スペックが大幅向上した航空自衛隊の輸送機
空輸も重要任務の一つである航空自衛隊は数種の輸送機を運用していますが、なかでも最新の国産機として期待されているのがC-2輸送機です。戦後初の国産輸送機として登場したC-1輸送機の後継として開発されたC-2ですが、開発時にさまざまな問題に直面したから一時期は「失敗作」として批判されました。では、実際の性能と実力はどうなのでしょうか?
⚪︎基本性能:C-2輸送機
全 長 | 43.9m |
全 幅 | 44.4m |
全 高 | 14.2m |
最大速度 | 時速917km |
航続距離 | 空荷時:9,800km 36トン時:4,500km |
最短離陸距離 | 500m |
乗 員 | 3名 |
輸送能力 | 最大110名 貨物:36トン |
価 格 | 1機あたり約240億円 |
C-2輸送機は2000年代に海上自衛隊の新型哨戒機P-1と合わせて開発が進められ、2016年から部隊配備が開始されました。更新対象のC-1輸送機と比べて機体は1.5倍ほど、最大積載量は約3.8倍となったうえ、C-1が空荷時で航続距離が2,600kmなのに対してC-2は36トンの貨物を満載しても4,500km以上も飛行可能となりました。
また、コックピットへのディスプレイ設置やコンピューターによる操縦支援機能を付与することで操縦性を高めた一方、貨物室に重量センサーや監視カメラ、指示用の電光掲示版を設置して搭載・荷卸し作業の効率化を図っています。

スペックだけを見るとC-1よりも格段に進化したC-2輸送機ですが、開発中に機体にヒビが入ったり、強度試験で貨物扉が落下するなどの不具合が起きたことで機体の強度不足が指摘され、配備の延期とコスト高騰につながりました。通常の1.2〜1.5倍の圧力を加える強度試験とはいえ、貨物扉が落下するのは重大インシデントであり、機体の強度を不安視する声が上がったのも仕方ありません。
ただ、留意したいのは本機は日本が自主開発した最大の航空機であるうえ、本来「開発」には試行錯誤が付きまとう点です。また、対策を施した上で臨んだ1.5倍の加圧試験には合格しており、量産機の部隊配備が既に始まっているなかで機体強度が問題化した様子は特段見られません。
コスト増に悩むC-2輸送機の将来はいかに?
C-1を置き換えることを想定して30〜40機ほどの調達が見込まれてたC-2輸送機ですが、コスト増によって結局22機まで削減されることになり、うち1機は電波情報収集機「RC-2」として改造されました。しかし、前述のようにC-1より3倍以上の積載力を持つC-2はそもそもC-1よりも少ない数で済み、ほかにもC-130H輸送機が運用されているので空自の輸送能力自体は維持できる見込みです。

開発難航で高コストになった結果、調達数が削減されて単価がさらに高騰するという悪循環に陥ったC-2を輸出によって価格を下げることが試みられ、実際にアラブ首長国連邦(UAE)が興味を示して初の大口案件になるかと思われました。UAE側は舗装されていない滑走路(不整地)での離着陸性能を要求しているため、C-2も未舗装滑走路でのテストを実施して能力をアピールしましたが、競合するエアバスの輸送機の方が安く、運用実績も豊富であることから非常に厳しい競争となっています。
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