潜水艦を捉える最高機密? 日本とアメリカのSOSUSが果たす役割

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高性能な海底ソナー網

水中航行する潜水艦を捕捉するのは現代技術をもってしても難しく、「対潜の鬼」を目指す海上自衛隊はソナー技術の向上や対潜哨戒機の拡充に絶えず注力してきました。

海自ではP-1哨戒機や護衛艦に搭載したSH-60哨戒ヘリを使った上空からの対潜活動を実施していますが、実は海底に固定したソナー・システムによる監視もしています。

英語で音響監視システムを略した「SOSUS(ソーサス)」の名で知られるこのソナー網は、もともとアメリカが開発したシステムで、冷戦期を通じて大西洋と太平洋の重要海域に張り巡らしました。

海底に数百から数千単位の固定式ソナーを置いて潜水艦の音を拾うわけですが、磁気や熱を探知するセンサーも備わっていると考えられ、これらは長大なケーブルによって陸上施設とつながっています。

そして、日本も対ソ連を見据えて国産SOSUSの運用を始めたものの、防衛機密のなかでも最高級であることから未だに謎が多く、判明している設置箇所も津軽海峡と対馬海峡のみです。

しかし、特定海峡を含む重要海域、特に中国潜水艦が活動する南西諸島方面は宮古海峡を中心に設置済みで、2013年に就役した敷設艦「むろと」によって拡張と性能向上が図られているとされています。

具体的な性能は不明ながらも、米海軍のものは条件次第で最大1,000km先の潜水艦音を拾えるとされていて、同じく広範囲探知を行う音響測定艦との連携も可能です。こうした点をふまえると、日本のSOSUSも似た性能を持っていると思われます。

日米で中国を封じ込む

日本周辺まで伸びる米海軍のSOSUS網は、南西諸島を含む西太平洋までカバーしていますが、長年にわたる海自との連携、日米共同運用を目指す近年の流れを受けて、両者のSOSUSは連接していると考えるのが自然です。

一方、海洋進出を進める中国は南シナ海と東シナ海に独自のSOSUS網を構築しているのみならず、測量艦や海洋調査船を繰り出して日米側の設置箇所を調べている疑いがあります。

定点監視するSOSUSは対潜活動に影響を及ぼす海水温や塩分濃度の変化も観測可能と思われるため、長らく運用してきた日米両国は実績とデータの蓄積という点においては有利で、特に日本の「庭」である沖縄周辺の海域は日米が地理的特性を知り尽くしています。

しかし、台湾周辺や南シナ海は逆に中国側が有利であり、特に後者は人工島建設もあってもはや「北京の湖」になりました。

台湾有事で最も懸念される米中衝突では沖縄周辺も戦場になる可能性が高く、海上優勢の確保と台湾侵攻の補給線を断つためにも潜水艦を巡る戦いが避けられません。

したがって、SOSUSの活用と日頃からのデータ蓄積が大きな役割を果たすのは間違いなく、今後も両陣営のSOSUS網が強化されていくはずです。

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