フランスの誇りと象徴?原子力空母シャルル・ド・ゴール

フランスの原子力空母 外国関連
この記事は約4分で読めます。

貴重な「核兵器運用能力」

海軍力の象徴である「空母」のなかで、とりわけ強大なのが圧倒的な発電量と航続距離を誇る原子力空母ですが、この分野はアメリカが独占しているイメージが強く、そのほかはイギリスのクイーン・エリザベス級のように通常動力型が多いです。

ところが、じつはフランスも「シャルル・ド・ゴール」というアメリカ以外で唯一の原子力空母を運用しており、同国の打撃力を支える貴重な存在になっています。

  • 基本性能:空母シャルル・ド・ゴール
排水量 37,680t (基準)
42,000t (満載)
全 長 261.5m
全 幅 64.4m
乗 員 1,942名
(航空要員542名)
速 力 27ノット
(時速50km)
兵 装 ・20mm機関砲×8
・垂直発射装置×32
・6連装対空ミサイル発射機×2
艦載機 ・戦闘機×30機
・早期警戒機×2〜3機
・輸送ヘリ×2機
・救難ヘリ×2機
その他 ・輸送能力
上陸部隊800人

・医療設備
手術室×2
病床×50(最大)
価 格 約3,500億円

第二次世界大戦以降、フランスは長らく2隻の「クレマンソー級」を使っていたものの、老朽化にともなう退役を見越して、新たに2隻の原子力空母を建造しました。

しかし、冷戦後の軍縮機運で予算の都合がつかず、最終的には「シャルル・ド・ゴール」のみが2001年に就役しました。

フランス初の原子力空母である「シャルル・ド・ゴール」は、アメリカ空母と同じく蒸気カタパルトを装備しているため、スキージャンプ方式の空母よりも優れた航空機運用能力を持っています。

艦載機はラファール戦闘機を中心に40機前後となりますが、早期警戒機やヘリも搭載することで、コンパクトながら強い航空打撃力を獲得しました。

このフランス戦闘航空団は、アフガニスタン戦争やイスラム国に対する空爆作戦にも投入されており、フランスの太西洋同盟への貢献を担いました。

フランスの打撃力を支える「シャルル・ド・ゴール」(出典:フランス海軍)

「シャルル・ド・ゴール」は純粋な航空戦力ではアメリカ空母には劣るとはいえ、対空火器だけで8つ、ミサイルの垂直発射装置(VLS)は32セルという武装を持ち、空母としては珍しい高い防御力を手に入れました。

また、フランスにとって最も重要なのが核兵器の運用能力がある点です。これはラファール戦闘機に射程600km超の核巡航ミサイルを搭載する仕組みですが、現役空母で核運用能力を持っているのは「シャルル・ド・ゴール」だけになります。

象徴だが、ワンオペ体制

さて、第二次世界大戦における英雄の名を持ち、フランスの核戦略も支える空母「シャルル・ド・ゴール」は、大国としての力を具現化したものでもあります。

したがって、虎の子の空母を派遣すれば、それはフランスの軍事的プレゼンスを分かりやすく示すことになり、砲艦外交のツールとしても使われてきました。

ヨーロッパの国というイメージとは裏腹に、フランスはインド洋や太平洋などにも海外領土を持ち、排他的経済水域でみれば、じつは世界トップクラスなのです。

さらに、多くの植民地を持っていた関係から、いまでもアフリカ諸国に対して旧宗主国として関与せざるをえません。

これら海外領土や権益を守るための海軍力はもちろん、プレゼンスを示して抑止したり、旧宗主国として脆弱な現地政府を支援するのに空母が役立ったりするわけです。

フランスの力を象徴する存在だが、厳しいワンオペ体制(出典:フランス海軍)

一方、いろんな役割を担うにもかかわらず、1隻のみの建造で終わったがゆえに「ワンオペ運用」を余儀なくされてきました。

通常は2〜3隻によるローテーションが好ましいなか、このワンオペ体制のせいで、メンテナンス中は空母戦力が不在という事態に陥ってしまいます。

苦肉の策として艦載機の訓練をアメリカの原子力空母で行ったこともありましたが、2隻目が建造されない限りは抜本的解決になりません。

とは言いつつ、フランスに2隻目を建造・運用する余裕はなく、「シャルル・ド・ゴール」は退役する2030年代後半までワンオペを貫く見通しです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました