電波収集・妨害の専門部隊
現代戦は従来の陸海空のほかにも、宇宙、サイバー、電磁波のいわゆる「ウサデン」領域でも繰り広げられるため、これら新領域への対応が不可欠になりました。
日本でこれら新領域を主に担うのが、宇宙作戦群(航空自衛隊)、サイバー防衛隊、そして今回紹介する陸上自衛隊の電子作戦隊です。
電子作戦隊は各地の電子戦部隊を束ねる組織として発足したもので、その任務は「電磁波の収集・妨害」になります。
普段は周辺国の通信やレーダー波を集めて、その周波数などを特定分析しつつ、有事ではこれを逆用して妨害・かく乱するわけです。
電子作戦隊は東京都・朝霞駐屯地に本部を置き、留萌(北海道)、佐世保、熊本、奄美大島、那覇にそれぞれ駐屯する電子戦部隊を統括運用しています。
今後は東千歳(北海道)、新潟、鳥取、川内(鹿児島)への部隊配備も進められるなか、国境付近の強化を図るべく、与那国島(沖縄)と対馬(長崎)にも配備予定です。
装備はネットワーク電子戦システム
さて、電子戦部隊はどのような装備を運用するのでしょうか?
電子作戦隊は「ネットワーク電子戦システム(NEWS)」という複数の電子戦装置で構成されるシステムを使い、電磁波の検知や特定、相手への妨害を行います。
ひとつのセットで約90億円とされるこのシステムですが、車両に載せて移動できるため、優れた機動展開性と柔軟な運用能力を確保しました。
電子戦向けのシステム自体は以前からあったものの、新しい「NEWS」は従来よりも小型・高機動のみならず、自分たちが使う電波への干渉を減らしたり、移動中の電磁波収集も可能にしました。
そして、集めた情報を火力戦闘指揮統制システムとすばやく共有すれば、味方火砲の援護にも役立ちます。
まだ発足して日が浅いとはいえ、現代戦における電子戦能力は重要性を増すばかりで、各国は競うようにその能力強化に取り組んでいます。
ロシア=ウクライナ戦争で電子戦部隊が戦果をあげているのを受けて、これらの評価・教訓をふまえながら、自衛隊も電子作戦隊を運用していくはずです。
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