近距離防空を担う発展型シースパロー
高速で迫り来る対艦ミサイルから自艦を守る艦対空ミサイルといえばシースパローが有名ですが、現在はその最新型である発展型シースパロー(ESSM)が主流になりつつあります。
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⚪︎基本性能:RIM-162 ESSM(発展型シースパロー)
全 長 | 3.8m |
直 径 | 0.25m |
重 量 | 300kg |
弾 頭 | 指向性爆風・破片炸薬 39kg |
射 程 | 最大50km |
速 度 | 最速マッハ4 |
価 格 | 約2億円 |
ESSMは英語で発展型シースパローを意味する「Evolved Sea Sparrow Missile」の略称であり、米海軍を含めた世界各国で運用されているシースパロー対空ミサイルを改良したものです。より出力のあるロケットモーターを搭載することで大型化しており、前翼も廃止されているなど外見はシースパローとは大きく異なります。
肝心の性能についてですが、まず目につくのが射程の延伸です。シースパローの26kmと比べると最大射程は約倍の50kmまで伸びており、短距離対空ミサイルとしては申し分ありません。しかし、急旋回のような高い運動性能を発揮できるのは20km圏内までとされているため、実際はこうした限界を想定した運用が行われます。
数字上は倍増した射程ですが、むしろ運動性能にこそ着目すべきでしょう。通常、発射直後のミサイルは低速であり、高機動性を発揮しづらいですが、ESSMはこの難点を克服しており、発射直後から急旋回などの高機動運動が可能です。これは迫り来る目標の変化に合わせて微調整ができることを意味しており、結果的に命中精度の向上にもつながりました。

さて、誘導方式は基本的にシースパローと同様のセミアクティブ方式ですが、飛行過程の途中では自律飛行が可能であり、最大3つの目標に同時対処できるようになりました。これは自艦のみならず、他の味方艦も守る「僚艦防空」に対応していることを意味しており、あきづき型護衛艦のような防空担当艦には必須の装備と言えます。
シースパローよりも高い運動性能と同時対処能力を持ち、後継として配備数を増やしつつあるESSMですが、いま運用されているブロック1の改良型であるブロック2が既に登場しています。ブロック2ではレーダーが従来のセミアクティブ誘導に加えて、ミサイル自身が目標を捉えて進むアクティブ誘導(撃ちっ放し能力)にも対応できるように改良されているうえ、通信機能を強化することで飛行途中のより細かい修正も行えるようです。
開発元のアメリカはもちろんのこと、日本の海上自衛隊もシースパローの後継としてESSMを導入しており、ひゅうが型ヘリ空母での採用を皮切りにあきづき型やあさひ型の護衛艦にも配備されています。ESSMは近距離防空の要として今後も護衛艦の標準装備になるでしょう。
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