戦後初の国産戦闘機、F-1の評価

航空機
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練習機を発展させた事実上の戦闘爆撃機

第二次世界大戦での敗戦によって一時期は航空機開発が禁止されていた日本ですが、サンフランシスコ講和条約によって独立を果たすと国内の航空産業も徐々に復活を遂げ、1960年代には日本初の超音速機となる「T-2練習機」が開発されます。そして、このT-2練習機をさらに発展させたのが戦後初の国産戦闘機「F-1」であり、制空戦から対地・対艦攻撃に至るまでの任務に対応した事実上の戦闘爆撃機として累計77機が生産されました。

⚪︎基本性能:F-1戦闘機

全 長17.8m
全 幅7.88m
全 高4.45m
乗 員1名
速 度マッハ1.6(時速km)
航続距離 約2,600 km(増槽付き) 
高 度15,240 m
兵 装20mmバルカン砲×1(固定)
対空ミサイル×4
対艦ミサイル×2
各種爆弾、ロケット弾
価 格1機あたり約27億円(当時)

1977年から部隊配備が始まったF-1戦闘機は同時期に航空自衛隊で運用されていたF-4戦闘機と比べて小さく、細長い外見をしており、対地攻撃も想定していることから機体には迷彩塗装が施されました。この外見は英仏が当時運用していたジャギュア攻撃機と非常に似ていますが、これは単なる偶然で中身や設計は全く異なっています。

もともと練習機をベースにしていることもあって、F-1は良好な飛行性能と整備性を誇りますが、その信頼性は機体トラブルが原因の墜落事故を起こしたことがないほどです。また、既に述べたように、F-1戦闘機は開発時から防空以外の各種任務に投入する予定でしたが、当時は国産の80式空対艦ミサイルを搭載できる唯一の機体であったため、対艦攻撃任務には特に欠かせない存在でした。対地攻撃についても、非常に精度の高い爆撃コンピューターを装備していたことで有名で、無誘導爆弾でも高い命中率を叩き出せたそうです。

機動性不足と短い航続距離が欠点?

一方、超音速性能を追求して主翼を小さくした結果、主翼内には燃料タンクを格納できないという制約が生まれ、その後は増槽を3つ付けることで対応したものの、航続距離は最大で約2,600kmとF-4戦闘機よりも短くなってしまいました。この「足の短さ」がF-1戦闘機の欠点のひとつなのですが、皮肉なことに航続距離が短いがゆえに周辺国の脅威にならないと理由でF-4導入時には問題視された爆撃照準器の搭載を許されます(空中給油機能はなし)。

もう一つの欠点とされているのがエンジンの推力不足で、これは空戦において機動力で劣るという課題を生み出しました。ただ、F-1戦闘機が搭載したエンジンは英仏が前述のジャギュア攻撃機用に開発したもので、そもそも高い空中機動力が求められる制空戦闘向けのものではなかったといえます。運用前提が異なるエンジンを採用したことが原因で空戦での機動力不足に陥ったわけですが、この苦い教訓はF-15J戦闘機を導入した際に生かされることになります。

さて、機動性に不安のあるF-1戦闘機は自動操縦装置の追設や誘導爆弾への対応などの改良を施されつつ、スクランブル任務を中心に2006年まで運用され続けました。しかし、その間に航空戦の様相は大きく変わり、レーダーの性能不足や短い航続距離、さらにチャフやフレアのような自己防衛機能を持たない点が時代遅れとなり、後継のF-2戦闘機に後を託して約30年の現役時代を終えました。それでも、現在は小さな分屯基地を含む空自の各基地に展示されているので、目にする機会は意外にも多いです。

⚪︎関連記事:「平成の零戦」F-2戦闘機

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