30FFM「もがみ」型護衛艦とは?

海上自衛隊

新しいコンセプトの多機能護衛艦「もがみ」型

2020年11月と2021年3月、従来と全く異なるコンセプトに基づいて建造された2隻の新型護衛艦がそれぞれ進水しました。「もがみ」型護衛艦と命名された新型護衛艦は、多目的と省人化をコンセプトにしており、ステルス性能をより意識した外観も従来の護衛艦と全く異なります。これは、米海軍の沿岸戦闘艦(LCS)を参考にしたとも言われており、海上自衛隊にとっては新たな試みとなります。

では、なぜ海上自衛隊はこのような新型護衛艦を導入したのか?

答えは、限られた人的資源で最大の稼働率を発揮するためです。

周知のように、中国海軍はこの20年で質・量ともに著しく増大しました。2001年〜2019年までの間だけで中国海軍は空母2隻、駆逐艦36隻、フリゲート36隻、コルベット60隻を進水させています。対する日本は同期間、ヘリ空母4隻、護衛艦16隻(うちイージス艦3隻)です。この恐ろしいペースの大軍拡に対し、海上自衛隊としては稼働隻数を少しでも多くしたいのが現状です。

一応、護衛艦の定数を47隻から54隻に増やしたものの、人員の大幅増加は見込めません。そこで、「30FFM」と呼ばれる「もがみ」型は従来の護衛艦機能に加えて、掃海艦艇が担ってきた機雷戦機能も付与することで多機能な護衛艦を目指します。そのため、艦種番号も、従来の護衛艦で使用された「D」ではなく、フリゲートを指す「FF」に機雷戦(Mine)や多目的(Multi)の「M」を足した「FFM」が初めて使われています。

○基本性能もがみ型護衛艦

排水量 3,900t(満載時5,500t)
全 長133m
全 幅16.3m
速 力30ノット(時速55.6km)
乗 員90名
兵 装62口径5インチ砲×1、垂直ミサイル発射機(VLS)16セル、
防空ミサイル11連装発射機×1、17式対艦ミサイル発射筒×8、
3連装短魚雷発射管×2、遠隔操縦型12.7mm機関銃×2
搭載機SH-60K哨戒ヘリ×1
同型艦22隻(毎年2隻建造予定)
建造費1隻あたり約460〜500億円

まず、目を引くのが乗員の少なさです。通常の汎用護衛艦が約150〜200名の乗員を要することを考えると雲泥の差ですね。また、前級の「あぶくま」型の乗員が120名であることを考えると、機雷戦および艦載機搭載能力が加えられたにもかかわらず、乗員数を2/3に抑えられたのは省力化の成果と言えます。

さらに特筆すべきは、海上自衛隊として初めて「クルー制」を導入することです。従来の護衛艦は3〜4隻のローテーション体制を組み、例えば、1隻が母港で休養中、1隻がドックでメンテナンス中でも、1隻は常に前線で対応できるようにしています。しかし、「もがみ」型では、3隻に4組のクルーを配置し、3組が乗艦している間に残りの1組は休養できる体制を目指します。これによって、メンテナンス時以外は艦を運用できるようにして、稼働率を高める狙いがあります。

クルー制のイメージ(筆者作成)

クルー制は、1組が降りた後に交代で別の組が乗り込むため、大前提として艦内配置などが各艦で同じである必要があります。例えば、クルーAが「もがみ」から降りて休養の後、今度は「くまの」に乗艦したとします。ここで、「もがみ」と「くまの」でスイッチの場所が違ったり、装備が異なっていれば、思わぬ支障をきたします。そのため、「もがみ」型は22隻もの同型艦が建造予定ですが、どこまで各艦の均一性を保てるかが重要となります。

22隻という隻数を量産するわけですが、1年間で2隻ずつ建造することでコストを抑え、建造費は1隻あたり500億円程度と見積もられています。これは汎用護衛艦の2/3、イージス艦の1/3ほどであり、コスト面でも優秀な護衛艦となりそうです。ちなみに、現在は3・4番艦が建造中であり、5・6番艦の予算も承認されているため、建造は滞りなく進む予定です。

出典:防衛装備庁

さて、装備についてですが、初期案よりは大幅に強化された充実ぶりとなっています。当初は、コンパクト化を重視した3,000tの船体に最低限の装備を搭載する予定でした。その後、船体が3,900tと大型化するのに伴い、VLSの搭載を含めた装備の拡充が図られるようになりました。ただし、既に進水した「もがみ」及び「くまの」には、VLSは搭載されておらず、後日装備される予定です。これは、VLSに搭載する対空ミサイルが現在開発中であるのが主な理由です。ただし、この新型対空ミサイルの射程は中距離に分離され、「もがみ」型の防空能力は個艦防空に限られると見られます。

また、従来の護衛艦と大きく違うのは、対機雷戦のためのソナーと水上・水中無人機(USVとUUV)が搭載されることです。機雷の敷設も可能であり、マルチな任務に対応できるように設計されているのが装備面からも見て取れます。様々な任務に対応できる柔軟性を保持しつつ、当初案よりは重武装な艦に仕上がった印象です。

「もがみ」型は「失敗作」?

