現代航空戦での優位につながる存在
いくら高性能な戦闘機と優秀なパイロットを揃えても、戦闘空域で実際に活動できる時間が短ければ本領を発揮できず、お世辞にも低燃費といえない戦闘機にとってはこの滞空時間の確保という課題として付きまといます。そこで飛行中に他の航空機から燃料補給を受ける「空中給油」という解決策が編み出されますが、実はこの構想は航空黎明期の1920年代から存在していました。
そして、第二次世界大戦後にはスペースに余裕のある輸送機や旅客機を改造した空中給油機というのが登場し、航空燃料(Kerosene)の「K」に輸送機(Cargo Plane)を指す「C」を足した「KC-〇〇」という名称で呼ばれるようになります。
空中給油機の運用を前提にすれば、一旦基地に戻ることなくそのまま航続距離と滞空時間を延伸できるため、パイロットとしては残量燃料に対する懸念が軽減されるうえ、あえて燃料を抑制してその分より多くのミサイルを積んで出撃することさえ可能です。
このように1機あたりの作戦時間を延ばしたり、兵器搭載量を増やすことで少ない戦力を最大限発揮できるわけですが、実際にはパイロットの疲労も考慮せねばならず、連続滞空時間は延伸できても8時間あたりが限界でしょう。それでも、基地との往復時間を極力省けるだけでも十分な効率化に寄与しており、空中給油機は早期警戒管制機とともに戦場における優位性を獲得するうえで重要な役割を果たします。
それぞれ長所・短所がある2つの給油方式
既に当たり前となりつつある空中給油には大きく分けて2つの手法があります。
ひとつが「フライング・ブーム方式」というもので、これは空中給油機からブームと呼ばれる燃料パイプを伸ばして給油を受ける側に差し込む方法。この方式では空中給油機がほとんどの操作を行うので給油される側は位置を保つだけでよく、一度に多くの燃料を供給できることから戦闘機以外にも爆撃機などの大型機にも適しています。

もう一方の手法である「プローブ・アンド・ドローグ」では、空中給油機が伸ばしたホースの先端に給油を受ける側が燃料パイプを差し込みますが、こちらのメリットはヘリコプターなどの回転翼機にも対応しているうえ、ホースを増設すれば同時に複数に対する燃料補給ができる点です。ただ、この方式ではフライング・ブーム方式よりも細かい微調整が必要となり、特に給油を受ける側は高度な技量が求められます。

このように2つの方式にはそれぞれ一長一短があり、まとめると以下のようになります。
◇フライング・ブーム方式
・大型機への給油に向いている
・ブーム操作員以外にとっては比較的容易
・設備が大きく、改造が難しい
◇プローブ・アンド・ドローグ
・戦闘機やヘリコプターへの給油に向いている
・給油を受ける側も十分な技量が必要
・比較的簡単に改造できる
ちなみに、航空自衛隊はフライング・ブーム方式の「KC-767」、そしてプローブ・アンド・ドローグ方式の「KC-130H」をそれぞれ運用しているものの、南西諸島方面の有事を見据えた戦力強化の一環で、今後は両方式に対応した「KC-46A」を6機導入する予定です。
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