必然的にベストセラーとなった名機
現在、人員や物資を空輸するための輸送機が必須装備となっていますが、そんな輸送機で西側諸国を中心にベストセラーとなったのが「C-130」シリーズです。ギリシア神話に出てくる英雄・ヘラクレスを指す「ハーキュリーズ」の愛称で知られる本機は、アメリカ軍が70年前に開発した大型輸送機であり、日本では航空自衛隊と海上自衛隊が運用しています。
⚪︎基本性能:C-130H
全 長 | 29.8m |
全 幅 | 40.4m |
全 幅 | 11.7m |
乗 員 | 4〜6名 |
速 度 | 最大時速600km |
航続距離 | 3,800km (最大搭載時) |
積載能力 | 兵員94名 貨物19トン |
価 格 | 1機あたり約90億円 |
太い胴体が特徴的のC-130H輸送機はそれまでの輸送機を凌駕する積載能力を持ち、貨物であれば最大19トンを搭載できるほか、人員輸送時は座席を設置して94名を乗せることが可能です(フル装備の空挺部隊の場合は64名)。また、機体の最後部にスロープ付きのカーゴドアが設置されているため、コンテナや車両などの大型貨物をそのまま搭載することができるうえ、同じドアを使って物資や装備の空中投下も行えます。このカーゴドアに加えて、貨物室を含む胴体の床をあえて低く設計することで荷物の搬出入をなるべく楽にする工夫と配慮がされています。

他の特徴として、4発の大型プロペラ・エンジンが挙げられますが、これらが生む強力なパワーと頑丈な着陸装置を使った未舗装の滑走路における離着陸が可能です。さらに、本機に必要な離着陸距離はそれぞれ1,100m、520mと言われており、最前線に建設された簡易飛行場でも十分運用できます。ちなみに、ある実験ではカタパルトと着艦装置を使わずに空母への離着陸を成功させたそうです。もちろん、実際には空母で運用しませんが、C-130の短距離離着陸能力を証明する分かりやすい例といえるでしょう。
この短距離離着陸能力と不整地離着陸能力は、災害時やインフラが整っていない途上国への支援の際にも大いに活用され、世界中に展開するアメリカ軍が本機を長年愛用する主な理由です。砂漠地帯から果ては南極まで多くの人員・物資を運べちゃうC-130がベストセラーになったのはある意味「必然」と言えます。開発から既に70年も経つにも関わらず、初期設計が非常に優秀だったため、エンジンや電子機器以外はほとんど改良されていません。これは飛行機はもちろんのこと、「装備」としてもかなり珍しく、言い換えれば「手を加える必要がないほど最初から完成されていた」ことになります。
登場時から完成されていたとも言えるC-130は現在でも60カ国以上が運用しており、用途と任務の多様化に伴って多くの派生型が生まれました。例えば、特殊部隊用の機体や、洋上監視用、空中給油型、電子戦型などがありますが、なかでも異例なのが榴弾砲まで搭載したAC-130ガンシップです。
AC-130についてはこちら:空飛ぶ戦車!AC-130Hガンシップの火力
航空・海上自衛隊でも運用されているC-130
さて、航空自衛隊はC-130Hを14機、空中給油型のKC-130Hを2機運用していますが、国内の各基地を結ぶ定期便として輸送任務に従事してきたほか、陸上自衛隊の第1空挺団の降下訓練を始めとする各訓練の支援に使われてきました。また、イラクへの自衛隊派遣やアフガニスタンでの邦人救出任務でも本機が活用されましたが、C-130シリーズは多くの国が導入していることから現地で整備する際に互換性を期待できるというメリットもあります。
さらに、珍しい使われ方として手術を含む医療行為を行える「機動衛生ユニット」を搭載して患者を治療しながら空輸する任務が挙げられます。これは手術室をそのままコンテナに内包したもので、コンテナごと輸送機に載せて医療設備がより整った病院まで長距離移送します。
一方、海上自衛隊もC-130を運用していますが、こちらは「C-130R」という別の派生型になります。元々は空自と同様にC-130Hを導入して機雷投下用に使う予定でしたが、この構想は実現しませんでした。そこで、老朽化したYS-11M輸送機の後継として米海兵隊の給油機KC-130Rを6機購入し、空中給油機能を外した「C-130R」として南鳥島や硫黄島などの離島と本土を結ぶ連絡機として新たに運用することになりました。
C-130の後継機はC-130しかない?
優れた中型戦術輸送機であるC-130Hの後継については米軍が運用している「C-130J スーパー・ハーキュリーズ」が該当するといえますが、既述のように基本設計の完成度が高いことから以下のような改良は施されたものの、大きな進化はありません。
・出力が増した新型エンジンの搭載
・積載能力が19トンから20トンへ増大
・最高速度を660kmへ増大
・航続距離を5,000kmへ延伸
・コックピットにディスプレイを設置
・自動化による省人化(3名のみで運用可能)
・空中投下能力の強化
優秀な基本設計のおかげで改良しながらまだ十分使えるC-130は、同機を置き換えられるほどの性能とコスパを持つ輸送機が登場しない限りは今後もベストセラーの座を維持し続け、日本の自衛隊もC-130Hの後継としてC-130Jを導入する可能性があります。
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