驚異の成功率!自衛隊の不発弾処理部隊の実態とは?

不発弾を処理する自衛官 陸上自衛隊
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陸自にある5つの処理隊

太平洋戦争で激しい空襲を受けた日本では、戦後80年近くが経った今でも各地で「不発弾」が見つかります。その数は毎年1,000件ほどにのぼり、その多くは再開発工事などの際に出てくるアメリカ軍の爆弾です。

こうした爆弾には「信管」という起爆装置がついているものの、これが作動せずにそのまま残ったものが不発弾です。この信管を抜くと起爆の可能性はひとまず収まり、その後は自衛隊が持ち帰って安全な場所で爆破処理します。

ただし、爆弾自体が重すぎたり、状況的に動かせない場合はその場で爆破処理します。

爆弾以外にも、遺棄された旧日本軍の爆発物や戦艦などから撃ち込まれた砲弾が見つかりますが、基本的な処理作業は同じです。

こうした処理を担当するのが陸上自衛隊の不発弾処理隊と呼ばれる部隊で、専門教育を受けた武器科職種の隊員とともに以下の5カ所に配置されています。

部隊名 駐屯地
第101不発弾処理隊 沖縄県・那覇駐屯地
第102不発弾処理隊 埼玉県・朝霞駐屯地
第103不発弾処理隊 京都府・桂駐屯地
第104不発弾処理隊 佐賀県・目達原駐屯地
中央即応連隊
爆発装置処理隊
栃木県・宇都宮駐屯地

ちなみに、地上で発見された不発弾を処理するのは陸自ですが、海で見つかる機雷については海上自衛隊の水中処分隊が担当します。

そして、戦後ずっとこの処理作業に取り組んできた自衛隊の処理成功率は「100%」です。この成功率と毎年1,000件という数字は国民の安全を支えてきた揺るぎない証といえます。


不発弾処理作業の様子(出典:陸上自衛隊)

ところで、気になる「手当」については、実際の作業によってかなりバラツキがあり、担当隊員の階級でも変わってきます。いわゆる「現場兵士」に該当する陸士クラスが信管を抜く危険な作業を行う場合、最高支給額は1日14,000円です。

しかし、ひとつのミスが命取りになる状況を考えると、この額は危険度に見合っていないでしょう。しかも、これが捜索などの作業になると250〜750円までガクンと下がります。

圧倒的実績の「101」

さて、5つある処理隊のなかで、最も高い実績と技術を誇るのが沖縄・那覇駐屯地の「第101不発弾処理隊」ですが、これは他地域と違って沖縄戦という悲しい背景があるから。

「鉄の雨」といわれるほどの空爆や艦砲射撃が行われた結果、沖縄の地中には不発弾がゴロゴロ埋まっています。そのため、沖縄県だけで処理件数の4割以上を占め、こうした事情から第101不発弾処理隊の出動回数は他と比べものにならないほど多いわけです。

同処理隊はわずか20名ほどの小部隊でありながら、累計出動回数は3.5万回以上を超え、すでに1,700トン以上の不発弾を処理してきました。今も毎年20トンのペースで処理している一方、沖縄戦の熾烈さを考えれば「完全除去」にはほど遠い状況です。

残念な歴史に起因するこの不発弾処理ですが、終わらない作業を通じて自衛隊はこの分野で必然的に世界トップクラスとなりました。そもそも、不発弾の信管を安全・適切に抜ける処理能力は世界的にも珍しく、自衛隊以外ではできないとさえ言われています。

もちろん、日本と同様に大規模な空襲を受けたドイツでも未だに不発弾が見つかるものの、処理回数や技術では自衛隊がダントツです。こうしたノウハウは戦争や紛争のせいで不発弾に悩む国々には欠かせず、能力構築支援の一環でベトナムなどに伝授してきました。

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