深海の救世主!潜水艦救難艦

海上自衛隊

困難な深海でのレスキュー任務

「海の忍者」と称される潜水艦は優れた隠密性を使って奇襲攻撃ができる一方、海中というとk種な環境で活動するため、軽微な事故でさえ「死」に直結するリスクがあります。特に、海面まで浮上できなければ生存率が一気に下がるわけですが、そんな潜水艦を救う存在が「潜水艦救難艦」です。

潜水艦救難艦は文字通り、遭難した潜水艦を捜索したり、海中で動けなくなった艦を救助するのが役割であり、そのための特殊装備と医療設備を持っています。特にカギとなるのが艦に搭載された深海救難艇(DSRV)であり、これは発見した潜水艦のハッチに直接取り付いて乗員を救助する小型潜水艇です。

救助の切り札DSRV(左)と内部の様子(右)(出典:海上自衛隊)

深海は「水圧地獄」と言える過酷な環境であり、潜航可能深度を超えた潜水艦は船体が水圧に耐えきれず、破壊されます(圧壊)。しかし、耐圧性に優れたDSRVの潜航可能深度は海自潜水艦のそれを超える最大2,000mと言われており、圧壊せずに海底に擱座した潜水艦を救助できます。

1隻120億円超、全長15mほどのDSRVは、1度に10名以上の乗員を救難艦まで運べますが、往復には約5時間かかるため、潜水艦の乗員70〜80人を全員救助するにはかなりの時間を要します。とはいえ、他に有効な救助手段が見当たらないのが現状です。

DSRVには2名の操縦士が乗り込み、ソナーやライト、カメラを使って暗い深海での捜索を行い、障害物を取り除くアームも備えています。ただ、蓄電池を動力とするDSRVは活動時間と捜索範囲が限られているため、長時間駆動が可能な無人潜水装置と組み合わせることが多いようです。

珍しい単独での潜水艦救難体制

世界で潜水艦を運用している国は多数ありますが、高価な潜水艦救難艦とDSRVを持つ国は意外と少なく、欧米諸国はNATO内で共同利用するシステムを構築しています。アメリカも以前は潜水艦救難艦を保有していましたが、今は救難艦を廃止してDSRVのみを別の潜水艦に乗せて救助に向かう方式を採用しました。その点では、日本は単独で潜水艦救難艦とDSRVを2隻ずつ運用している珍しい国と言え流でしょう。

⚪︎基本性能:ちはや型、ちよだ型潜水艦救難艦

ちはや型ちよだ型
排水量5,450t (基準)5,600t (基準)
全 長128m128m
全 幅20m20m
乗 員125名約120名
速 力21ノット
(時速38.9km)
20ノット
(時速37km)
航続距離最大6,000海里
(約11,110km)
6,000海里以上
(高速航行時の航続距離は延伸)
装 備深海救難艇×1
無人潜水装置×1
深海救難艇×1
無人潜水装置×1
価 格約500億円約508億円

海上自衛隊では黎明期から潜水艦救難艦の重要性を理解し、初代「ちはや」を皮切りに「ふしみ」、初代「ちよだ」と順次更新して来ました。現在は2代目の「ちはや」及び「ちよだ」の2隻を運用しており、それぞれ第1潜水隊群(呉)と第2潜水隊群(横須賀)に配備されています。ちなみに、任務の特性上、就任する艦長のほとんどは元・潜水艦乗りだそうです。

初代「ちよだ」は潜水艦への補給や乗員の休養を目的とした母艦機能も付与されていましたが、現在運用中の2隻ではこの母艦機能を廃止して、代わりに医療機能を強化しました。そのため、両艦とも救難艦の名に恥じない充実した医療設備を持っており、深海から救出された乗員は急激な水圧差によって潜水病になる可能性が高いことから、艦内には減圧室や手術室が完備されています。

最新の潜水艦救難艦「ちよだ」(出典:海上自衛隊)

両艦の大きな違いとして、「ちよだ」は「ちはや」よりも運動性に優れた無人潜水艇と耐圧性と定員で勝るDSRVを搭載しています。特に、DSRVについては一度に運べる人数が12名から16名に増えており、結果的に救助時間の短縮に繋がりました。

救難艦が与える安心感

海中を職場とする潜水艦乗りは、水上艦の乗員と比べていざという時の生存率が低いのが実情です。だからこそ救難艦の存在は乗員の士気に直結し、暗い深海で任務を遂行するにあたって幾ばくかの安心感を与えます。たとえ絶望的な状況であっても「きっと助けに来てくれる」という希望が与える心理的影響は非常に重要です。

中国海軍の大拡張を受けて潜水艦22隻体制を確立した海上自衛隊ですが、この増強に伴って潜水艦隊の支援能力も強化する必要があります。そのため、最前線で活動する潜水艦を支える救難艦の重要度は増すばかりと言えます。

1 ・・・次のページ

コメント

タイトルとURLをコピーしました