全国配備された「短SAM」
防空火器が意外に充実している陸上自衛隊において、特に全国配備が進んでいるのが短距離防空用の「81式地対空誘導弾」、通称「短SAM」と呼ばれているミサイルです。
1960年代に開発が始まり、1981年に正式採用されたこのミサイルは古い部類に入るものの、自衛隊装備としては珍しく各部隊に行き渡っていて、「C型」のような改良版が登場したことで現在も使われています。
⚪︎基本性能:81式短距離地対空誘導弾(C)
重 量 | 約105kg |
全 長 | 2.71m |
直 径 | 0.16m |
速 度 | 最大マッハ2.4 (時速2,960km) |
射 程 | 約10km |
高 度 | 約3,000m |
価 格 | 1セットあたり約30億円 |
81式の短SAMは、陸自でよく見られる73式大型トラックに発射機と射撃管制装置をそれぞれ積んだ防空システムです。たった2両で運用できることから航空自衛隊も基地防空隊向けに導入しており、一時期は海上自衛隊も使用していました。
最大4発まで装填できる発射機は旋回式なので、全周囲360度に対する射撃範囲を確保しています。さらに、射撃管制装置に搭載されたフェーズド・アレイ・レーダーのおかげで、2つの目標に対する同時対処が実現しました。
ミサイル本体は赤外線を使って誘導されるため、発射後に目標を捕捉する「撃ちっ放し能力」を持っています。したがって、発射機だけでの運用もできますが、この場合の射程は捜索レーダーで捉えて撃つより短くなります。
ほかにも、別の照準器具を付けて目視でロックオンしたり、予備弾を使った迅速な再装填が可能です。
2つの種類が選べる改良型
登場してから早くも40年以上が経過した81式短SAMですが、今はコース変更した目標に対して自動修正できる「短SAM改(C型)」への改修が進められています。
こちらはミサイル自体が赤外線画像・光学画像で追尾するタイプとアクティブ・レーダーで自ら誘導するタイプの2種類になりました。後者の方が全長が15cmほど長く、赤外線妨害を試みる敵に対して有効とされています。
また、ロケットモーターに換装したおかげで射程が伸び、発射時の爆煙も減らして位置の露呈を抑えました。
一方、巡航ミサイルへの対処能力の不足から空自では導入されておらず、陸自も後継の「11式短距離地対空誘導弾」へ切り替えている最中です。ただ、11式短SAMは調達があまり進んでいないので、短SAM改を含めた81式短距離地対空誘導弾はしばらく現役を続けます。
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