兵員輸送型から自走砲型までのファミリー化を実現
世界各地に基地を持ち、事実上の「世界の警察官」としての役割を担っているアメリカにとって必要な場所に戦力を素早く展開することが重要です。そのためには圧倒的な空輸力を使うのが定石ですが、ここで求められるの歩兵を十分守れる装甲と火力を持ちながら輸送機で運びやすい装甲車であり、そこで開発されたのが「ストライカー装甲車」になります。
⚪︎基本性能
M1126 ストライカーICV (兵員輸送型) | M1128 ストライカーMGS (自走砲型) | |
重 量 | 16.47t | 18.77t |
全 長 | 6.95m | 6.95m |
全 幅 | 2.72m | 2.72m |
全 高 | 2.64m | 2.64m |
乗 員 | 2名+兵員9名 | 3名 |
速 度 | 時速100km(整地) | 時速100km(整地) |
行動距離 | 500km | 530km |
兵 装 | 以下のうち1つを設置可 ・12.7mm重機関銃×1 ・7.62mm機関銃×1 ・40mm擲弾発射器×1 | ・105mmライフル砲×1 ・12.7mm重機関銃×1 ・7.62mm機関銃×1 |
価 格 | 1両あたり約億円 |
第二次世界大戦とベトナム戦争で活躍した2人の兵士の名前から命名された「ストライカー装甲車」は空輸によって迅速に展開する旅団戦闘団の中核として開発され、兵員輸送型以外にも偵察型や迫撃砲搭載型、自走砲型などのファミリー化もされました。これら派生型で機動力に優れた「ストライカー旅団戦闘団」を形成し、地球上のあらゆる場所に対して72時間以内に緊急展開できる体制を整えています。
派生型も含めて今まで4,500両近く生産されたストライカーのうち、最も多く配備されたのが基本型かつ兵員輸送型の「ストライカーICV」であり、同車は一度に9名の兵士を運ぶことができます。武装は機関銃や擲弾発射器のどれかを設置しますが、夜間戦闘にも対応したカメラを使って車内から遠隔操作することができます。一方、防御力については空輸前提の軽量化を目指したことから比較的薄いですが、機関銃弾は防げる最低限の装甲は有します。また、外部に追加装甲を付けることでロケット弾の直撃に耐えるレベルまでは強化できます。

このように装甲車としては最低限の攻撃力と防御力を持つわけですが、そもそもストライカーの「売り」は空輸による緊急展開を想定した機動力の良さなのです。例えば、C-130輸送機であれば1両、C-17であれば4両のストライカーを搭載できますが、これら輸送機によって最寄りの米軍基地もしくは同盟国・友好国の飛行場まで運び、そこからは陸路で当該地域まで進軍します。
しかし、空輸による迅速な展開を見据えて開発されたものの、実際の派遣では海上輸送を用いることが多いそうです。それでも、ハンヴィーよりも装甲と火力で優れ、M2ブラッドレー歩兵戦闘車よりも機敏に動ける点ではストライカーには存在意義と需要があると言えます。
さて、ストライカーファミリーの中で最も強力なのが自走砲型の「ストライカーMGS」になりますが、これは陸上自衛隊の16式機動戦闘車と同じ105mmライフル砲を搭載したバージョンです。MGSの役割はあくまで歩兵の支援なので対戦車戦は想定していませんが、搭載砲がもたらす火力は戦車に対しても十分な打撃を与えられます。

この自走砲型は自動装填装置を用いることで毎分10発の発射速度を発揮できますが、そもそも車内には18発分の弾薬しか搭載できません。また、この自動装填装置は維持費が高い割には信頼性がイマイチらしく、配備先の部隊は不具合の多発に悩まされてきました。そして、MGSは地雷や即席爆弾に対する防御力が弱いという難点を抱えており、自走砲としての総合評価は残念ながら「微妙」と言ったところです。こうした事情もあって、アメリカ陸軍は2022年でストライカーMGSを全廃してその分の予算を他の兵器に回すことにしました。そのため、MGSの後継は特に開発される予定はなく、単なる廃止となる見込みです。
コメント