榴弾砲も載せた輸送機改造の対地攻撃機
中型輸送機として日本を含む世界中で愛用されているC-130シリーズは任務や導入先に合わせた派生型がありますが、なかでも異彩を放つのがアメリカ空軍のみが運用している「AC-130」という対地攻撃型です。
これは機関砲や榴弾砲まで搭載した特殊な攻撃機で、その重武装ぶりは「風の谷のナウシカ」に登場するトルメキア王国のガンシップを連想させます。
⚪︎基本性能:AC-130J
全 長 | 29.3m |
全 幅 | 39.7m |
全 高 | 11.9m |
乗 員 | 9名 |
速 度 | 時速670km |
航続距離 | 約3,000km |
高 度 | 約8,500m |
兵 装 | 30mm機関砲×1 105mm榴弾砲×1 対地ミサイル、誘導爆弾など |
価 格 | 1機あたり約220億円 |
名輸送機を対地攻撃用に改造したAC-130は初期型が1960年代に登場して以降、いくつかの改良型が運用されてきましたが、現在はゴーストライダーの異名を持つ37機の「J型」だけが現役です。
このJ型は30mm機関砲、105mm榴弾砲に加えて、ヘルファイアー・ミサイルや滑空式の誘導爆弾を装備することで上空から地上目標に対して火力の雨を降らせますが、元は輸送機ということもあって、各種弾薬を豊富に搭載できるメリットもあります。
このように大火力を誇るAC-130ガンシップは、もともとベトナム戦争でジャングルに潜む敵に対して長時間滞空しながら攻撃する機体として開発されました。
ゆえに、戦闘機のような高速性能は求められず、むしろ輸送機本来のスピードの遅さが決め手となりました。
つまり、戦闘機と違って目標の上空を旋回し続けられるうえ、ヘリコプターよりも重武装化できる点で輸送機はガンシップに用いるのに適任だったのです。
ちなみに、各種武装は左側に座る機長が目視しながら攻撃できるように全て機体の左側に集められ、攻撃時は目標上空を左旋回しながら飛行します。
AC-130シリーズはベトナム戦争以降もパナマ侵攻や湾岸戦争に投入され、近年もイラクとアフガニスタンにおける戦争で持ち前の火力をいかんなく発揮してきました。
ただし、足の遅いAC-130は防空火器の餌食になりやすく、実際にベトナム戦争と湾岸戦争では敵の対空砲火および対空ミサイルによって撃墜されています。
したがって、航空優勢下での使用が前提条件となりますが、車載式や携行式の地対空ミサイルのような神出鬼没の防空兵器が普及した現代においては撃墜されるリスクが避けられません。
このように、AC-130はまともな防空装備を持たないテロ組織、もしくは限定的な防空能力しか持っておらず、それも完全破壊された軍隊を相手に使うのが最も効果的であって、特に対テロ戦争ではイスラム国やタリバンに対して一方的な攻撃を加えてきました。
対中国を意識したアジア太平洋へ軸足を移しつつあるアメリカですが、不安定な中東地域への関与は現地政府軍の支援という形で今後も維持する見込みで、こうしたテロとの戦いにおいてAC-130ガンシップの火力はまだ活用されるでしょう。
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