期待されるB-2の後継
アメリカ軍が無類の強さを誇るのは、圧倒的な航空戦力を使って空を支配できるからです。すなわち、航空優勢を完全確立したうえで、敵に打撃を与えつづける能力を持ち、その一翼を支えているのが戦略爆撃機になります。
戦略爆撃機は大国間戦争を防ぐ核抑止戦略の重要ピースでもあり、米空軍では3つのタイプが使われています。このうち、「世界で最も高価な飛行機」とも言われるB-2ステルス爆撃機の後継として開発されたのが、次期戦略爆撃機の「B-21」です。
- 基本性能:B-21レイダー
全 長 | 20m |
全 幅 | 50m |
全 高 | 5m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | 時速1,000km |
航続距離 | 約11,000km |
高 度 | 約15,000m |
兵 装 | 各種爆弾、長距離ミサイル 核爆弾・核ミサイル |
価 格 | 1機あたり約950億円 |
この次期ステルス爆撃機には「レイダー(Raider)」という愛称がつけられていますが、これは太平洋戦争で初めて日本本土を空襲した「ドーリットル隊」の通称から取ったもので、日本語では「侵入者」という意味になります。
B-21は最終的に100機以上が生産される見込みで、前述のB-2に加えて、B-1爆撃機(ランサー)も置き換える予定です。冷戦終結時と比べて、アメリカの戦略爆撃機が1/3まで落ち込むなか、B-21は対中国における優位性確保に欠かせません。
その見た目はB-2とよく似ていますが、技術進歩のおかげでステルス性能は飛躍的進化を遂げており、現存のレーダーではまず探知できません。B-2ですらほとんど探知できない点を考えると、さらにその上をいくB-21を捉えるのは不可能に等しいわけです。
中国側の対ステルス・レーダーにも映らないとされていますが、運よく発見できたしても、レーダーに映りにくいのは変わらず、ミサイルを差し向けても誘導できません。
コストを抑えられるか
それだけ高性能であれば、当然コストも上がるわけですが、B-21については100機以上の量産効果によってB-2よりは安くなる見込みです。
しかし、ステルス性を維持するためのコーティングなど、多額の維持整備費がかかる点は変わらず、最終コストはB-2と似た額までふくらむかもしれません。
一方、装備については各種爆弾、長距離ミサイル、核兵器まで搭載できるのみならず、B-2にはなかった無人飛行機能が与えられました。この機能を使えば、危険度の高い任務でパイロットをリスクにさらさなくても済むものの、それでも1機950億円の超高額機を失う可能性は残りつづます。
莫大なお金をかけてまで作るのは、技術的にも急成長を遂げた中国に対抗するためであって、古くなった爆撃機を最新ステルス機に更新せねばなりません。こうした焦りからか、2025〜2027年には早くも初期配備が始まり、2040年頃までにはB-1、B-2爆撃機を置き換える予定です。
ただし、1950年代から運用されているB-52爆撃機については、エンジン換装とさらなる改修で飛びつづける見込みで、B-21とともに将来の戦略爆撃機体制を支えます。
つまり、アメリカは高額・高性能のB-21ステルス爆撃機と老兵のB-52を組み合わせた「ハイ・ローミックス体制」を目指す形ですが、それは同時にB-21が失敗できないことを意味します。
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