400以上の離島を有する海洋国家にしては輸送艦艇の数が少なすぎます。

わずか2隻のみに終わった輸送艇1号型ですが、老朽化が進んでいることから輸送艇1号は2022年4月に退役・除籍となりました。

したがって、今は輸送艇2号だけが残っていますが、2021年に低視認性の塗装に塗り直されたことからあと数年は続投するのではないかと推測します。

後継については特に計画されていませんが、陸上自衛隊が独自の輸送艦艇を運用する方向であり、建造予定の小型輸送艇が事実上の後継扱いになりそうです。

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