自衛隊の次期装輪装甲車として内定
陸上自衛隊は多数の装甲車を運用中ですが、未だに旧式の73式装甲車が現役であったり、その後継である96式装輪装甲車も十分な数を揃えられないまま老朽化が始まっているのが現状です。したがって、96式装輪装甲車の後継の選定が課題となっていたわけですが、ここでも「国産開発vs海外輸入」のバトルが繰り広げられました。
そして、最終的に三菱重工業が提案した国産の「機動装甲車(仮)」とフィンランド産の「パトリアAMV XP」の間で評価試験が行われた結果、2022年12月に後者が次期装輪装甲車として選ばれました。自衛隊初のフィンランド製装備となる「パトリア」とは一体どのような車両なのか?
⚪︎基本性能:パトリアAMV XP
重 量 | 15〜32t |
全 長 | 8.4m |
全 幅 | 2.8m |
全 高 | 2.4m |
乗 員 | 3名+兵員12名 |
速 度 | 最高時速100km 水上航行:時速10km |
行動距離 | 800km |
兵 装 | 遠隔操作式の機関銃を設置可 |
価 格 | 1両あたり約8億円 |
パトリアはフィンランドが1990年代に開発した装輪装甲車ですが、基本的な車体設計を維持しながら周りの兵装や各種システムを必要に応じて変えることで兵員輸送車以外にも指揮通信型や偵察型、迫撃砲を搭載したバージョンなど、ファミリー化に成功した車両でもあります。
舗装された道路では時速100kmという高速力を発揮し、強固なサスペンションと足回りを持つことから障害の多い不整地でも安定した走行ができます。パトリアは北欧生まれだからなのか、装甲車でありながら乗り込む兵士の乗り心地にも割と配慮しているそうなので、この点は隊員にとって96式装輪装甲車よりも魅力的に感じるでしょう。また、面白いことに2基のスクリューが車体後部に設けられているため、時速10km程度の水上航行が可能です。

さて、パトリアは30mm弾の直撃にも耐えられる装甲が車体正面に施されているなど優れた防御力を有しますが、陸自が導入する最新型「AMV XP」では地雷や即席爆弾、NBC兵器(放射性物質、生物、化学)に対する防御力が大幅に強化されました。そして「AMV XP」は一定のステルス性を考慮した設計と排熱対策が行われたため、従来よりも探知されにくくなっています。
このように高い機動力と防御力を持つパトリアは基本性能と価格の両方で三菱重工の機動装甲車を上回り、陸上自衛隊の次期装輪装甲車の座を勝ち取りました。まずは29両を合計232億円で調達しますが、その後は国内企業によるライセンス生産を想定しているそうです。パトリア自体はフィンランド以外にもスウェーデンや南アフリカ、ポーランドなどでも採用されており、これらの国々ではライセンス生産されているので日本の要望にも柔軟に対応してくれるでしょう。
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