宇宙ゴミが最大の脅威
人類が初の人工衛星を打ち上げてから60年以上が経つなか、その宇宙空間の利用価値は増すばかりです。
特に通信や測位、観測分野における宇宙利用は、我々の日常生活に直結するのはもちろん、軍事的優勢を決める大きな要因にもなります。
第二次世界大戦で制空権が勝敗を分けたように、現在は宇宙空間を優位に使える側が勝者に近づきます。ゆえに、各国は競い合うように人工衛星を打ち上げてきましたが、いま問題となっているのはこれら衛星を攻撃や事故からどう守るかです。
例えば、中国やロシアは対衛星ミサイルの実験を行っており、ほかの人工衛星を攻撃・無力化させる「キラー衛星」の存在も取りざたされています。
また、いままで打ち上げてきた数々の人工衛星のうち、用済みのものや関連部品が大量に浮遊している状況です。
「スペース・デブリ」と呼ばれるこれら宇宙ゴミは、1cm以上の物だけで70万個以上もあります。しかも、秒速8kmで周回するその威力は、衛星や宇宙ステーションを余裕で破損させられます。
仕事:ゴミの監視
このように人工衛星群を他国からの攻撃、そして宇宙ゴミから守るには、宇宙空間を常時監視する「宇宙状況監視(SSA)」と呼ばれる体制が欠かせません。
空自ではこのSSAを担う専門部隊として、2020年に約30人ほどからなる「宇宙作戦隊」を発足させたものの、わずか2年後には「宇宙作戦群」へと格上げされて、人数も120名体制になりました。
この宇宙作戦群は東京の府中基地にある第1宇宙作戦隊、山口県・防府北基地の監視レーダーを運用する第2宇宙作戦隊で構成されています。
宇宙状況監視のイメージ(出典:防衛省)
宇宙作戦と聞けば、きっとガンダムやスターウォーズのような世界をイメージする人も多いと思いますが、この空自部隊の任務はあくまでゴミの監視になります。
すなわち、宇宙空間での戦闘は想定しておらず、怪しい他国衛星の動向に目を光らせたり、衛星に宇宙ゴミが衝突しないように24時間体制で見張るのが仕事です。
ただし、広大な宇宙空間の監視は空自だけではできず、宇宙分野には長けているJAXAに加えて、先行している「アメリカ宇宙軍」との協力・連携が不可欠です。
いまのところ、空自隊員をJAXAに出向させたり、JAXAやアメリカ宇宙軍との情報共有システムを目指していますが、アメリカ宇宙軍も2019年に独立したばかりの新組織なので、本格連携にはまだ時間がかかるといえます。
「宇宙」という新職種
宇宙作戦群は120人体制まで拡大されたとはいえ、宇宙分野の重要性を考えると、今後も能力・規模ともに強化されていく一方のはずです。いずれは「四つ目の自衛隊」として独立する可能性すらあり、宇宙分野に精通した人材はまさに官民問わず引く手あまたの状態。
国際訓練に参加した宇宙作戦群の隊員(出典:航空自衛隊)
では、宇宙作戦群に入るにはどうしたらいいのか?
まず、空自に入隊したら希望職種を聞かれますが、このとき「宇宙」を目指している旨を明確にしましょう。もちろん、狭き門であるうえに、極めて高い英語力を要求されるので、希望が通る可能性は決して高くありません。
こうした事情をふまえて、第2希望は宇宙関連につながりやすい「情報」を希望するのがベストです。
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