長時間の警戒監視を担う「空の目」
日本の国土面積は37.8万㎢と世界61位ですが、領海及び排他的経済水域を含む海洋面積では一気に世界6位にランクインします。広大な海洋面積と多数の離島を抱える以上、その隅々まで目を光らせて不法侵入などを阻止しなければならず、そのために自衛隊と海上保安庁が昼夜問わず哨戒活動を実施しているます。しかし、生身の人間が長時間の警戒を続けるのは限度があるため、無人機の。
無人機、いわゆるドローンは各国の軍隊では既に当たり前のように使われていますが、航空自衛隊が導入するのは「RQ-4B グローバル・ホーク」と呼ばれる高高度偵察機です。
⚪︎基本性能:RQ-4B グローバル・ホーク
全 長 | 14.5m |
全 高 | 39.9m |
全 幅 | 4.7m |
速 度 | 最高:時速611km 巡航:時速570km |
航続距離 | 約18,000km |
滞空時間 | 31時間 |
高 度 | 18,288m |
価 格 | 1機あたり約120億円 |
グローバル・ホークは高高度で長時間偵察できる無人機であり、米軍では2004年から運用しています。高高度から地上の目標を監視するため、レーダーや光学/赤外線センサーなどを搭載しており、移動中の目標も識別できます。また、連続で30時間以上も任務に就ける点も無人機ならではの特徴であり、収集した情報はリアルタイムで司令部に共有されます。
1機で約10万㎢の面積を担当できると言われており、自衛隊は計3機を導入する予定です。ちなみに、同機には「ブロック」と呼ばれるいくつかのバージョンがありますが、自衛隊が導入するのは「ブロック30」になります。むろん、グローバル・ホーク導入後もP-1哨戒機などの有人機よる任務は続けますが、無人機と組み合わせることで有人機への負担を軽減しつつ、隙のない監視網を構築します。
コストの高騰で不透明な未来?
航空自衛隊に納入される機体はアメリカで既に製造及び試験飛行済みであり、2022年度中に三沢基地の臨時偵察航空隊に配備されます。臨時偵察航空隊は2021年3月に新設された70人ほどの小部隊で、主にグローバル・ホークの試験運用、整備、操縦員への教育を行いますが、本格的な運用体制が確立するのは2024年になる見込みです。
高高度から広範囲の偵察を行えるグローバル・ホークですが、難点は調達費と維持費が高いこと。純粋に機体だけに限ればコストは25億円ほどですが、高性能なセンサー類が価格をかなり押し上げています。さらに、司令部を含む地上設備を合わせると初期費用は結局300〜400億円にのぼります。

既に配備が迫っている中、今後問題となるのが保守サポートに要する維持費が予想よりも高騰し、現時点で120億円/年となっている点。
「毎年100億円超のコストをかけて3機の無人機を運用する価値はあるのか?」
「他に選択肢はないのか?(海保はより廉価なシーガーディアンを導入)」
泣きっ面にハチではありませんが、悪いニュースは続きます。米軍が運用中のブロック30を全て引退させると決めたのです。ブロック30の旧式化が理由だそうですが、自衛隊がようやく3機のブロック30を配備しようかという矢先に本家・米軍は全機退役させることになります。ただ、最新型のブロック40は運用を継続するそうです。
米軍がブロック30を退役させるということは、同タイプを運用するのは日本と韓国のみになります(NATOはブロック40を採用)。韓国も日本同様にコスト高騰に悩んでいますが、ブロック30を運用するのが2カ国だけになると維持費はますます高くなるでしょう。
日本もコスト高騰を踏まえて一時期「中止」を検討しましたが、納入直前となった今では引き返せません。となると、今後の課題は維持費をいかに抑えるかですが、これに関しては同じ苦悩を共有する韓国と協力して対米交渉を行うのも一案でしょう。ただ、人手不足が深刻な自衛隊が無人機を導入するの当然であり、問題は正しい現状認識の下で任務とコストに見合った装備を適切に調達することです。
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