あらゆる重装備を運べる超大型輸送機
軍事作戦では戦力を機動展開させるために空輸が用いられますが、現役の軍用輸送機のなかでひときわ目立つのがアメリカ空軍の超大型輸送機「C-5 ギャラクシー」です。
M1エイブラムス戦車を2両も運べるほどの搭載能力を持つこの輸送機は、配備開始からすでに半世紀以上が経つにもかかわらず、最新型の「C-5M スーパーギャラクシー」に近代化改修されて今も現役で空を飛んでいます。
⚪︎基本性能:C-5M スーパーギャラクシー
全 長 | 75.3m |
全 幅 | 67.9m |
全 高 | 19.8m |
乗 員 | 7名 |
速 度 | 時速855km |
航続距離 | 最大搭載時:約4,000km |
高 度 | 約10,800m |
輸送能力 | 貨物:127t 人員:600名 |
兵 装 | ミサイル警報装置 チャフ・フレア発射装置 |
価 格 | 1機あたり約200億円 |
C-17輸送機の1.5倍となる120トン以上の積載量を誇るC-5輸送機は、機体を貫く貨物室の前後双方に貨物扉が設けられているため、積載と荷降ろしを同時にできる利点があります。
さらに、この広大な貨物室は米軍のあらゆる重装備に対応していますが、具体例としては以下のようなものが挙げられます。
装 備 | 数 量 |
M1エイブラムス戦車 | 2両 |
M2ブラッドレー歩兵戦闘車 | 5両 |
ストライカー装甲車 | 7両 |
ハンヴィー高機動車 | 14両 |
MLRS自走多連装ロケット砲 | 4両 |
AH-64攻撃ヘリコプター | 6機 |
CH-47輸送ヘリコプター | 2機 |
ほかにも、西側標準として用いられる貨物パレットならば36個、兵士も座席を追設すれば最大600名ほどを一度に輸送できるうえ、F-16戦闘機やF/A-18戦闘機も分解して折りたためば載せられます。
こうした柔軟かつ余裕ある搭載能力のおかげで、過去には国際宇宙ステーション用のモジュールを運んだり、空中から大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するのにさえ使われてきました。

スーパーギャラクシーへの進化
このように輸送力に長けたC-5はベトナム戦争や湾岸戦争、アフガニスタン戦争などの実戦投入に加えて、災害時の人道支援でも重用されてきました。
そして、老朽化した機体を退役させたのち、まだ使える52機が「C-5M スーパーギャラクシー」へと近代化改修されました。
このC-5Mは出力を20%増強した新型エンジンに換装することで離陸時と上昇時における性能が大幅改善されており、整備性も良くなったので少ない機数での高稼働率が期待されています。
また、コックピットのデジタル化や最新の航法システムによって巨体でありながら操縦性は以前より向上しました。
したがって、C-5MはC-17とともにこの先も米空軍の戦略輸送を担うわけですが、巨大なC-5は運用可能な拠点が限られるので、保有機数と短距離離着陸性能を考えればどうしてもC-17の方が主力となります。
それでも、一気に大量の貨物を運べる魅力は変わらず、わざわざ後継機を開発する理由も少ないことから、今後も2045年まで使い続ける見通しです。
古い機体でありながら、優れた基本設計のおかげでアップグレードしやすく、コスト的にも現役続投が選ばれた形ですが、このあたりは「100年選手」のB-52爆撃機に通ずるところがあります。
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