歩兵が戦車を倒すための高性能な「切り札」
「陸の王者」とも称される戦車は歩兵にとっては恐怖の対象ですが、携行式ミサイルの登場によって歩兵も戦車を撃破できるほどの火力を入手しており、その最たる例がアメリカの「ジャベリン対戦車ミサイル」です。
冷戦期にソ連戦車を想定して開発されたジャベリンは戦車のような装甲車両から建物にまで使える汎用性が高い兵器で、1996年に登場してから4万発以上が生産されました。
⚪︎基本性能:FGM-148 ジャベリン
総重量 | 22.3kg |
全 長 | 1.1m |
直 径 | 127mm |
要 員 | 最低1名(通常2名) |
弾 頭 | 8.4kg (成形炸薬弾) |
速 度 | 最高:秒速300m |
射 程 | 2,500m |
価 格 | 1発あたり約2,000万円 (装置などは6,000万円) |
ミサイル本体に加えて、暗視装置を含む発射指揮装置(CLU)と使い捨ての発射筒(LTA)で構成されるジャベリンの総重量は22.3kgにも上ることから、通常は射手と周辺警戒も行う弾薬手の2名体制で運用します。
このミサイルはロックオン時の情報に基づいて飛翔しつつ、赤外線画像を使って自律的に追尾する「撃ちっ放し能力」を備えていて、これが叩き出す「94%」という命中率は現存する対戦車火器としては世界最高峰の数値です。
また、この自律誘導機能のおかげで撃った側は即座に退避できるうえ、発射時の後方への爆炎(バックブラスト)も抑制されているので敵に見つかりづらく、室内からも撃てる利点を持ちます。
攻撃時は、目標に直撃させる「ダイレクト・アタック」とあえて上から狙う「トップ・アタック」の2つが選択可能で、前者は建物や陣地への攻撃に使われることが多く、飛翔高度も50m程度と低くなっています。
一方、後者では最大160mほどの高度まで飛翔してから戦車の弱点である上部を狙い撃ちします。
気になる射程距離は飛翔高度によって異なり、ダイレクト・アタックだと500mほどであるものの、対戦車戦で有効なトップ・アタックだと最大2,500mまで伸びます。
そのため、撃たれた戦車側は発射地点の特定と反撃、そして上から襲ってくるミサイルに対する回避や防御が困難です。

弾頭については対戦車榴弾(HEAT)である成形炸薬弾を使っており、起爆時に流体化した金属が破壊力を増大させながら装甲を貫く仕組みとなっています。
ただ、ジャベリンが想定するロシア戦車(旧ソ連戦車)には、被弾時にわざと爆発を起こして敵弾の威力を減殺する「爆発反応装甲」がよく用いられています。
そこで、ジャベリンは炸薬を前後に分散配置することで、先頭の弾頭で爆発反応装甲の効果を吸収・無力化しつつ、後ろの炸薬でダメージを与える対抗策を採用しました。
これによって敵戦車の確実な撃破が狙えることに加えて、爆発反応装甲を施していない相手には二重のダメージをもたらします。
このように良いことずくめに思えるジャベリンですが、欠点としてやはりコストの問題があげられます。
ミサイル本体だけで1発およそ2,000万円とされていて、同じ携行式の「NLAW対戦車ミサイル」と比べてもかなり割高です。しかし、世界トップクラスの性能によって数億円は下らない戦車の撃破を期待できるので、費用対効果は十分と評価できます。
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