地中貫通爆弾の総称
航空機が戦場に現れて以来、敵の空爆に対する研究が進み、地下陣地や掩蔽壕が有効とされてきました。
掩蔽壕は強化コンクリートを使い、それなりの耐久性が期待できるため、司令部などの重要機能を守り、航空機を保護するにも有効でした。
そんな対策を上回るべく、イギリスとドイツが開発競争を繰り広げたところ、第二次世界大戦では「地中貫通爆弾」が生まれました。とりわけイギリスはドイツのUボートに悩み、その潜水艦基地は「ブンカー」という頑丈な施設で守られていました。
こうして地下の防護施設を狙い、破壊する兵器が登場したものの、冷戦期は開発が下火になります。というのも、米ソが核戦争を想定している以上、地下施設も核攻撃で吹き飛び、わざわざ貫通爆弾を使う必要がありません。
ところが、東西冷戦が終わり、核兵器の出番がなくなると、今度は地下施設を壊す通常兵器が求められました。
1991年に湾岸戦争において、アメリカがイラク軍を空爆するなか、地下陣地の破壊には手こずります。その結果、急きょ「GBU-28」という地中貫通爆弾をつくり、わずか1ヶ月で投入しました(ただし、数発のみ)。
このとき、既存技術で短期開発したため、戦後に再設計と改良に取り組み、現在も使われているシリーズにつながりました。そして、いつしか「GBU-28=バンカーバスター」になり、一般的にそう認識されてきました。
すなわち、本来は地中貫通爆弾の総称だったところ、湾岸戦争以降の活躍ぶりを受けて、「GBU-28」が代名詞的存在になった形です。
地下30mまで貫く?
そんなGBU-28は重さが約1,800kg、炸薬量は約300kgの精密誘導爆弾です。
投下後はレーザー誘導で向かい、そのまま地表や屋根を貫通しながら、やや遅れて爆発します。あえて遅延信管を使うことで、落下時の運動エネルギーを貫通力に反映させる仕組みです。
起爆実験の様子(出典:アメリカ空軍)
その威力はバカにならず、鉄筋コンクリートは言うまでもなく、条件次第では地下30〜40mまで貫けます。ただし、これは通常の地面に対してであって、固い岩盤では貫通力が一気に落ち、10m以下にとどまるケースが多いです。
それでも、地下陣地や司令部を叩くには役立ち、ロケットブースターで加速した場合、厚さ7mのコンクリートを貫通できるそうです。着弾時の衝撃に耐えるべく、爆弾そのものは頑丈にできているほか、細長い形状で空気抵抗を減らして、さらに貫通力を増幅させます。
対テロ戦での活躍
ひとえにバンカーバスターと言っても、その威力を目標に合わせて調整すべく、小型・大型タイプ、GPS誘導式も開発されており、実際にはいろんな種類があります。
GPS誘導タイプの「EGU-28/B」(出典:アメリカ空軍)
アフガニスタンやイラク戦争でも用いたあと、イスラエルと韓国にも輸出されてきました。彼らはイランと北朝鮮という仮想敵を持ち、地下の核施設を狙うために導入したわけです。ちなみに、イスラエルはガザへの空爆でも使い、ハマスの地下トンネルを多く破壊しています。
結果的に正規戦ではなく、主に対テロ戦で活用されていますが、地下陣地に対する効果は高く、オーバーキルともいえる戦果をあげてきました。1発あたり約600万円とはいえ、ミサイルよりは格段に安く済み、十分な費用対効果を見込めます。
ただ、現在は後継の「GBU-72」「GBU-57」の配備が進み、こちらへの更新が行われている最中です。特に「GBU-57」は14トンの巨大爆弾にあたり、その地下貫通力は最大60mとされています(岩盤などの条件次第だが)。

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