目新しいデザインも相まって、内外からの注目も高かった「もがみ」型の進水ですが、中国では早速「失敗作」という烙印が押されています。これは、仮想敵国たる日本の新型であるという前提に基づくプロパガンダもあります。他にも、「もがみ」型が米海軍の沿岸戦闘艦(LCS)を参考に建造されたものであるというのも理由の一つです。

米海軍の沿岸戦闘艦は、小型・低価格・多機能をコンセプトにしたフリゲートであり、対テロ・海賊対策などの新たな脅威にも十分対応できるものとして誕生しました。しかし、実際には建造コストが高騰し、中国の台頭によって再び正規軍同士の戦闘を想定しなければならなくなったことで、当初予定よりも少ない隻数で建造が打ち切りとなりました。

米海軍のフリーダム級沿岸戦闘艦(出典:米海軍)

沿岸戦闘艦は米海軍の強大な空母打撃群によって航空優勢および海上優勢が確保されている状態で活動することが前提条件です。そのため、中国のA2AD(接近阻止・領域拒否)戦略によって、これら優勢の確保が不透明な中では、比較的軽武装の沿岸戦闘艦では心許ないということになりました。高コストの割には、台頭する中国軍に対応する能力が不足しているため、いわゆる中途半端な存在になったのでしょう。こうした経緯もあり、米海軍は正規軍との交戦を踏まえた主力艦船の増勢と、沿岸戦闘艦の代わりとなるより小型の戦闘艦(SSC)を追求するようになりました。

「もがみ」型も、想定よりもコストが高騰し、「割に合わない」となった場合は、「失敗作」となってしまう可能性があります。ただし、現時点ではコンパクトかつ低価格(汎用護衛艦と比較した場合)、さらに省人化に成功していることを踏まえると期待の方が大きいと言えます。また、さらなるコスト軽減のために他国への輸出という噂もありますが、まだ就役もしておらず、実際の運用面における能力は未知数のため、輸出の可能性は現時点ではないです。十分な運用実績と優れたコストパフォーマンスが確認できたら、いずれフィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国への輸出もあり得なくはないですが、今までの輸出実績と機密保持の面から考えても可能性はかなり低いでしょう。

「もがみ」型に求められる役割

新しいコンセプトの下で誕生した「もがみ」型ですが、建造予定数22隻というのは、将来的に護衛艦の4割を占めることを意味します。まさに数の上では海上自衛隊のワークホース(主力)というポジションを担うことになる「もがみ」型ですが、その狙いをもう一度考察しましょう。

既述のように、「もがみ」型のコンセプトは多目的と省人化です。人手不足は何も海上自衛隊に限った問題ではありませんが、陸海空の中では特に海自が深刻と言われています。プライベート空間が著しく限られた艦内やスマホの電波も入らない外洋で何ヶ月も生活するという条件に現代若者はなかなか集まらないでしょう。また、少子化でそもそも採用対象数が減少していることも、人手不足に拍車をかけています。まさに、中国海軍が「人はいるが、乗せる船が足りない」のに対し、海上自衛隊は「船はあるが、乗せる人が足りない」という状況です。

では、どうするか?「海軍」という特殊な職業である以上、制約の多い艦内生活を現代若者が殺到するような環境にするのは無理でしょう。ならば、現状の人的資源でなんとかやりくりするしかありませんよね。しかし、護衛艦の定数は47隻から54隻に増え、海賊対策や弾道ミサイル防衛などの任務の多様化も進んでいます。

就役した1番艦「もがみ」(出典:海上自衛隊)

そこで、少ない人員で数を維持できる「もがみ」型が登場したのです。

平時において、「もがみ」型は日本周辺における情報収集・警戒監視活動、海外派遣任務に従事します。22隻をクルー制で運用するので、常時10隻近くはパトロールなどに充てられるのではないでしょうか。さらに、海賊対策や船団護衛などの海外任務にも派遣することで、その分だけ浮いた汎用護衛艦を日本周辺の任務に割くことができます。また、機雷戦能力を保有することから、将来的には掃海部隊を縮小して、余剰人員を護衛艦部隊に充てる狙いもあると見えます。

そして、有事の際には、警戒監視と初動対応を担います。例えば、武装漁民による離島占拠などのグレーゾーン事態では、汎用護衛艦に代わって出動することが想定されます。つまり、海上保安庁の対処能力を越えたものの、護衛隊群(海自の主力部隊)が出動するほどの事態ではない場合、「もがみ」型が適任として対応に当たります。

では、本格的な侵攻の場合はどう対応するのでしょうか?この場合は、主に対潜・機雷戦を担いつつ、必要に応じて敵水上部隊と交戦する護衛隊群や離島奪還のための輸送部隊を支援すると思われます。水陸両用作戦においては、対潜哨戒と機雷除去(敷設も)に加えて、上陸部隊の護衛を一部担当することによって、捻出した貴重な戦力(汎用護衛艦など)を敵主力撃破に充てられます。

まとめると、「もがみ」型が就役する意義は、パトロールやグレーゾーン事態を想定した任務に従事することで、今までこれらの任務に拘束されていた護衛艦を解放できることです。平時においては、十分なプレゼンスを示し、有事の際には、マルチな任務に柔軟に対応しつつ、主力部隊を支援します。このように、「もがみ」型護衛艦は、使い勝手が良い高稼働のフリゲートととして海上自衛隊の中では重宝されることが予見できます。

1 ・・・次のページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました