超重要!基地防空隊って?

ミサイル
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基地防空は航空優勢に直結する死活問題

航空自衛隊といえば戦闘機のイメージが強いですが、これらの航空戦力を発揮するうえで欠かせないのが航空基地です。航空機は滑走路や管制塔、燃料補給や整備を行う場がなければ動くこともままならず、ある意味「地上」に依存していると言っても過言ではありません。いくらF-35ステルス戦闘機を持っていても、これを支える基地機能が無力化されたらせっかくの最新鋭戦闘機も無意味になってしまいます。

そのため、平時はもちろんのこと、有事では各航空基地を敵の攻撃からいかに守るかが肝要であり、初戦で基地機能を喪失すればもはや航空優勢を失ったも同然です。現代戦はまず航空優勢を巡る攻防から始まるので、序盤で敵はレーダーとともに航空基地を狙ってきます。つまり、守る側にとっては序盤で味方の航空機が地上で撃破される前に一刻も早く空中退避させ、基地運用能力を守れるかどうかが死活問題なのです。例えば、ロシア=ウクライナ戦争ではロシア側が航空優勢の確保に失敗していますが、これは初戦でウクライナ空軍の基地を十分叩けず、ウクライナ側の戦力温存を許したのが一因と言われています。

このように基地を守ることが航空戦力の発揮に直結するわけですが、この重要な任務を担うのが各航空基地に存在する「基地防空隊」です。航空自衛隊では戦闘機を運用する基地には必ず配置されており、いざという時には地対空ミサイルを展開して基地周辺の空を守ります。ちなみに、2021年まではVADS 20mm機関砲も運用していましたが、現在は廃止されて全ての装備が地対空ミサイルとなりました。

したがって、現在の基地防空隊は主に日本版スティンガーの91式携帯地対空誘導弾や81式短距離地対空誘導弾を保有していますが、後者については巡航ミサイルに対する迎撃能力が微妙らしく、最新の基地防空用地対空誘導弾(基地防空用SAM)に置き換えている最中です。

高すぎる基地防空用地対空誘導弾とその行方

この後継たる基地防空用SAMは陸上自衛隊の11式短距離地対空誘導弾(11短SAM)のことを指しますが、空自では高機動車の後部に4連装の発射筒を搭載しています。つまり、搭載車両こそ違えど陸自と同じものを使っているわけですが、重要拠点を守る近距離防空という目的は一緒なので問題はなく、むしろ共通化することで開発費が100億円近く節約できたそうです。

⚪︎基本性能:基地防空用地対地誘導弾

全 長2.93m
直 径0.16m
重 量103kg
射 程10km以上
価 格1セットあたり約30億円

この基地防空用SAMは誘導方式としてミサイル自身が目標に電波を照射しながら向かうアクティブ・ホーミングを採用しており、いわゆる「撃ちっ放し」能力を持っています。そのため、同時に複数の目標を迎え撃つことができるうえ、超音速ミサイルや低空で侵入してくる巡航ミサイルに対する対処能力も向上しました。

運用時は同じく高機動車に搭載したレーダーや射撃管制システムとともに行動しますが、より上位の防空システムに繋いでの迎撃を行えるようになりました。搭載車両に高機動車を採用することでトラック搭載型の81式短距離地対空誘導弾と比べて機動力とメンテナンスの点で優れており、必要あればC-2輸送機などで他の飛行場にも展開可能です。

4連装の基地防空用SAMを搭載した空自の高機動車(出典:航空自衛隊)

ただ、この基地防空用SAMも国産装備に必ずついて回る難点「少数生産によるコスト高騰」から逃れることができず、陸自と共通化しているにもかかわらず1セットあたりの価格は約30億円となっています。こうした高価格も災いしてか、調達スピードは毎年1セットとスローペースであり、現在は10セットも導入できていません。最終的には1セットあたり20億円を目指しているものの、「高い→少数調達→また高くなる」の悪循環に陥る可能性があり、全ての基地防空隊で必要数が揃うまではまだ時間がかかりそうです。

このように、高コストが原因で陸自も含めてまだ数が揃わない中、実は後継の計画が既に始動しました。

計画では2022年から4年間で50億円以上をかけて「基地防空用地対空誘導弾(改)を新たに開発しますが、これは改良型というよりは全く別のミサイルになります。要するに、携帯式防空ミサイルを車載化した「近距離ミサイル(近SAM)」になる見込みですが、現在の「短SAM」よりも射程距離は短くなると推測します。

その一方で、高機動車に搭載できるミサイルの数は4倍の計16発に増えることから、防衛省としては比較的安価なミサイルで「数」を揃え、多数かつ小型の目標に対する迎撃能力を向上させるのが狙いでしょう。とはいえ、ミサイル自身も性能を向上させる予定であり、超低空飛行の巡航ミサイルや自爆型を含む無人攻撃機に対応する能力を付与するそうです。

ちなみに、事実上の近SAMである基地防空用地対空誘導弾(改)も陸自との共通化を図り、「新近距離地対空誘導弾」という名称で用いられるそうです。一応、また陸自と同じミサイルを使うことでコストを下げるつもりですが、自衛隊以外の顧客が存在しないのは変わらず、結局は少数生産によるコスト高騰の呪縛は逃れられないのではないでしょうか。

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