世界初!NMESIS対艦兵器とは

アメリカ軍

離島防衛における米海兵隊の「切り札」

太平洋戦争で日本軍と激戦を繰り広げ、上陸作戦のプロという印象が強いアメリカ海兵隊ですが、近年はイラクやアフガニスタンのような「海」とは程遠い戦場で戦ってきました。2001年の9.11同時多発テロを発端に始まった対テロ戦争も2021年8月のアフガニスタンからの撤退で一旦終止符が打たれ、一定の役割を終えた海兵隊は実は再び太平洋を見据えた態勢に移行しつつあります。

アメリカがこの対テロ戦争に国力を投入してきた間に中国は急成長と軍拡を実現しており、台湾統一を意識した海洋進出が目立つようになりました。このように台湾を巡って太平洋で中国軍と衝突する可能性が高まる中、米海兵隊もアフガニスタンで用いてきた戦車や榴弾砲のような装備ではなく、離島防衛を想定した新たな兵器を追求しています。

対中国に舵を切った米海兵隊は太平洋の島々に戦力を分散配置させ、それぞれに対空・対艦攻撃能力を持たせることで中国軍の接近を阻止する戦略を立てていますが、これは中国のA2AD戦略を逆手にとったものと言えるでしょう。この「逆A2AD」で必要となるのが各島嶼に迅速に展開して攻撃を行って反撃される前に移動できる兵器ですが、その一翼を担うのが新しい地対艦ミサイルシステムの「NMESIS(ネメシス)」です。

海岸に揚陸されたNMESIS(出典:アメリカ海兵隊)

NMESISは「Navy-Marine Expeditionary Ship Interdiction System(海軍・海兵隊遠征船舶阻止システム)」の略であり、地対艦ミサイルを無人車両に搭載して発射する世界初の特殊な兵器です。長い名称を結構無理やり「ネメシス」と略したわけですが、こうしたカッコイイ略称を作るのが好きかつ得意なのがアメリカらしいですね。

NMESISが発射する地対艦ミサイルは「Naval Strike Missile(海軍打撃ミサイル)」ですが、これはノルウェーが開発したものであり、アメリカ以外でもポーランドやドイツなどが採用しています。あの有名なハープーン・ミサイルと同様に亜音速のミサイルで、射程は200kmほど、価格は1発あたり約3億円だそうです。突出して高性能というわけではありませんが、ステルス性を意識した設計で堅実な兵器として信頼性は良好です。

さて、NMESISの特徴は「無人車両」であることですが、無人化によって運転席のスペースを省略することができ、結果的に今までの地対艦ミサイルと比べて大幅な小型化・軽量化を実現しました。通常、地対艦ミサイルを運用する車両と言えば、陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾のように6輪の大型トラックにミサイル6発を搭載しているイメージですが、NMESISは4輪車両に2発のNSMミサイルを備えています。この軽量かつ小型というポイントこそ海兵隊が太平洋で戦う際に重視しているコンセプトなのです。

米海兵隊は鈍重な戦車を廃止する代わりに無人機やロケット・ミサイル戦力を大幅に増強している最中ですが、これらを用いて離島防衛をする場合にカギとなるのが「機動力」、もっと細かく言えば「空輸のしやすさ」でしょう。従来よりも軽量かつ小型のNMESISは海上輸送に加えて輸送機による迅速な展開を行いやすく、C-130輸送機ならば2両を搭載できる一方、CH-53のような大型輸送ヘリを用いての吊り下げ輸送すら可能なのです。ウクライナで活躍しているHIMARS高機動ロケット砲にも該当することですが、近年の新型装備は軽量で小型のものが主流になりつつあり、NMESISもその良い例と言えます。

NSMミサイルを発射するNMESIS(出典:アメリカ海兵隊)

有事の際、NMESISはHIMARS等とともに各島嶼に展開するわけですがこれは中国軍の攻撃圏内での活動を前提としているため、各島の戦力及び敵の攻撃圏外に展開する主力艦隊(空母打撃群など)との連携、そしてそれぞれの守備隊の抗堪性が戦いの成否を握ります。つまり、各島に分散した戦力が各個撃破されないように島嶼間でいわばネットワークを構築して外部とも連携しながら中国軍を叩くのです。このように補給と通信を含めた強靭な連絡路の確保が前提条件ですが、失敗すると太平洋戦争で日本軍が経験したように各島の守備隊が分断・孤立してしまい、ただ壊滅を待つ遊兵と化してしまいます。

また、展開した後も敵に撃破されないように撃ってはすぐに移動する「シュートアンドスクート戦術」を使って生存性を高めなければなりません。大規模な砲兵戦を展開しているウクライナ軍のHIMARSもこの戦術を活用しており、ロシア軍の補給線を痛撃して翻弄していることから発砲位置がすぐバレる現代戦において機動力がいかに大事か思い知られます。まだまだ情報が少ないNMESISですが、海兵隊のビジョンに合致した新装備として配備が始まっており、今後もHIMARSとともに中国軍の行動を制約する役割が期待されます。

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