近距離攻撃用の短魚雷
旧日本海軍は自慢の酸素魚雷を雷撃戦で使いましたが、事実上の後継となった海上自衛隊も対潜戦では引き続き国産魚雷を重視しています。
対潜戦での切り札といえば、アスロック対潜ミサイルが思い浮かぶものの、海自の護衛艦には3連装の魚雷発射管が左右に1基ずつ配置されていて、発見した潜水艦や敵魚雷に対する攻撃を行います。
この3連装短魚雷発射管には国産の短魚雷が収められており、もっとも新しいのが「12式魚雷」と呼ばれるものです。
- 基本性能:12式魚雷
重 量 | 320kg |
直 径 | 324mm(0.324m) |
全 長 | 2.83m |
速 度 | 40ノット(時速74km) |
射 程 | 約15〜20km |
深 度 | 約1,000m |
価 格 | 1発あたり約1億円 |
12式魚雷は97式魚雷の後継にあたり、国内で唯一魚雷を製造する三菱重工業が開発を手がけた短魚雷です。
ここで注意したいのは、短魚雷とは水上艦が近距離で敵潜水艦を攻撃すべく、通常の魚雷と比べて全長と射程が短いこと。潜水艦の長魚雷より射程が短いとはいえ、
そもそも、対潜戦ではSH-60J/K哨戒ヘリからの攻撃、アスロックによる中距離攻撃の順に行い、短魚雷は接近を許した潜水艦、敵から発射された魚雷に対する「最後の砦」になります。
沿海域での能力強化
そして、12式魚雷は浅い海における対処能力が上がり、それまでの弱点を改善しました。沿海域は外洋より海水温や海流、塩分濃度、地形の変化が激しく、高度な探知・追尾技術が求められるため、12式魚雷はセンサーを刷新しながら、その探知能力を強化しました。
また、誘導性能と運動性能も高めており、複雑な海底地形でも潜水艦を確実に追い回します。加えて、成形炸薬弾という弾頭を持ち、海中ではオーバーキルともいえる殺傷能力を備えました。
これは起爆時に流体金属で装甲を貫き、対戦車ミサイルなどによく使われているものです。普通の高性能爆薬でも十分にもかかわらず、わざわざ成形炸薬弾を使うあたり、海自が「対潜の鬼」と呼ばれる理由が分かります。
12式魚雷の各部分(出典:防衛装備庁)
このように深海・沿海での対処能力を両立しながら、使用部品の約4割を97式魚雷と共通化により開発コストを節約しました。それゆえ、今後廃棄される97式魚雷の部品も再利用可能になりました。
すでに採用から10年が経過しましたが、現在は対潜担当である「あさひ型」護衛艦、SH-60K哨戒ヘリやP-1哨戒機で使い、国産アスロック「07式VLA」の弾頭部にも採用されています。
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