宇宙空間での脅威は「ゴミ」
人類が初の人工衛星を打ち上げて宇宙空間を利用し始めて60年以上が経過しましたが、その利用価値は年々増すばかり。
特に通信や測位、観測における宇宙空間の利用は、我々の日常生活に直結するのはもちろんのこと、軍事的優勢を決める要因ともなります。
第二次世界大戦で制空権が勝敗を分けたように今や「宇宙を含む空を制する者」が勝者となるのです。そのため、各国は競い合うようにより高性能な人工衛星を打ち上げてきましたが、現在問題となっているのはその衛星を攻撃や事故からどう守るかです。
例えば、中国やロシアは対衛星ミサイルの実験を行なっており、他の人工衛星を攻撃して無力化させる「キラー衛星」の存在も取りざたされています。
また、今まで人類が打ち上げてきた人工衛星の数は膨大であり、用済みの衛星とその部品が大量に地球周辺を浮遊している状況です。
「スペース・デブリ」と呼ばれるこれら宇宙ゴミは1cm以上の物だけで70万個以上も存在し、秒速8kmで周回することから人工衛星や宇宙ステーションを破損させるのに十分です。
「ゴミの監視」という重要任務
このように衛星を他国からの攻撃、そして膨大な数の宇宙ゴミから守るには宇宙空間を常時監視する「宇宙状況監視(SSA)」と呼ばれる体制が求められます。そこで航空自衛隊はこのSSAを担う専門部隊として2020年5月に「宇宙作戦隊」を発足させました。
約30人ほどの小所帯部隊として始まった宇宙作戦隊は、2022年には「宇宙作戦群」に格上げされて120名体制になりました。
この宇宙作戦群は東京・府中基地を拠点とする「第1宇宙作戦隊」、そして山口県・防府北基地に設置された監視レーダーを運用する「第2宇宙作戦隊」で構成されています。
宇宙作戦群と聞くと、ガンダムやスターウォーズのような宇宙空間での戦闘を連想する方も多いですが、この部隊はあくまで「監視」するのが任務。そのため、不審な衛星の動向や宇宙ゴミが衝突しないように24時間体制で見張っています。

ただ、宇宙の監視は空自だけでは不可能なので、宇宙分野で経験豊富なJAXAや研究や運用能力で先行しているアメリカ宇宙軍との協力が必要不可欠です。
したがって、隊員をJAXAに出向させたり、JAXAおよびアメリカ宇宙軍との情報共有システムを作る予定ですが、アメリカ宇宙軍も2019年に独立したばかりなので、本格的な連携はまだ先になりそうです。
空自で「宇宙」職種を目指す
宇宙作戦群はまだ120人体制であるものの、宇宙空間の重要性が増すばかりの未来を考えると、同部隊も今後は拡大する一方でしょう。いずれは「四つ目の自衛隊」として独立組織になる可能性があり、宇宙分野に精通した人材は官民問わず引く手あまたです。
では、宇宙作戦隊に入るにはどうしたらいいのか?
まず、航空自衛隊に入隊したら配属希望を聞かれますが、このとき「宇宙」職種を目指しましょう。ただし、狭き門であるうえ、いきなりなれる可能性も低いため、「情報」職種を希望するのもアリです。
さらに、米軍との連携を視野に入れる宇宙作戦群では「英語」が絶対必要なので、高い英語力が条件のひとつとなります。
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