海自初の共同交戦能力(CEC)を持つ艦
現代最強と言われるイージス艦ですが、海上自衛隊が現在運用している8隻の中で、最新鋭のタイプが「まや型」2隻です。この「まや」「はぐろ」の就役によって、海上自衛隊は「イージス艦8隻体制」を完成させるとともに、4つの護衛隊群(主力艦隊)にそれぞれ2隻のイージス艦を配置することで艦隊防空能力を大幅に強化しました。
⚪︎基本性能:「まや型」イージス艦
排水量 | 8,200t (基準) |
全 長 | 170m |
全 幅 | 21m |
乗 員 | 300名 |
速 力 | 約30ノット (時速56km) |
兵 装 | ・5インチ速射砲×1 ・20mm CIWS×2 ・対艦ミサイル×8 ・垂直ミサイル発射基 (VLS) ×96 ・3連装短魚雷発射管×2 |
価 格 | 1隻あたり約1,700億円 |
「まや型」は「こんごう型」「あたご型」に続く海自3代目のイージス艦であり、「はたかぜ型」護衛艦の後継として建造されました。2隻とも山岳名を由来とし、旧海軍の重巡洋艦にも使われてきた艦名を持ちますが、特に重巡「摩耶」は戦時中に対空火器が大幅に増設されたことで防空巡洋艦とも称されたため、イージス艦の名前としては相応しい限りです。
まず、性能についてですが、肝心のイージス・システムは「ベースライン9」と呼ばれる最新バージョンを、弾道ミサイル迎撃用のイージスBMDシステムは「BMD5.1」を採用しており、最初から統合運用が可能となりました。少し詳しく説明すると、今までは通常の対空戦闘と弾道ミサイル迎撃でシステムの切替を行っていたが、このBMD5.1では手間が不要となり、対空戦闘と弾道ミサイル迎撃を両立することができるのです。

さらに、「まや型」最大の特徴と言えるのが、海自艦船として初めて「共同交戦能力(CEC)」が付与されたこと。CECは艦船や航空機がそれぞれ得た情報をリアルタイムで共有できるようにネットワークで結び、チームプレイによる戦闘を可能とします。
例えば、P-1哨戒機が捉えた敵ミサイルの情報をリアルタイムでイージス艦に共有します。イージス艦側は自身のレーダーで目標をまだ捕捉できていなくても、哨戒機から送られ続ける情報に基づいて迎撃ミサイルを発射することができるのです。
情報共有そのものは以前からデータリンクを通じて可能でしたが、CECは大量のデータをリアルタイムで共有し続けることができるので、対応能力という点では雲泥の差でしょう。また、CECは同盟国間をつなぐこともでき、アメリカ海軍やオーストラリア海軍との連携を容易にするメリットが期待されています。
つまり、「まや型」は最新の弾道ミサイル防衛能力を有するとともに、通常の戦闘では共同交戦能力を活用したチームプレイの中心的役割を担います。
堅実な兵装で優れた総合戦闘力を保持
イージス艦と言えば「防空能力」に目が行きがちですが、戦闘艦である以上は対艦攻撃能力も付与されています。「まや型」も国産の90式対艦ミサイルを装備しており、2番艦「はぐろ」については最新の17式対艦ミサイルを搭載する予定です。また、アメリカが開発した新型長距離対空ミサイル「SM-6」もいずれ装備する計画ですが、このミサイルは対艦攻撃にも使えるため、他の護衛艦よりも強力な対艦攻撃能力を有すると言えます。
対潜能力も当然ながら付与されており、3連装短魚雷発射管はアップグレード版を搭載することで最新の12式魚雷を撃つことができます。ただ、前級の「あたご型」にあった対魚雷デコイは装備していないようです。

このように他の護衛艦と同じように対艦・対潜能力を持っているものの、やはりメインの役割は弾道ミサイル迎撃と艦隊防空になります。したがって、他の任務(特に対潜)は随伴する護衛艦に専ら委ねるようになるのではないでしょうか。
いずれにせよ、「まや型」は艦隊の中枢に相応しい能力を持つ新鋭イージス艦であり、対中国を見据えた防衛力強化が急がれる中では欠かせない戦力です。実際、「まや型」の就役時には中国メディアが特集を組んで自国のイージス艦と比較するほどだったので、少なくとも警戒しているのは事実でしょう(本来は同じ陣営の韓国側も警戒していましたが)。
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