海兵沿岸連隊を機動展開させて敵の射程圏内で戦う
台湾侵攻を見据える中国はアメリカの介入を阻止するためにA2AD戦略を進めており、対艦弾道ミサイルなどの拡充と海軍艦艇の増勢に注力しています。
これらは西太平洋におけるアメリカの優勢を揺るがし、戦力投射の要となる空母打撃群が撃破される危険性を高めているため、米軍は従来戦略の見直しを迫られました。
そこで、展開部隊を以下の2つのに大きく分けるとともに、両者を連携させて戦うコンセプトを打ち出しました。
（1）内側部隊：高機動な対艦・対空兵器を運用しながら敵勢力圏内で活動
（2）外側部隊：敵の射程圏外に展開にする空母打撃群などの主力部隊
そして、内側を担当するのが米海兵隊を中心とした強力な小規模部隊で、最前線の島嶼部にすばやく展開して前方拠点を確保しつつ、後続部隊の来援に備えて前方哨戒などの支援活動を行うのが任務です。
このように相手の射程圏内に前方展開して「内側」から妨害・撹乱する方針を「遠征前進基地作戦（EABO）」と呼び、実現に向けて米海兵隊は3個連隊を海兵沿岸連隊に再編して、日本の南西諸島を含む第1列島線に機動展開する態勢を整えています。
長らくイラクとアフガニスタンなどの内陸国で戦ってきた米海兵隊は「第二の陸軍」と化していましたが、EABOでは沿岸部に適した編成や装備にシフトすることが必須で、海兵沿岸連隊への改編もこうした事情に対応したもの。
そのため、輸送機や新型の軽揚陸艦で展開する海兵沿岸連隊は機動力に富むHIMARS高機動ロケット砲や世界初の無人対艦兵器「NMESIS」で長距離打撃力を確保して、分散配置による生存性の向上と敵勢力圏内での持久戦を狙います。
そして、捕捉されにくい小部隊でミサイル攻撃や電波妨害などの「嫌がらせ」をしたり、逆に敵の位置を発見して味方に通報する役割を通じて後方に展開する主力部隊を支援するわけです。
また、EABOは自衛隊との連携も視野に入れており、特に米海兵隊との訓練を通じて共同作戦能力を高めている水陸機動団はその筆頭候補になります。ちなみに、自衛隊ではEABOを「機動展開前進基地作戦」と訳したり、「エアボ」と呼称するケースが見られます。
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