弾道ミサイル防衛の要となる兵器
日本は北朝鮮による核開発の脅威を受けて弾道ミサイル防衛(BMD)に注力してきましたが、そもそもBMDに対処できる国はかなり限られており、この分野では世界有数の能力を持ちます。
日本のBMD体制はイージス艦から発射されるSM-3ミサイルと地上配備のペトリオット・ミサイル(PAC-3)による二段構えですが、後者は対応できる範囲と時間が非常に限られていることから迎撃の成否はほとんど前者にかかっているといえます。
では、その肝心のSM-3ミサイルとは一体どのようなミサイルなのか?
⚪︎基本性能:SM-3迎撃ミサイル ブロック2A
全 長 | 6.55m |
直 径 | 0.53m |
重 量 | 1.5t |
速 度 | 最高マッハ18 (秒速4.5km) |
高 度 | 最高500km |
価 格 | 1発あたり約40億円 |
SM-3は弾道ミサイルを大気圏外で撃墜する目的で開発されましたが、この際にベースとなったのが米海軍の中・長距離艦対空ミサイルである「SM-2」。
ミサイルという兵器が登場して以来、迎撃ミサイルを含めた対抗手段が開発されてきたものの、超音速で突入してくる弾道ミサイルに対しては有効な手段がありませんでした。
その意味では、SM-3の開発は非常に画期的でした。
では、SM-3はどうやって弾道ミサイルを撃墜するのか?
イージス艦から発射されたSM-3はGPSおよび母艦に誘導されながら大気圏外まで飛翔し、目標を捕捉したら弾頭が切り離されます。
その後、弾頭はセンサーと姿勢制御装置を使いながら軌道を微調整して、目標に直撃することで「撃墜」します。
ここで注意したいのが、SM-3の弾頭は爆発ではなく、あくまで衝突によるエネルギーで目標を破壊する点。

北朝鮮の脅威に晒された日本は、すでに配備していた「こんごう型」イージス艦向けにSM-3を導入しますが、このとき調達されたのが「ブロック1A」と呼ばれるタイプです。
改修でBMD能力を獲得した「こんごう型」4隻は、それぞれSM-3を使った迎撃試験を行い、運用能力を確立しました。ただし、ブロック1Aは射程が短く、準中距離弾道ミサイル以上の目標への対処が難しいという欠点を抱えていました。
そこで、中距離および大陸間弾道ミサイルを迎撃できる改良型「ブロック2A」が開発され、こちらは日本も参加した日米共同開発になりました。
このタイプは従来よりも弾頭が大型化し、燃料搭載量の増大によって最高速度も向上しました。そして、2020年には米海軍がこのブロック2Aを用いて迎撃試験を行い、イージス艦で初めて大陸間弾道ミサイルの撃墜に成功しています。
現在、開発国のアメリカを除いては日本のみがSM-3ミサイルを運用中で、「こんごう型」4隻に搭載されている32発を皮切りに計180発前後を調達していると思われます。
この中には最新の「ブロック2A」も含まれていますが、残念ながら「こんごう型」は対応していません。一方、「あたご型」は改修によって対応可能となり、最新の「まや型」イージス艦に至っては最初からブロック2Aを搭載しています。
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