なぜ必要?陸自のLR-2連絡偵察機

航空機

陸上自衛隊唯一の固定翼機として急患輸送も担当

陸上自衛隊の航空機といえば、ヘリコプターの印象が強いですが、実は「LR-2」と呼ばれる連絡偵察を目的とした固定翼機も少数ながら運用しています。

⚪︎基本性能:LR-2連絡偵察機

全 長17.65m
全 幅4.37m
全 高14.22m
乗 員2名+同乗8名
速 度 時速580km
航続距離約2,800km
高 度10,700m
兵 装なし
価 格1機あたり約10億円

「ハヤブサ」という愛称、「ロメオ」というコールサインを持つLR-2はアメリカ製のビジネス機を改造した連絡偵察機で、それまで使っていたLR-1の後継として1999年から計8機が導入されました。2017年に事故で1機を喪失したことから現在の保有数は7機となっていますが、そのほとんどが木更津の第1ヘリコプター団に集中配備されています。

そもそも、連絡機とは駐屯地間で人員や少量の物資を運ぶための機体ですが、通信技術および交通網が発達した現代においてはその必要性は薄れており、LR-1も急患輸送に投入されることが多いです。ただ、CH-46輸送ヘリより速く、全天候型で航続距離も長いので遠隔地の交代要員や駐屯地視察に赴く少数の「偉い人」御一行の輸送には向いています。

一方、偵察機としてはカメラ機材を搭載できるものの、武装や自衛機能は付与されておらず、ドローンが続々と配備されているなかで本機をわざわざ偵察任務に用いる理由は少ないです。それでも、大規模災害での上空からの状況把握に活用できる余地はまだあります。

このように人員および急患輸送を行う多用途機として使われているLR-2は今後も細々と運用され続ける見込みですが、いずれは消えゆく運命にあるといえます。まず、陸自唯一の固定翼機である同機を乗りこなすうえで必要な練習機が組織内に存在せず、操縦要員は海上自衛隊の小月基地で教育訓練を受けなければなりません。

そして、陸自そのものがヘリ中心の航空運用を前提としているため、LR-2が離陸に必要な長さの滑走路(700m)を有する駐屯地が少ないのです。こうした事情に加えて、最近は滑走路を必要とせず、速度と航続距離、輸送力も申し分ないV-22オスプレイの導入が進められていることからLR-2の存在意義がさらに問われています。慢性的な人手不足に苦しみ、特にパイロットを含む航空要員の確保と育成が厳しい自衛隊にとって、今後もLR-2を維持するのは難しく、同じ役割を担えるオスプレイの配備とともに徐々に淘汰されていくでしょう。

1 ・・・次のページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました