ASM-3対艦ミサイルは失敗作なのか?

ミサイル
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期待の超音速ミサイルは射程が足りなかった

航空自衛隊の任務は敵の航空戦力を撃破して航空優勢を確保することですが、ほかにも敵艦隊を攻撃して海自の海上優勢獲得を支援する役割が与えられており、この対艦攻撃で主に投入されるのが「平成の零戦」ともいわれるF-2戦闘機です。ただ、近年は水上艦艇の防空網を確実に突破できる超音速ミサイルの開発が急務となっているため、これまで使っていた93式空対艦ミサイル(ASM-2)よりも速度とステルス性を飛躍的に向上させた超音速ミサイル「ASM-3」が開発されました。

⚪︎基本性能:ASM-3対艦ミサイル

全 長6.0m
直 径0.35m
重 量940kg
速 度最大マッハ3以上
(時速3,704km)
射 程約200km
価 格1発あたり数億円

開発中は「XASM-3」と呼ばれていたASM-3ミサイルは「インテグラル・ロケット・ラムジェット」という推進方式のおかげで最大マッハ3(時速3,704km)の超音速を実現しましたが、これは従来の対艦ミサイルと比べて3倍以上の速度を誇り、敵に与える反応時間を大幅に短縮しました。また、ステルス性を意識したデザインと妨害電波への対抗能力も備わったことで迎撃を回避しやすい厄介な兵器に仕上がっています。

F-2戦闘機から発射されるASM-3(出典:防衛省)

2010年に開発がスタートしたASM-3は退役護衛艦「しらね」を標的とした発射試験などをクリアして、2018年初頭に開発が完了したことで量産体制に入ると思われたものの、予想に反して射程を延伸させた「ASM-3(改)」の開発にそのまま入りました。これは開発当初は十分だと思われていた200kmの射程距離が中国海軍の対空ミサイルの長射程化によって今度は一転して足りないと懸念されたのが原因ですが、ほかにも超低空飛行が苦手な点、ステルス性が諸外国の類似ミサイルと比べて劣っている点が指摘されました。

このような事情からASM-3は配備されず、射程延伸型のASM-3(改)が急遽開発されることになったわけですが、安全保障環境の急激な悪化を受けた防衛省は途中成果をとりあえず反映させた「ASM-3A」の調達を2022年から開始しました。

これは射程を400kmまで伸ばしたものの、誘導性能のアップグレードは間に合っていない「つなぎ」のような存在で、正式な改良型といえるASM-3(改)は2025年中の開発完了を目指しています。あと数年で開発が終わるASM-3(改)を待たずに一部成果をふまえた先行版の量産に踏み切るのは異例ですが、それだけ中国の脅威が差し迫っている証なのです。

射程延伸型のASM-3(改)のイメージ図(出典:防衛省)

まもなく登場する射程400kmのASM-3(改)はF-2戦闘機に2発搭載でき、F-15J戦闘機に搭載される能力向上型の12式対艦ミサイルとともに空自の対艦攻撃能力を強化する予定です。ただ、改修によってF-2戦闘機も搭載予定の12式対艦ミサイルは最終的な射程距離を1,500kmまで延伸するスタンド・オフ化が計画されているため、ASM-3(改)もさらなる長射程化が追求されると思われます。

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