操縦性・機動性が高い観測ヘリとして登場
戦闘においては、まずは敵の状況を知らないと何もできないので「偵察」が肝心になります。そこで、空からの偵察を行って敵情を把握するわけですが、陸上自衛隊でその役割を担うのがOH-1観測ヘリコプターです。
⚪︎基本性能:OH-1観測ヘリコプター
全 長 | 13.4m |
全 幅 | 11.6m |
全 高 | 3.8m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | 最高時速270km |
航続距離 | 最大720km (増槽時) |
兵 装 | 対空ミサイル×4 |
価 格 | 1機あたり約20億円 |
「ニンジャ」の愛称で有名なOH-1観測ヘリは、1990年代に開発された国産ヘリであり、偵察によって得た情報を味方部隊に伝えることを目的にした機体です。偵察機はそもそも発見されてはいけないので、レーダー反射面積を減らした細長い胴体と騒音を抑えたブレードを採用しました。そして、危険度の高い最前線で活動することから、座席の装甲化や操縦系統の二重化など、生存率を高める工夫も施されています。
偵察任務の時は低空飛行をするため、良好な操縦性能を確保しており、操縦桿から手を離しても自動で姿勢制御を行ってホバリングできるほど。そして、危険を回避する必要性から機動性も高く、宙返りすらできる珍しい機体となりました。

高い機動性に寄与しているのが、軽量化された機体ですが、その代償として固定武装はありません。ただし、自衛用に国産の91式携帯地対空誘導弾の派生型を最大4発は搭載可能となっています。AH-64アパッチ攻撃ヘリの調達が失敗した際、OH-1を改修して重武装化する案も出ましたが検討の末に廃案となりました。
偵察の要となると観測機器は赤外線センサーやカメラを使いますが、この装置は機体の上部にあるので遮蔽物で身を隠しながら偵察できます。ただ、この装置は情報をリアルタイムで送信できないという欠点を抱えており、一度基地に戻ってからVHSで映像を確認するという旧式な手間が必要です。
少数生産・高コスト、旧式化によって無人機シフトへ
愛称の「ニンジャ」と曲芸飛行ができる機動性から海外でも割と知られている本機ですが、その生産数は試作機を含めてわずか38機です。当初計画では、250機以上を配備してそれまでのOH-6観測ヘリを全機置き換える予定でしたが、1機あたり約20億円という高コストが原因で少数生産に終わりました。

導入後もエンジンの換装やデータリンク能力の付与などが行われましたが、近代化改修には限界があるうえ、発見されにくい小型ドローンによる偵察が主流となりつつあるなかで乗員をリスクに晒す偵察ヘリの必要性は薄れてきています。また、前述のように非改修型のOH-1はリアルタイムで情報を送れず、これをわざわざ改修してまで使うのは非合理的でしょう。したがって、自衛隊も今後の偵察任務はドローンに任せるつもりであり、空飛ぶ忍者ことOH-1は既に導入が始まっているスキャンイーグルなどに座を譲って退役する見込みです。
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