「攻撃的」電子戦能力に向けて前進
現代戦は陸海空という従来の領域に加えて、宇宙・サイバー・電磁波のいわゆる「ウサデン」でも繰り広げられるため、自衛隊もこうした新領域への対応能力を急ピッチで構築しています。
例えば、航空自衛隊は宇宙作戦群を発足させて、サイバー戦でも要員を一気に増やす予定です。
そんななか、電子戦分野では敵の射程圏外から電子戦を行う航空機「スタンドオフ電子戦機」の導入が決まり、いよいよ攻撃力をともなう本格的な電子戦能力を目指します。
導入される電子戦機は厳密には「電子攻撃機」の部類に入り、敵のレーダーや通信システム、電子機器などを妨害、攻撃して無力化させるのが狙いです。
日本はP-3C哨戒機を改造した電子偵察機や訓練用に擬似的な電子戦環境を作り出す機体は運用してきた一方、本格的な電子攻撃能力はない状態でした。
安全保障環境の悪化によって、ついに攻撃的な電子戦能力も持つようになったわけですが、今回の電子戦機はC-2輸送機をベースに川崎重工業が開発して、最終的に4機が配備されます。
C-2輸送機は、すでに電波情報を収集する派生型の「RC-2」が開発されているため、新しい電子戦機のベースにするには適任かもしれません。
電波妨害技術の確立で優位性確保へ
今回の開発によって新しい電波妨害技術を確立させて、最先端技術が勝敗を分ける電子戦での優位性を目指しますが、その中には低コストで小型ドローンを狙い撃ちできる「高出力マイクロ波の照射装置」も含まれています。
ほかにも、戦闘機搭載型の電子妨害装置も開発するつもりですが、これはアメリカのグラウラー電子攻撃機(F-18戦闘機がベース)のような戦闘機型の電子攻撃機を導入するための布石でしょう。
また、C-2輸送機をベースに開発するスタンドオフ電子戦機とは別に、海上自衛隊のP-1哨戒機を電子戦機に改造する案も浮上しています。
こちらは新規開発ではなく、既存の機体に対して電波妨害能力を与えるもので、電子攻撃機の種類と機数を増やすことはリスク分散の観点でも好ましいといえます。
P-1哨戒機は配備数が削減されたうえ、一部は無人機「シーガーディアン」によって代替予定なので、余剰機を電子戦向けに運用しやすい事情がありそうです。
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