次期戦闘機F-3はどうなるのか?

航空機

F-2戦闘機の後継として開発予定

空の守りを担う航空自衛隊は現在3種類の戦闘機を運用中ですが、そのうちの一つであるF-2戦闘機は早ければ2035年頃から順次退役することが見込まれており、後継機の選定が目下の課題です。「平成の零戦」の愛称を持ち、2000年から運用されているF-2戦闘機は、アメリカからの政治的圧力によって国産開発から不平等な日米共同開発に追い込まれた経緯があります。

詳しくは⇨「平成の零戦」F-2戦闘機

F-2開発時の苦い経験からか、後継機は国産機もしくは日本主導での共同開発に強いこだわりが垣間見えます。F-2の後継機ということで「F-3」と呼ばれることが多いですが、実は防衛省は一度も「F-3」という言葉を使っておらず、正式名称はあくまで「次期戦闘機」です。実際に開発されたら、F-3戦闘機という正式名称になるかもしれませんが。

さて、F-3(仮)戦闘機はF-2を担当した三菱重工業が主体となって開発しますが、当初はアメリカの航空大手・ロッキードマーチンから技術支援を受ける予定でした。同社はF-35ステルス戦闘機を開発した実績を持っており、特にステルス技術や統合戦闘システムにおける支援が期待できるとされました。

そして、日本勢の「弱点」と評されることが多いエンジンについては、IHIがイギリスのロールス・ロイスと共同開発することになりました。自動車で有名なロールス・ロイスですが、航空機向けのエンジンでも高い信頼性を有しているのです。

ところが、2022年にメインの共同開発国がアメリカではなくイギリスに変更され、三菱重工業+ロッキードマーチンではなく、三菱重工業+BAEシステムズの構図になりました。

なぜアメリカではなくイギリスになったのか?

様々な理由が飛び交っていますが、実は日米は次期戦闘機開発の必要性では合意していたものの、「いつ」という点で認識のズレがあったようです。これに対してイギリスは「テンペスト」と呼ばれる次期戦闘機計画を進めていることから、似たタイミングで開発すれば技術や知恵を融通し合うことができます。

また、要求や制約が厳しいアメリカと比べて、イギリスは柔軟な対応とより対等な関係性を期待できます。そして、欧州主要国の中で最もアジア太平洋に関心を寄せているイギリスは今や日本の「準同盟国」とも言える相手であり、共同開発国としては自然な選定と言えるでしょう。

このように日本主体で開発しつつ、イギリスをメインパートナーとするわけですが、アメリカも完全撤退したわけではなく、情報共有システムなど一部の点では協力を続けるそうです。以前ならば、アメリカを省いた戦闘機の日英共同開発なんて対日圧力で潰されていたでしょうが、今回はアメリカもすんなり受け入れています。

台頭する中国を前に相対的に国力が落ちているアメリカとしては、同盟国により一層頑張ってもらうほかなく、日英が対中国も見据えた戦闘機開発で協力するのはむしろ国益に適うのです。同じ自由主義陣営の仲間と同盟国であり、その鉾が自分に向くことがないため、アメリカとしては事実上の第二次日英同盟に反対する理由は何もありません。

F-3戦闘機のイメージ図(出典:防衛省)

さて、そもそも国産開発ではなく国際共同開発を選ぶ理由は何でしょうか?

答えはコスト削減と時間短縮です。いくら日本が優れた技術を持っていても、ステルス戦闘機を自前で開発するには莫大なコストと時間がかかります。

単独でゼロからステルス戦闘機を開発するのは高すぎるうえ、あまり割に合わないのです。同盟・準同盟関係にあり、最新戦闘機の開発という共通目標があるならば、協力した方がコスト削減と時間短縮を実現できます。これは広い同盟ネットワークを持つ旧西側陣営の強みと言えますし、日本もその一員として十分活用するべきでしょう。

さらに、対中国という観点でいえば、悠長に時間をかけている暇はありません。現在のスケジュールでは、2024年には試作機の製造が始まり、順調にいけば2030年には量産体制に入る見込みです。開発費は計1.5兆円にも上ると見積もられており、F-2の代替として約90機が配備されます。

F-3はチーム戦を前提とした戦闘機

F-3戦闘機はステルス性能が話題になることが多いですが、要となるのはネットワーク性能です。これは従来と比べて各種センサーとシステムを統合した上で、陸海空と宇宙がそれぞれ連携し合う中での「頭脳的」な役割を担うことを企図しています。

今までの戦闘機は主に単機で敵戦闘機を撃破することを主眼に開発されてきました。しかし、F-3は探知した敵を自機のみならず、他の僚機や無人機などを使って撃破することも念頭においています。いわば、「個」の戦いから「チーム」での連携プレイを目指すものです。

例えば、F-3戦闘機が2機編隊(それぞれA機、B機と呼称する)で飛んでいるとしましょう。A機は敵機を探知しますが、A機自身は攻撃しません。代わりにB機に情報共有した上でミサイルを撃たせ、A機はミサイルの誘導に専念します。他にも、F-3戦闘機がAIで自律飛行する無人機を制御することで、無人機を囮や攻撃に使う構想も出ています。

クラウド・シューティングと呼ばれる空中でのチーム戦(出典:防衛装備庁)

このように、チームで役割分担することで効率的な攻撃と敵の撹乱を狙うわけですが、実際は航空機同士だけではなく、陸上レーダーや海自の護衛艦との連携もここに含まれてきます。そして、このような複雑なチームプレイを行うにはキャプテンのような存在が必要ですが、その役割を空中で担うのがF-3戦闘機というわけです。

イメージとしては、F-3はそれぞれがミニ管制機のような機能を持っており、無人機を複数操りながら戦う。当然、従来の戦闘機とは大きく異なる運用構想であり、個人戦から集団戦法への進化を目指したものと言えます。

F-3とX-2(心神)は別物

さて、以下の疑問を持った方がいると思います。

「 F-3=心神、X-2ではないのか?」

結論から言うと、F-3戦闘機と心神の愛称で知られるX-2先進技術実証機は「別物」です。

X-2は将来的なステルス戦闘機開発を見据えた最先端技術の実証実験を行うための試作機であり、F-3戦闘機としての量産を目指していたわけではありません。「日本の塊」の意味合いを持ち、富士山の別名でもある「心神」の愛称でも知られるX-2ですが、その役割はあくまで実験用の試作機としてステルス性能や新型制御システム、エンジンなどの評価試験を行うことです。

関連記事:X-2心神はどうなったのか?

ただ、X-2で得られたデータはF-3の開発で活かされるため、X-2とF-3は無関係ではありません。むしろ、X-2は将来のF-3開発を念頭においた実験機と呼ぶのが正しいでしょう。

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