航空自衛隊の「KC-46A」空中給油機は欠陥なのか?

航空自衛隊の空中給油機 自衛隊
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空自の最新給油機として

燃料を激しく消費する現代航空戦では、航続距離と作戦時間を伸ばす空中給油機が不可欠であることを以前説明しましたが、今回は航空自衛隊が最新の給油機として計6機を導入する「KC-46A」について解説します。

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⚪︎基本性能:「KC-46A」空中給油機

全 長 50.5m
全 幅 48.1m
全 高 15.9m
乗 員 3名
速 度 マッハ0.86(時速1,060km)
航続距離 12,200km
高 度 12,200m
燃料搭載量 約96.3t
輸送力 兵員:114名(傷病者54名)
貨物:29t
価 格(空自) 1機あたり270億円

南北に縦長く、多数の離島がもたらす広大な面積を考えた場合、自衛隊が空中給油機を導入するのは至極当然です。そんな中、新たに導入された「KC-46A」は民航機のボーイング767をベースにしたもので、空自が今も使っているKC-767シリーズの改良型になります。

KC-767より燃料搭載量が約1.3倍に増え、赤外線妨害や電子妨害などの自己防御機能も強化しました。

給油についてはKC-46側から「ブーム」を伸ばして供給する「フライング・ブーム方式」を採用していて、2名のオペレーターが遠隔画像システムと最新の3Dディスプレイを駆使しながら実施します。

また、輸送機としての側面を持つため、最大114名もしくは18個の貨物パレットを搭載できます。傷病者の緊急輸送に用いる場合は、24個の担架を含む54名まで対応可能です。

遠隔画像システムの不具合

現時点でアメリカが179機、日本が15機、そしてイスラエルが8機を調達予定のKC-46Aですが、さまざまな不具合が判明した結果、本国アメリカでの納期も遅れました。

まず、最大の問題とされたのが、給油作業時に使う遠隔画像システム。太陽光反射で画像が見づらかったり、複数のカメラを組み合わせて作るパノラマ映像で歪みが発生したのです。

この問題点は、新型カメラへの取替えを含むバージョン・アップによって解決する見込みですが、改修自体は2025年から始まるので、米空軍はそれまで改良ソフトウェアの導入でしのぐつもりです。

強すぎたブームと外れるロック

ほかにも、給油するブームの力が強すぎてA-10攻撃機などの軽量な機体に対しては給油が難しいことが判明しました。

給油を受ける側はこれまで以上の力が必要なので、先の画像問題と合わせれば、誤って接触してしまうリスクが高く、特殊な塗装でステルス性を保つF-35戦闘機のような繊細な機体にとっては命取りです。

結局、この問題は再設計で対応することになり、納期延期に拍車をかける形となりました。

さらに、追い打ちをかけるように、今度は貨物室の床にある固定用ロックが勝手に外れる事故が発生します。これも急遽改修して短期間で直りましたが、一連の不具合は「KC-46A=欠陥」という印象を確定させました。

危うい調達継続と日本への影響

さて、さまざまな不具合に悩まされたKC-46Aですが、これらは最低限クリアできたと米空軍は判断しており、2022年9月には全世界への展開とそれまで制限していてF-35戦闘機やB-2爆撃機などへの給油を許可しました。

ただ、すでに定着してしまった「KC-46A=欠陥」のイメージはそう簡単に払拭できるものではなく、特に遠隔画像システムの不具合はアメリカ議会にも致命的と問題視され、調達継続が危ぶまれているのも事実。

もし、2025年に完成予定の改良型がうまくいかなかった場合、アメリカ本国も見切りをつけるかもしれません。そうなれば、欧州勢が使うライバル「A330MRTT」の発展型に切り替える可能性が高く、その影響はKC-46Aを導入した日本にも及びます。

また、すでに運用している空自は安全運用によって周辺住民などの不安を軽減せねばならず、このあたりはV-22オスプレイに通じるものがあるといえます。

 

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