自衛隊の沿岸監視隊って何するの?その任務や装備について

双眼鏡を覗き込む自衛官 陸上自衛隊
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船舶を監視する国境警備隊

日本は四方を海に囲まれている関係から、「国境警備」という概念が陸上国家より薄く、なかなかイメージしづらいといえます。

しかし、自衛隊には似た役割を果たす「沿岸監視隊」というのがあります。

これは陸上自衛隊が離島や遠隔地に配置する部隊で、その付近を行き交う船舶を監視するのが主な仕事です。

厳密にいえば、現地に駐屯しながら定点監視する「沿岸監視隊」、移動式のレーダーなどを使う「移動監視隊」の2つがあって、それぞれ以下の配置場所で活動しています。

自衛隊の沿岸監視隊

ご覧のように北海道に多く配備されていますが、これは冷戦期の対ソ連・北方重視を反映したもので、宗谷海峡とオホーツク海を監視してきました。

一方、移動監視隊はいちばん古くても2008年発足と歴史が浅く、こちらは監視能力に不安があったり、空白になっている地域に赴いて補完します。たとえば、中部方面移動監視隊は日本海側を担い、いざという時は山陰地方の他部隊にも派遣される前提です。

また、上記以外の分屯地や分室に派遣される小部隊もあって、第301沿岸監視隊は礼文島、第302沿岸監視隊は羅臼でも活動中です。ちなみに、前者はマンガ「空母いぶきGREAT GAME」において、稚内分屯地とともに襲撃を受けている描写がありました。

さて、その装備については、沿岸監視隊は固定式レーダー、高倍率の光学機器(双眼鏡など)を使い、移動監視隊は名前のとおり移動式のものを運用します。ただし、あくまで情報収集を任務とする以上、敵とのは接触・交戦は想定しておらず、武器も自衛用の小火器ぐらいしかありません。

人員面に関していえば、多くの隊員は情報科という職種になり、沿岸監視隊は100名、移動監視隊は大体50前後の規模感です。

今後は南方シフトへ

これまでは旧ソ連、そしてロシアへの監視が重視されてきたなか、近年は対中国に向けた南方シフトが加速しており、2016年には日本最西端の与那国島で約60年ぶりに沿岸監視隊(≠移動監視隊)が新編されました。

南西諸島は2010年代まで「空白地帯」と言われるほど、その警備体制が不十分だったものの、沿岸監視隊の配備で本格的な離島警備が始まりました。

平時から航行船舶を監視するITですが、今後は大東諸島、小笠原諸島などにも新編される可能性が高く、その重要性は増すばかりです。

沿岸監視隊が新編された与那国駐屯地(出典:陸上自衛隊)

ところで、ここまでは陸自の沿岸監視隊についてですが、海自・空自にも似た役割の部隊があります。

海自では対馬防備隊と函館基地隊が海底ソナーシステム(SOSUS)を使いながら、それぞれ対馬海峡、津軽海峡を監視しているほか、日本最東端の南鳥島では航空派遣隊が監視任務を担ってきました。

そして、空自では全国にある分屯基地とレーダーサイトが警戒監視を行い、大東諸島のような空白地帯に対しては、移動警戒隊のレーダーを展開してその穴を埋めています。

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