自衛隊は導入せず?F-15EXの驚くべき性能と価格

F-15戦闘機 アメリカ
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進化したイーグルII

航空自衛隊でF-35ステルス戦闘機の配備が進むなか、機数では未だにF-15J戦闘機が主力を務めています。ところが、このF-15もかなりの老朽化が進んでいて、さらなる近代化改修で能力向上を図るものの、保有機のうち半数以上は改修しません。

こうした非改修機は、英伊と共同開発する「次期ステルス戦闘機」へ更新される可能性が高いなか、一部ではF-15戦闘機の最新バージョンである「F-15EX」を期待する声があります。

すでにアメリカでの運用が始まったF-15EXとは、一体どのような機体なのか?

  • 基本性能:F-15EX戦闘機
全 長 19.44m
全 幅 13m
全 高 5.63m
乗 員 1名  ※機体は複座式
速 度 マッハ2.5(時速3,000km)
航続距離 約4,800km
高 度 18,300m
兵 装 20mm機関砲×1(500発)
空対空ミサイル
長距離対地ミサイル
誘導爆弾など
価 格 1機あたり約100億円

「イーグルII」とも呼ばれるF-15EX戦闘機は、旧式化したF-15C/Dの後継として導入されたF-15シリーズの最新型です。パイロット1名のみで運用できますが、単座式の生産ラインが閉鎖されていた事情から、機体そのものは複座式になっています。

湾岸戦争などで活躍した対地攻撃型のF-15E「ストライク・イーグル」をベースにしており、最新技術を盛り込んだおかげで性能的には飛躍しました。

まず、最新レーダーによって探知距離を約400kmまで伸ばしつつ、処理能力と電子戦能力もアップグレードされています。特に電子戦では探知と妨害を同時遂行できるようになりました。

そして、コックピットのデジタル化と「フライ・バイ・ワイヤ」というコンピュータ制御の操縦システムを取り入れたところ、パイロットの負担軽減に加えて、高い機動性を実現しました。

この高速処理コンピューターによるアシストを使えば、そのときの状況に合わせて限界ギリギリまで機体性能を引き出せるのです。おかげでF-22戦闘機にしかできなかったような空中機動技ができたり、条件付きながらもマッハ3(3,704km/h)という現役戦闘機としては世界最速の数値まで叩き出しました。

これらは加速・旋回などの運動性能が勝敗を分ける格闘戦(ドッグファイト)では優位性をもたらします。

複座式だが、単独運用できるF-15EX(出典:アメリカ空軍)

F-15Eと比べても、到達高度で20%、航続距離は24.6%、そして兵器搭載量は28.2%も伸びたほか、JASSM-ER対地ミサイルによる長距離攻撃能力も手に入れました。

空対空ミサイルにいたっては、中距離空対空ミサイルの代名詞ともいえる「AIM-120 AMRAAM」を最大12発も搭載可能です。従来型が最大8発、同世代のF-16戦闘機ですら最大6発である点を考えると、これは驚異的な兵器搭載量であり、F-35やF-22の最大8発を上回ります。

むろん、これだけ積んだら動きは悪くなりますが、それでも「ビースト・モード」とも呼ばれるこの搭載能力は空戦ではかなりの脅威になるでしょう。

ほかにも、機体の耐久性を高めたり、新しい自己防御システムを採用するなど、F-15EXの空戦能力は非ステルスの第4.5世代戦闘機としては世界最高クラスです。

政治的産物でもある

一方、現代戦のF-15EXはステルスとはほとんど無縁の存在で、ネットワーク型戦闘を志向する最先端の戦いに対応しきれません。

また、米空軍はそもそもF-15EXを望んでいなかった事実があります。

これは旧式機の退役ペースに比べて、最新ステルス機などの配備が間に合わず、仕方なく「つなぎ」として生産したというもの。しかも、これには苦境にある航空機大手・ボーイング社を救うという裏事情もありました。

すなわち、F-15EXは運用する空軍側があまり望んでいないにもかかわらず、結果的に押し付けられた政治案件でもあるのです。

有力な非ステルス機

政治駆け引きの産物という側面を持つものの、F-15EXの優れた兵器搭載能力、すばらしい運動性能、航続距離の長さなどは、ステルス機が開いた突破口から侵入する二次戦力や控えとしては申し分ありません。

他方、平時の抑止力はステルス機でなくとも務まり、むしろ姿を見せて存在を示さねばなりません。非ステルス機でこれだけの性能を見せつければ、仮想敵には相当なプレッシャーを与えられます。

さらに、進化したとはいえ、F-15シリーズであるのは変わりなく、今までF-15を使ってきた国にとっては習熟期間や維持整備、相互運用面において使いやすいといえます。

2021年に披露されたF-15EXの量産機(出典:アメリカ空軍)

そんなF-15EXは米空軍による98機の調達が決まっているほか、ポーランドなどのNATO諸国が潜在市場となっています。ただし、米空軍向けの調達数がもともと144機だったのを考えると、やはり空軍としてはあまり望んでいないのがうかがえます。

また、日本はF-15EXを導入するつもりはなく、あくまでF-15Jのさらなる改修を目指す予定です。近代化改修が上手くいかなかったり、次期戦闘機計画がとん挫したら、F-15EXの緊急登板がありえないわけではないですが。

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