最強の迎撃率?イスラエルが誇るアイアンドームの仕組み

発射機から放たれるミサイル 外国関連
出典:イスラエル軍
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成功率90%の守護神

ハマスやヒズボラとの衝突が絶えないなか、イスラエルは定期的に飛来するロケット弾や迫撃砲弾にいつも悩まされてきました。

奇襲攻撃では数百発ものロケット弾が撃ち込まれるケースもあり、イスラエル側としてはこれらを撃墜して都市部を守る必要がありました。

そこで、2011年からは「アイアンドーム」と呼ばれる防空システムを配備して、砲弾やロケット弾、自爆ドローンなどの空中脅威に対処中です。これは90%近い迎撃成功率を誇るとされていて、現時点でも世界最高峰の防空システムとみなされています。

  • 基本性能:アイアンドーム(タミル迎撃ミサイル)
重 量 90kg
全 長 3m
直 径 0.16m
速 度 マッハ2.2(時速2,700km)
射 程 4〜70km
価 格 1発あたり約1,500万円
(システム:約70億円)

アメリカの資金援助も受けて開発されたアイアンドームは、ロケット弾・砲弾を迎え撃つ全天候型の防空システムであって、いわゆる「C-RAM」の一種にあたります。

※C-RAMとは「Counter-Rocket, Artillery, Morter(対ロケット、砲弾、迫撃砲)」の略

したがって、本来は近接防空を目的としたものですが、実際の射程距離は70km近くにもなり、ひとつで小豆島ほどの広さを防護可能です。

ミサイル発射機アイアンドームのミサイル発射機(出典:アメリカ軍)

システム自体は対空レーダー、指揮ユニット、そして3つのミサイル発射機で構成されます。

迎撃手順については、まずレーダーが目標を捉えて、その飛翔速度や弾道を指揮ユニットに伝達します。この情報に基づき、指揮ユニットは人口集中地帯などが危ういかどうかを判断したあと、ミサイル発射機に迎撃指令を下します。

このとき、確実性を期するために2発のミサイルが向けられますが、このタミル迎撃ミサイルは目標に直接ぶつかるのではなく、近接信管による爆散で破壊する仕組みです。

ランチャーから発射されるミサイル発射されるタミル迎撃ミサイル(出典:イスラエル軍)

ひとつの発射機には20発のミサイルが装填されているものの、1回の迎撃に約1,500万円もかかるので、着弾予想地点がそこまで重要ではないエリアと判断されれば、あえて撃墜しません。

ただ、大量のロケット弾が都市部に向けられた場合、アイアンドームも連続発射で対応せざるをえません。こうした状況のなか、配備されてから3,000発を超えるロケット弾・砲弾を破壊しており、常に85%〜90%の迎撃成功率を維持してきました。

おかげでイスラエル側の被害は大きく減り、自国民の生命を何よりも重視するイスラエルにとっては必須の「盾」になりました。

やはりコスパが弱点

多くの実戦経験によってアルゴリズムも更新してきたアイアンドームは、現存する防空システムのなかでは間違いなくトップクラスの性能を誇ります。

しかも、航空機やミサイルにも対応しており、試しに2基を購入したアメリカは巡航ミサイルの迎撃テストに成功しました。

ミサイルがロケット弾を撃ち落とす場面アイアンドームが迎撃する様子(出典:イスラエル軍)

ところが、アイアンドームにも弱点は存在します。

それは一度にあまりの数のロケット弾を撃たれたら、さすがにキャパオーバーになる点です。

一定の同時対処能力、脅威度に基づく選別機能があるとはいえ、許容範囲以上の飽和攻撃を受ければ、迎撃率の低下は避けられません。

よって、ハマスは休戦期間中にロケット弾を補充しておき、再開となれば一気に「数」で押し切るわけです。

これに対抗するには、アイアンドームの配備数を増やすのが手っ取り早いですが、本来は15個中隊分を計画していたところ、現状では10個にとどまっています。

また、迎撃ミサイルの数を増やしても、費用対効果では1発あたり10〜20万円のロケット弾にはかないません。

アイアンドームに限らず、「ハイテクvsローテク」においては、前者がどうしても費用面で不利な戦いを強いられます。

こうした事態を受けて、イスラエル軍も脅威度の選別能力を高めたり、もっと安いレーザー兵器の開発を進めています。特にレーザー兵器の「アイアンビーム」が登場すれば、迎撃コストは最安でわずか500円まで下がる見込みです。

それでも、アイアンドームはパトリオット・シリーズよりは格段に安く、レーザー兵器と中・長距離防空ミサイルの中間兵器として生き残りつつづけるでしょう。

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