陸自の兵站を支える73式大型トラック

車両・火砲
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優れた耐久性と汎用性を持ち、ほとんどの部隊で使われる必需品

「素人は戦略を語り、プロは兵站を語る」という格言があるように補給能力は勝敗を左右するものですが、大量消費される弾薬や食糧を滞りなく運ぶには多数の輸送トラックが欠かせません。もちろん、迅速な空輸ができる輸送機も重宝されるものの、展開先が限られる航空機よりも基本的にどこにでも運べるトラックの方が汎用性に優れており、大量投入もしやすいことから今でも兵站線を支える主役といえます。それは日本においても変わらず、陸上自衛隊も大型の「73式トラック」をほぼ全ての部隊に配備してきました。

⚪︎基本性能:73式大型トラック

重 量約8.6t
全 長7.15m
全 幅2.48m
全 高3.08m
乗 員運転2名+同乗22名
速 度時速105km
行動距離約600km
輸送力人員:22名
荷物:最大6t
価 格1両あたり約1,000万円

73式大型トラックはCMで有名な「いすゞ自動車」が製作する大型車両で、標準搭載量の3.5トンから隊員には「3トン半」という愛称で親しまれています。路上走行では搭載量を6トンまで増やせるうえ、時速100km近い快速ぶりを誇るため、荷台に隊員を乗せて演習場や災害派遣先に向かう光景がよく見られ、陸自隊員ならば一度は乗ったことのある車両です。ただし、幌に覆われた荷台は猛暑や寒さの影響をもろに受けやすく、決して「快適」とはいえません。

ちなみに、この陸自版・いすゞのトラックは道路交通法では「中型自動車」に分類されるものの、運転するには「自衛隊車両限定」の大型免許が必要であり、輸送科への配属後に自衛隊内の教習所で専用コースを受講しなければなりません。

民間車両との部品共通化によってコストを抑えた3トン半は派生型も合わせると累計25,000両が調達されていて、現在は8代目にあたる「SKW-477」が生産されています。この最新型はエンジン出力の増強や変速機のオートマ化などの改良を行った結果、初期型と比べて操縦性はかなり向上しました。

さらに、このトラックは1m程度の水深や積雪であれば走破できるほどの耐久性を持ち、東日本大震災では津波による水没で他の車両が使えないなか、壊れずに稼働することで災害派遣の初動対応を支えました。このように有事でも抜群の信頼性を示した73式大型トラックは改造も容易であり、給水タンクや燃料タンク、作業用クレーン、短距離対空ミサイルなどを搭載した派生型が存在するので割と見かける機会は多いです。

ほかにも、日野自動車とトヨタが共同開発した73式「中型」トラックというのがありますが、通称「1トン半」で知られるこちらの車両はひとまわり小さく、大型トラックを使わない程度の輸送で使用されます。

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