陸上自衛隊が使うスキャンイーグルの性能や価格とは

自衛隊の無人機と発射装置 陸上自衛隊
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魚群探査用を改良した偵察ドローン

現代戦ではもはや当たり前に投入されるドローンですが、特に偵察・警戒監視任務においては欠かせない存在で、ロシア=ウクライナ戦争では小型民生品ドローンを偵察から攻撃に至るまで用いている様子が確認されています。

このように民生品を少し改良すれば軍事利用できてしまうのがドローンの特徴ですが、日本の自衛隊も保有しているスキャンイーグルもその一例と言えるでしょう。

⚪︎基本性能:スキャンイーグル2

重 量 13.1kg
全 長 1.7m
全 幅 3.11m
速 度 時速148km
航続距離 100km以上
連続飛行:16時間
上昇限度 約6,000m
価 格 1機あたり約2.5億円

スキャンイーグルはアメリカが開発した偵察用ドローンですが、元々は魚群探査用に作られた民間向けの機体を軍事用に改良しました。

機体は人間ひとりで運べるほど軽く、圧縮空気を使ったカタパルトで射出するので滑走路を必要とせず、地上だろうが船の上だろうが少し広いスペースがあれば展開できます。

このドローンはあらかじめ設定した経路に基づいて飛行するほか、状況によっては手動で操作しながら偵察任務を遂行します。

帰還時は「スカイフック」という装置を使って回収しますが、これは翼の端に設けられたフックを展開したケーブルに引っ掛ける方式です。そして、このスカイフックとドローンの双方にGPS機能が付いているため、広い洋上でも正確な回収ができます。

射出されるスキャンイーグル2(手前)と回収用のスカイフック(奥)(出典:陸上自衛隊)

機首の下部にはカメラの他に赤外線センサーなどが設置されており、目標周辺を飛び続けながら映像をリアルタイムで中継します。

有名な例として、トム・ハンクス主演の映画「キャプテン・フィリップス」の基になった海賊事件では、米海軍のスキャンイーグルが洋上監視を続けて、人質の解放に寄与しました。

また、無人機としては長大な100km以上の通信範囲を誇り、プロペラ・エンジンを使う特性上、偵察任務に求められる静粛性にも優れています。航続力については、初期型が20時間以上の連続飛行ができる反面、自衛隊が使う改良型の「スキャンイーグル2」は18時間に減りました。

ただし、このスキャンイーグル2は高画質カメラに加えて、機体の大型化にともなう各種センサーと搭載能力の強化、航法性能や電力供給能力の向上が図られた結果、全体性能は格段に高まりました。

陸自への配備が進んでいる最中

このように偵察に用いる分には十分な性能を有し、比較的安価で運用もしやすいことからアメリカを始めとする25カ国以上で使われています。

日本もその一員ですが、陸上自衛隊では東日本大震災の際に上空からの偵察にドローンの必要性を痛感したことから2013年にスキャンイーグル2を導入しました。

各師団・旅団の情報隊への配備が進むなか、2021年11月には訓練中の機体が種子島沖で行方不明になる事故が発生しました。

このとき、通信が途絶して喪失されましたが、本来は通信断絶後に事前設定された地点を目指して帰投する機能があるはず。一方、何かしらの原因で予定経路を飛行できない場合は、安全確保のためにエンジンを自動停止させるそうです。

したがって、強風が吹いていた事故当日は、機体が流されて自動停止機能が作動したのではないかと思われます。

射出されるスキャンイーグル2(出典:陸上自衛隊)

さて、自衛隊も活用しているスキャンイーグルですが、ロシアの侵攻を受けるウクライナにも12機前後が供与されました。ウクライナでは小型民生品からスイッチブレードまでのさまざまなドローンが投入されていて、特に砲兵戦では相手位置を掴むのに重宝されています。

こうしたなか、飛行場のようなインフラ設備を必要とせず、長時間飛行できるスキャンイーグルは、ロシア軍の砲兵戦力を叩くために重要な兵器。

今回のロシア=ウクライナ戦争では、HIMARS高機動ロケット砲や対戦車兵器のジャベリン・ミサイルが注目されるものの、米英などの西側諸国が提供する「情報(インテリジェンス)」もウクライナを支えています。スキャンイーグルの登場は、こうした情報戦におけるウクライナの優位性をさらに強化する可能性があります。

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