爆弾を精密誘導化!JDAMの気になる威力や射程について

博物館に展示された爆弾 アメリカ
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誘導爆弾する改修キット

ミサイルとは違い、爆弾というは本来は誘導機能を持たず、第二次世界大戦のような急降下爆撃や照準器を使って投下するイメージが強いです。

ところが、いまは「JDAM(ジェイダム)」という装置を使えば、簡単に誘導機能を与えられます。

これは「Joint Direct Attack Munition(統合直接攻撃弾)」の略称であり、無誘導爆弾を全天候型の誘導爆弾に進化させる装置(キット)を指します。ただし、実際には爆弾本体を含む総称として定着しました。

JDAM化された爆弾は、GPS機能やセンサーによる慣性航法を使いつつ、尾翼を制御しながら自律飛行します。その後、あらかじめ設定された目標へと向かい、母機から指令すれば、途中での目標変更も可能です。

この飛行過程では母機による誘導は必要なく、進行方向と逆方角に対しても投下できます。これに対して、レーザー誘導爆弾は悪天候に弱く、命中まで目標を捉えつづけなければなりません、

さらに、JDAM爆弾は事前の信管調整によって、空中爆発から直撃、貫通後などのあらゆる起爆タイミングを選べるのみならず、複数による完全破壊、多目標への同時攻撃を行えます。

多数のJDAM爆弾を搭載したF-15E戦闘機(出典:アメリカ空軍)

そして、最大の魅力は通常爆弾を安く、簡単に精密誘導化できる点です。

たとえば、最もよく使われている「Mk.48爆弾(炸薬量:約430kg)」の調達価格は約40万円ですが、約200万円のJDAM装置を取りつければ、精密攻撃ができるにもかかわらず、ミサイルよりは安上がりです。

では、その命中率はどうなのか?

初実戦のコソボ紛争(1999年)では、650発以上が投下されたところ、「87%」という命中率を出しました。

このとき実施されたのが、精度が落ちる高高度爆撃であるのを考えれば、この数字はかなり高いといえます。また、実証試験では雨や雪などの悪天候を受けても、その命中精度はあまり変わりませんでした。

しかし、高い命中率の裏には「誤爆」も存在します。

運用側の確認ミスとはいえ、前述のコソボ紛争では中国大使館誤爆事件を引き起こし、イラクやアフガニスタン戦争でも、たびたび誤爆事件を発生させました。

どんなに優れた兵器であっても、その使い方を誤れば、悲劇につながるという教訓はJDAMにも当てはまるのです。

進化するJDAMとその使い道

手軽に対地攻撃能力を入手できるため、JDAMはアメリカ以外でもオーストラリア、イスラエル、サウジアラビア、オランダなどで導入されて、シリーズ全体で累計20万発以上が生産されました。

日本もF-2戦闘機向けに購入しましたが、これはレーザー誘導機能を追加して、移動目標にも対応させた「LJDAM」という改良型でした。

JDAMは主に対地攻撃用とはいえ、最近では対艦攻撃も想定されるようになり、とりわけ有名なのが「クイックシンク」という攻撃方法です。これはJDAM爆弾を船の真横に投下して、そのまま真っ二つするという恐るべき威力があります。

ほかにも、射程延伸型の「JDAM-ER」が登場しており、その攻撃範囲は従来の30kmから最大80kmまで延び、対中国戦への投入が現実味を帯びてきました。

JDAM爆弾はミサイルと比べて遅く、迎撃されやすいとはいえ、そもそも誘導兵器としては安く、費用対効果にも優れています。

そして、ミサイルと組み合わせれば、相手の防空網に負担をかけて、トマホーク巡航ミサイルやLRASMミサイルのような「本命」が突破しやすい状況を作れるわけです。

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