「あわじ型」掃海艦の性能や役割、そして掃海艇との違い

自衛隊の掃海艦 自衛隊
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最大の繊維強化プラスチック船

戦争で大量に残った機雷の除去、そして朝鮮戦争と湾岸戦争での掃海任務から海上自衛隊の掃海部隊は世界トップクラスの技量を持っています。

この掃海部隊といえば、木製や繊維強化プラスチック製(FRP)の船体が特徴的な掃海艇、もしくは大型の掃海母艦が思いつきますが、実は掃海艇より少し大きく、掃海母艦よりは小さい「掃海艦」というのも所属しています。

今回はその掃海艦のなかでも最新型である「あわじ型」掃海艦について解説します。

⚪︎基本性能:「あわじ型」掃海艦

排水量 690t(基準)
全 長 66.8m
全 幅 11m
乗 員 54名
速 力 14ノット(時速26km)
航続距離 不明
兵 装 20mmバルカン砲×1
掃海具一式
自走式爆薬、水中無人機など
建造費 1隻あたり約180億円

2017年から配備が始まった「あわじ型」掃海艦は、海自艦艇では「えのしま型」掃海艇に続くFRP製となり、世界的にも最大レベルのFRP船です。おかげで磁気反応型の機雷を刺激せずに済み、木製船体と比べて軽量化と耐久性向上を実現しました。

装備面はかなり恵まれており、機雷処分用の20mmバルカン砲(遠隔操作式)、除去用の装具一式、最新の機雷探知ソナー、そして水面上や浅い深度に敷設された機雷を見つける新型レーダーを搭載しています。

さらに、水中無人機やより大型の無人潜水機で捜索を行うほか、新たに開発された遠隔操作式・自走式の高性能爆薬を使って、深いところの機雷を安全に処分します。しかも、この自走式爆薬のおかげで、今まで使ってきた高価な無人潜水機を爆破処分や機雷爆発の巻き添えで失う恐れがなくなりました。

このように最新の掃海装備で身を固めた「あわじ型」は計9隻が建造予定で、新型機雷に対する能力の底上げが期待されています。

掃海艦と掃海艇の違いはない?

ところで、「あわじ型」のような掃海艦と「えのしま型」をはじめとする掃海艇の違いは何なのか。

実は、厳密な定義というのはなく、基準排水量が1,000トンを超えたら掃海艦、それ未満であれば掃海艇というのが今までの海自の分け方だったようです。

しかし、軽量化に成功した「あわじ型」は690トンであり、「えのしま型」掃海艇と排水量で120トン、大きさは3メートルしか変わりません。よって、現在は基準排水量が600トンを超えた場合は掃海艦、それ未満のものは掃海艇に分類されるかもしれませんが、明確な線引きはさらに難しくなりました。

役割的にも重複するなか、あえて分けるならば、掃海艇は主に沿海域での掃海を担当して、掃海艦はより深い海に敷設された機雷を取り除くという感じでしょうか。それでも、能力的にはそこまで大きな差はないのが実情です。

掃海艇との差はそこまでない?(出典:海上自衛隊)

一方、掃海艦と掃海母艦は大きく異なり、「うらが型」掃海母艦ははるかに充実した搭載力、機雷敷設能力、限定的なヘリコプター運用能力、補給機能、医療機能を備えています。

このように海自の掃海部隊は、小型の掃海艇、大型の掃海母艦、そして中間に位置する「掃海艦」が活動している割と多様性にあふれた艦隊で、最近ではここに機雷戦能力も与えられた「もがみ型」フリゲートが加わりました。

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