ポンコツで欠陥?韓国の世宗大王級イージス駆逐艦の実力

韓国のイージス艦 外国
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重武装の初イージス

韓国のイージス艦といえば、日本の一部界隈が「ポンコツ」と呼び、欠陥扱いされることが多いです。しかし、これは実態を反映しておらず、正しい評価とは言えません。

では、韓国初のイージス駆逐艦である「世宗大王級」とは、一体どのような船なのか?

  • 基本性能:「世宗大王級」駆逐艦
1〜3番艦 4番艦以降
基準排水量 7,650t 8,200t
全 長 166m 170m
全 幅 21.4m
乗 員 約300名
速 力 30ノット(時速56km)
航続距離 約10,200km
兵 装 127mm砲×1
30mm CIWS×1
21連装SeaRAM×1
Mk.41VLS×80セル
国産K-VLS×48セル
対艦ミサイル×16
3連装短魚雷発射管×2
127mm砲×1
20mm CIWS×2
Mk.41VLS×48セル
国産K-VLS×40セル
対艦ミサイル×8
3連装短魚雷発射管×2
艦載機 ヘリコプター×2
建造費 約1,200億円

世宗大王級の建造は2006年に始まり、1番艦は2008年に就役しましたが、その名前は李氏朝鮮の王様「世宗」に由来してます。

韓国初のイージス艦とあってか、その重武装ぶりが目立ち、ミサイルの発射装置は通常のMk.41(80セル)に加えて、国産タイプを48セルも備えました。

これらVLSのうち、前者は長射程の対空ミサイル、後者は対地・対潜ミサイル向けになり、それぞれを使い分けています。

さらに、近距離防空用に30mmCIWSとSeaRAMを持ち、対艦ミサイルは計16発も搭載しました。日本の「あたご型」と同じ大きさにもかかわらず、VLSだけでも32セルは多く、対艦ミサイルは2倍も搭載しています。

世宗大王級イージス艦1番艦の各兵装(出典:韓国海軍)

ここまで詰め込んだ理由としては、韓国海軍は陸軍に比べて予算が少なく、艦隊主力になる次世代艦を目指す以上、いわゆる「万能さ」を求めたからです。

本来のイージス艦は防空担当ですが、韓国海軍では対空から対地、対潜戦までこなすべく、あらゆる装備を盛り込みました。その結果、トップヘビーという懸念を生み、よく安定性の悪さが指摘されてきました。

そうは言いつつも、単艦では高い戦闘力を誇るほか、イージス・システムも「あたご型」と同じタイプを使うなど、その実力は決してあなどれません。

バッチ1・2の違い

世宗大王級は計6隻を建造するとはいえ、最初の3隻は「バッチ1」にあたり、残りは改良型の「バッチ2」に分類されます。

主な相違点については、まずは弾道ミサイルへの対処能力があげられます。

バッチ1は探知・追跡はできるものの、弾道ミサイルの迎撃まではできません。これがバッチ2では迎撃まで可能になり、日米両国が使うSM-3ミサイルを搭載しました。

なお、トップヘビーの反省をふまえて、バッチ2以降はVLSが88セルまで減り、対艦ミサイルも8発に抑えました。その代わり、対空ミサイルはSM-2ではなく、より長射程の「SM-6」を使うため、艦隊防空能力は強化しています。

世宗大王級イージス艦バッチ2にあたる4番艦(出典:韓国海軍)

「ポンコツ」とまでは言えないながらも、1〜3番艦はトップヘビーさに加えて、想定以上に水中雑音が多いなど、いろいろ問題点があるのは事実です。

「独島級」強襲揚陸艦と同じく、初めての挑戦には試行錯誤が付きまとい、ある程度のトラブルは仕方ありません。大事なのは「その後」であって、紆余曲折を経験しながらも、発展成長につなげられるかです。

このような視点に基づけば、その後の韓国は建造技術を伸ばしており、いまや世界屈指の造船大国になりました。イージス艦についても、過去の教訓をふまえながら、バッチ2では諸問題を改良しています。

K2戦車にせよ、韓国イージスにせよ、十数年前のイメージにとらわれたままだと、最も重要な「現在」を見落としかねません。

そもそもイージス艦いる?

ところで、強襲揚陸艦の時と同じ疑問になりますが、そもそも韓国にイージス艦は必要なのでしょうか?

韓国の主敵が北朝鮮である限り、海軍の役割は地上部隊の支援と半島周辺の海域を確保することです。北朝鮮は小型艦艇しか持っておらず、韓国海軍もコルベットやフリゲートなど、小回りの効く艦艇で沿岸警備を重視してきました。

しかし、経済発展とともに海軍力の増強が進み、活動領域も半島周辺だけでなく、外洋進出を目指すようになりました。その過程でイージス艦を造った形ですが、北朝鮮という敵が変わらない以上、あえてイージス艦にする理由は少なかったはずです。

イージス艦はあれば便利とはいえ、沿岸戦力の低下を招いたり、予算を圧迫してまで持つものではありません。

一方、現代最強の船と称されるように、イージス艦は強い海軍の象徴になりました。当時をふりかえれば、このような高性能艦を持ちたい気持ちとともに、日本への対抗心も働いたといえます。

韓国海軍は海上自衛隊をライバル視しており、建造計画の裏には歴史的心情と対抗意識が多少ありました。いわば「背伸び」して造った形ですが、現在はGDPが伸びて世界12位となり、イージス艦の保有は分相応になりました。

いまの国力を考えれば、イージス艦を複数運用しても、沿岸戦力を損なうことはなく、十分にやっていけるはずです。

竹島問題、歴史問題はあれども、日韓両国は対北朝鮮、対中国では同じ陣営に立ち、アジアでは数少ない自由・民主主義国家です。

もし台湾と朝鮮半島で有事が同時発生すれば、日米両国は前者に専念せねばならず、対北朝鮮は韓国に任せねばなりません。

アメリカ海軍でさえ戦力不足に悩み、海上自衛隊は対中国の荷が重いなか、韓国がイージス艦を運用しながら、自由主義陣営を強化するのは好都合でしょう。

ポンコツの欠陥?韓国の独島級強襲揚陸艦について
日韓協力を阻害する名前 日韓両国は何かと「ライバル扱い」を受けますが、これは軍事分野においても変わらず、韓国側がよく対抗心を燃やしてきました。 ...

コメント

  1. 一和会最高顧問 より:

    ライバルちゃうで
    仮想敵国やろ

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