ストライカー装甲車の魅力、失敗したMGSの後継とは?

アメリカの装輪装甲車 アメリカ
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高い空輸性で緊急展開

世界各地に拠点を構えて、事実上の「世界の警察官」としての秩序維持を目指すアメリカは、軍事力をすばやく展開する能力を重視しています。

こうした緊急展開には自慢の空輸力を使いますが、ここで求められるのは十分な防護力と火力を持ちながら、輸送機でも運びやすい装甲車です。

そして、その目的で開発されたのが「ストライカー装甲車」という車両です。

  • 基本性能
  ストライカーICV
(兵員輸送)
ストライカーMGS
(自走砲)
重 量 16.47t 18.77t
全 長 6.95m
全 幅 2.72m
全 高 2.64m
乗 員 2名+兵員9名 3名
速 度 時速100km(整地)
行動距離 約500km
兵 装 以下のうち1つを装備
・12.7mm重機関銃×1
・7.62mm機関銃×1
・40mm擲弾発射器×1
・105mmライフル砲×1
・12.7mm重機関銃×1
・7.62mm機関銃×1
価 格 約6億円 約7.5億円

第二次世界大戦とベトナム戦争で活躍した2人の兵士の名前をとったストライカーは、緊急空輸される旅団戦闘団の中核として開発されたうえ、偵察型や迫撃砲搭載型、自走砲型なども作られました。

いわゆるファミリー化によって「ストライカー旅団戦闘団」を形成しつつ、地球上のあらゆる場所に対して72時間以内に展開できるようにしました。

派生型を含めて生産された約4,600両のうち、最も多く配備されたのが兵士9名を運べる兵員輸送型の「ストライカーICV」です。このタイプの武装は、機関銃またはグレネード・ランチャーのいずれかを選択しますが、どちらも夜間戦闘に対応したカメラを使って車内から遠隔操作できます。

一方、C-130輸送機などで運ぶべく、薄い装甲しか持っておらず、機関銃弾を防ぐレベルにとどまりました。追加装甲を使えば、ロケット弾までは耐えられるものの、本格的な戦闘にはあまり適していません。

しかし、ウクライナに供与された200両以上のうち、被弾・炎上しながらも、乗員は生き延びたケースが多く、その生存性の高さを証明しました。そして、ロシア領への逆侵攻作戦では、強みの機動性を活かして進撃を支えました。

結局のところ、装甲車としては最低限の攻撃力・防御力を持ち、むしろ機動空輸性を優先した緊急展開用というわけです。

たとえば、C-130輸送機であれば1両、C-17輸送機には4両も搭載できるため、近くの米軍基地や同盟国・友好国の飛行場まで一気に運べます。

すでに生産が終わったといえ、この先も改修しながら使いつづけるほか、たくさんある中古車両については、海外に輸出されるでしょう。

自走砲版「MGS」は微妙

兵員輸送型に対して、ストライカー・ファミリーで最も強力なのが自走砲型の「ストライカーMGS」になります。

これは自衛隊の16式機動戦闘車と同じ105mmライフル砲を持ち、その役割は歩兵の火力支援です。ゆえに、対戦車戦はあまり想定していませんが、105mm砲がもたらす火力は戦車にもそれなりの打撃は与えられます。

射撃するストライカーMGS(出典:アメリカ陸軍)

ストライカーMGSは自動装填装置を使って毎分10発の発射速度を実現したものの、車内には18発分の弾薬しか搭載できず、自動装填装置も不具合が多発するなど、高い維持費のわりには信頼性がイマイチでした。

加えて、地雷や即席爆弾(IED)に対する防御力が足りておらず、自走砲としての総合評価は残念ながら「いまひとつ」という感じです。

こうした事情を受けて、アメリカはストライカーMGSを2022年に全廃して、その分の予算をほかに回しました。よって、MGSは後継が開発されないまま、単なる廃止で終わった形です。

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