空飛ぶガソリンスタンド:空中給油機とは?

航空機

空戦での優位性につながる給油機

現代の空戦は音速を超えるジェット戦闘機によって繰り広げられますが、その激しさから膨大な燃料を消費します。燃費が著しく悪い戦闘機にとって「基地から遠い場所での滞空時間をどうやって延ばすか」が課題でした。いくら高性能な戦闘機と優秀なパイロットがいても、戦闘空域で活動できる時間が短いと本領を発揮できません。

そこで編み出されたのが「空中給油」という方法でした。これは、飛行中に他の航空機から燃料を補給させる行為であり、構想自体は航空黎明期の1920年代から存在していました。実際、アメリカ軍はホースを使った空中給油の試験を繰り返しており、事故を経ながらも一定の成功を収めています。

そして、第二次世界大戦後になると空中給油を専門とする機体が登場しますが、その多くはスペースに余裕のある輸送機や旅客機を改造したものでした。ちなみに、空中給油機の名称は「KC」という頭文字から始まるものが多いですが、これは輸送機(Cargo Plane)を指す「C」に航空燃料(Kerosene)の「 K」を足したものです。

アメリカ空軍のKC-135空中給油機(出典:アメリカ空軍)

空中給油機を用いれば、一旦基地に戻ることなく航続距離と滞空時間を延長できます。パイロットとしても、燃料をそこまで心配をすることなく戦えるため、精神的余裕を保てます。さらに、空中給油を前提とすれば、あえて搭載燃料を抑えたうえで、より多くのミサイルや爆弾を搭載することが可能です。

このように1機あたりの作戦時間を延ばし、搭載兵器量も増やすことで、少ない機数を効率的に運用できます。もちろん、搭乗員の疲労を考えれば延長できても9時間あたりが限界でしょうが、基地への往復時間などを省けるだけでも十分な効果でしょう。したがって、空中給油機の有無は空戦における優位性につながる重要な要因なのです。

確立された2つの給油方式

既に当たり前となった空中給油ですが、その手法は大きく分けて2つあります。一つが「フライングブーム方式」と呼ばれるもので、空中給油機からブーム(燃料パイプ)を伸ばして給油を受ける側に差し込む方法。この方式では空中給油機側がほとんどの操作を行うため、給油を受ける側は位置を保つだけでよく、負担が少ないのが特徴です。また、一度に多くの燃料を供給できるため、戦闘機の他にも爆撃機などの大型機への給油にも適しています。

フライングブーム(赤丸)を使って戦闘機に給油する空中給油機(出典:アメリカ空軍)

一方、2つ目の手法である「プローブ・アンド・ドローグ」では、給油機から伸びたホースの先端に給油を受ける側が燃料パイプを差し込みます。こちらのメリットとしては、ホースを増設することで同時に複数の機体に燃料補給できる点。また、固定翼機のみならず、ヘリコプターにも給油できるのが特徴です。ただ、給油を受ける側は位置の細かい微調整が求められるため、高度な技量がないとできません。

プローブ・アンド・ドローグ方式(出典:アメリカ空軍)

では、2つの手法のうち、どちらが優れているのか?
どちらも一長一短ありますが、まとめると以下のようになると思料します。

◇フライングブーム方式
・細かい調整が難しい中・大型機への給油に向いている
・ブームの操作員さえ訓練できれば、一応給油できる
・設備が大きいため、改造が難しい

◇プローブ・アンド・ドローグ
・小回りの効く戦闘機への給油に向いている
・給油を受ける側も十分な訓練が必要
・比較的簡単に改造できる

ちなみに、航空自衛隊ではフライングブーム方式のKC-767、プローブ・アンド・ドローグ方式のKC-130Hを運用中です。特に、広大な範囲の割には基地が少ない南西諸島での有事を想定した場合、空自における空中給油機の必要性はかつてないほど高まっています。今後、空自はどちらの給油方式にも対応したKC-46Aを6機導入する予定であり、従来の機体に加えて、新鋭戦闘機のF-35B戦闘機陸上自衛隊のオスプレイへの空中給油も行えます。

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