対ドローン用兵器?米軍のドローンバスターとは何か

対ドローン兵器を構えたアメリカ兵 アメリカ
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電磁波照射で妨害する

現代戦で必須装備となったドローンは、偵察や着弾観測、小型爆弾の投下、自爆攻撃まで行える優れた兵器であると同時に「厄介な存在」でもあります。これはロシア=ウクライナ戦争でも証明済みで、両軍は互いにさまざまな対抗手段を編み出してきました。

特に脅威度が高い自爆ドローンに対しては、ドイツのゲパルト対空戦車が持つような機関砲が有効とされているものの、より小さい偵察ドローンやあちこちを気軽に飛び回る小型民生ドローンへの対処は難しいままです。

こうしたなか、従来のように機関砲や小銃などで撃墜するのではなく、電磁波を照射して機能停止させる方法が注目されています。

それが「Flex Force Enterprises」というアメリカの会社が開発した携行式ジャミング装置「ドローン・バスター」です。大きなスピード・ガンのような見た目をしたこの新兵器の長所は、単独で持ち運べる手軽さと機関砲を上回る費用対効果になります。

すでにいくつかの種類が登場済みで、手持ち型の電磁攻撃兵器としてはアメリカ国防総省に認可された唯一のものです。

⚪︎基本性能:ドローン・バスター(ブロック4 SNA)

重 量 2.1kg
全 長 55cm
全 幅 28cm
駆動時間 ジャミング:1時間
探知のみ:10時間
有効範囲 750〜1,000m
価 格 300万円以上

ドローン・バスターの使い方は非常にシンプルで、上空のドローンに対して銃を向けて電磁波を照射するだけ。あまりに簡単なので、操作する兵士は5分もあれば、その場ですぐに使えるようになるそうです。

対象となったドローンは電波妨害によって操作不能に陥りますが、「SNA」という機能を使えば、相手の通信電波を乗っ取って、ドローンを遠ざけたり、強制着陸させられます。

しかも、相手の通信電波を探知して、周波数を特定する機能まで備わっており、最大10時間にわたって傍受できます。つまり、敵ドローンの飛行を探知したら、ドローン・バスターを持った兵士がすばやく車で近くまで移動して「撃墜」「強制着陸」を試みるのが基本スタイルです。

ジャミング機能はほとんどの商用・民間周波数に対して有効とされ、アメリカのGPSシステムはもちろん、欧州やロシア、中国がそれぞれ使う衛星システムも想定しています。とりわけ、ロシア版GPSの「GLONASS」にも対応している点は、ウクライナで脅威となっているロシア軍のドローンに対処するうえで大きく期待されています。

平時に適したソフト・キル

徘徊型の自爆ドローンはもちろん、小型の偵察ドローンであっても、送られた情報に基づいて敵の砲撃やミサイル攻撃がやってくるため、発見次第すみやかに無力化しないといけません。

今までは物理的に破壊するのが主流でしたが、ドローン・バスターは機能不全にさせる「ソフト・キル」への道を大きく開きました。

ドローン・バスターを使う兵士(出典:アメリカ軍)

では、あえてソフト・キルを狙う理由は何か?

市場に出回っている小型民生品はともかく、より大型の偵察ドローンや自爆ドローンは、鹵獲・分析した方があとで役立つ可能性があります。そして、制御不能になって巻き添え被害が出たり、周りに破片が飛び散るよりは安全です。

一方、平時におけるドローン対策では、撃墜よりも強制着陸の方が圧倒的に望ましいといえます。

例えば、軍事基地の上空を飛び回るドローンを見つけた場合、物理的に撃墜すれば民間人に被害を及ぼしかねません。こうした理由から、アメリカ陸軍および空軍では基地警備目的でも導入しています。

戦場に限らず、基地周辺のドローン対策は各国共通の悩みとなっているので、こうしたソフト・キルの装備は今後さらに登場するはずです。特に日本の自衛隊は周辺住民への配慮から見つけても物理的破壊が難しく、ドローン・バスターのようなソフト・キル対処が好ましいでしょう。

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