長時間の警戒監視を担う「空の目」
領海と排他的経済水域を含む海洋面積では世界6位にランクインする日本では自衛隊と海上保安庁が昼夜問わず警戒監視活動を行っているものの、生身の人間が長時間にわたって広大なエリアの隅々まで目を光らせるには限界があるため、航空自衛隊では2022年に高高度偵察用の無人機「RQ-4B グローバル・ホーク」を導入しました。
⚪︎基本性能:RQ-4B グローバル・ホーク
全 長 | 14.5m |
全 高 | 39.9m |
全 幅 | 4.7m |
速 度 | 最高:時速611km 巡航:時速570km |
航続距離 | 約18,000km |
滞空時間 | 31時間 |
高 度 | 18,288m |
価 格 | 1機あたり約120億円 |
アメリカで2004年から運用されているグローバル・ホークは高高度で30時間以上の連続飛行が可能な無人偵察機で、レーダーや光学、赤外線センサーを使って地上目標の監視や移動目標の識別を行い、これら情報をリアルタイムで司令部に共有します。
1機で約10万㎢の面積をカバーできるとされるこのグローバル・ホークを空自は3機調達して青森県・三沢基地に配備しましたが、こうした無人機を現行の警戒監視活動に取り入れることでP-1哨戒機のような有人機の負担を軽減しつつ、抜け目のない監視網の構築を目指します。
コスト高騰がもたらす不透明な未来?
このように高高度から広範囲を偵察できるグローバル・ホークは高性能なセンサー類を用いるがゆえに調達費と維持費が高く、司令部を含む地上設備を合わせた初期費用は300億円以上になります。そして、保守サポートにかかる維持費は年間120億円と当初見積りよりも大幅に高騰したため、費用対効果を疑問視する声や海上保安庁のように比較的廉価なシーガーディアンに切り替えるべきという意見も上がりました。
さらに、追い打ちをかけるように空自が導入したバージョン「ブロック30」をアメリカは全て退役させて最新の「ブロック40」のみ継続運用する方針になりました。その結果、旧式の「ブロック30」を運用する国は日本と韓国だけになったため、維持費のさらなる高騰が見込まれます。
こうしたコストの高騰を受けて日本も一時は「導入中止」を検討したものの、既に配備された今は引き返せないので今後は維持費の抑制に注力するしかなく、同じ苦悩を共有する韓国とも協力しながら対米交渉を行うなど、知恵を絞るしかないのが現状です。
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