航空機の性能を試す特別部隊
日本の空を守る航空自衛隊で最も「強い」部隊といえば、訓練などで敵役を演じる飛行教導群のアグレッサー部隊でしょう。
圧倒的な戦闘スキルを誇るアグレッサーたちですが、操縦技術ではテスト・パイロットが所属する「飛行開発実験団」も負けていません。
岐阜基地にある飛行開発実験団は、空自が使う航空機やミサイルなどを試して、その性能を評価する専門部隊です。たとえば、F-2戦闘機や国産のC-2輸送機、先進技術の実験機として作られた「X-2(心神)」、対艦キラーとして期待される「XASM-3」もここで試験運用されました。
また、導入済みの機体であっても、その性能限界や改良部分を試すのも同部隊の役割です。すでに40年以上も運用されているF-15J戦闘機が、飛行開発実験団に配備されているのもこうした理由があります。
ただし、厳密にいえば、この部隊はテスト・パイロットが所属する飛行隊、ミサイルを試す誘導武器開発実験隊、電子戦技術隊などに細かく分かれています。
飛行開発実験団の編成(出典:航空自衛隊)
どうしても実際に操縦する飛行隊が注目されがちですが、同じ「X-2」でもステルス性を試すのは計測隊、電波妨害への耐性を評価するのは電子戦技術隊であるように、開発評価にはあらゆるチームとその専門性が欠かせません。
テスト・パイロットはエリート
飛行開発実験団は新しく導入したり、開発した装備を試す以上、まさに「未知の領域」に対応できる技能が求められます。
新しく開発された航空機というのは事故率が高く、運用上の課題をクリアするにはそもそも問題自体を把握する必要があるので、テスト・パイロットは通常よりも危険がともなう仕事です。
C-2輸送機の試験飛行(出典:航空自衛隊)
つまり、未知の機体を操れる飛行技術が必要なわけですが、テスト・パイロットは空自が持つさまざまな航空機を担当するので、要求されるスキルの「幅」も広くなります。
しかも、試験飛行で集めたデータについて、エンジニアたちと意見を交わせるだけの専門知識も必要です。よって、テスト・パイロットは米空軍を含む世界各国ではエリート扱いになり、日本も例外ではありません。
純粋な操縦技術ではアグレッサーたちには及ばないとはいえ、そのスキルや専門知識の「広さ」では上回るかもしれません。
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